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フィールドに舞う桜と共に  作者: しーた
『奇跡の桜』編
62/90

第62話『桜の誕生日』

今日は突然のことで、どうして良いかわからないでいるの。

だって…。

「Happy birthday to you~

Happy birthday to you~

Happy birthday, dear SAKURA~

Happy birthday to you~」

「おめでとー!」

「桜先輩!おめでとうございます!」

「ほれ、ろうそく消しな。」

「ありがとう、皆さん!」

フゥーーーーーー

思いっきり息を吹きかけた。ろうそくは18本あるよ。

そう、今日は私の誕生日。それでもってクリスマスの12月25日。


パチパチパチパチパチパチッ

「えー、今日は、世界的な行事である、桜生誕祭に出席していただき、まことにありがとうございます。」

部長がノリノリで、大袈裟な事を言っているよ。

「クリスマスと誕生日会を一緒にやるついでに、皆でケーキ食べて騒ぎましょって集まりでしょ!」

「ほらほら、主賓は中央のお誕生日席に座ってなさい。」

「そうやって誂うんだから~!」

「何を言う。今日は世界中のあっちこっちで桜の誕生日を祝っているぞ?なっ?ジェニー。」

「そうネー!前夜祭ではカップルが愛を確かめ合い、今日は家族でお祝いネー!」

「それはクリスマスイブと、クリスマス当日の事を言っているのでしょ!私の誕生日だからって訳じゃないのに!」

「いやいや、世界的なイベントだから。桜生誕祭は。」

「私も入信するネー。桜教に。あぁ、桜様。我を導きたまえー。なーむー。」

「ジェニー!?何か色々混ざってるし!」

「うむ、照れながら怒った顔も可愛いな。」

「部長!」

「まぁまぁ、桜が神となってしまっては、部屋に忍び込むのも罰が当たりそうだからな。」

「また忍び込むつもりだったの!?」

「駄目か?」

「だーめー!」


頃合いをみていおりんが助けに入ってくれるよ。

「はいはい、茶番はそこまで。ケーキ分けるよ。」

そう言ってケーキナイフで当分に切っていってくれる。

「ちなみに今日のケーキは、後藤先生からのプレゼントでーす!」

可憐ちゃんからだ。先生ったら、あんなに誘ったのに来てくれなっかったよ。

ま、まぁ、この状況に先生が居るって方が、先生から見たら罰ゲームかもね…。

でも、ちょっと信じたいこともあるの。

後藤先生は、寅子さんのところへ行ったってね。

聞いても教えてくれないだろうなぁ~。

でも、二人の秘密でもいいよね。


ケーキが切り分けられる。

あれ?今日は部員全員来ているから、13個に切り分けるの?

次々にテーブルに並べられるホールケーキは3個。それを4等分に切っていた。

お…、大きいよ…。

あれれ?それだと12個分だよね…。

「可憐ちゃん、それじゃぁ1個足りないよ。」

「いいのいいの。」

そう言って切られていくケーキ達。

「これだけでかいの食うのことも、滅多にないかもな。」

天龍ちゃんの言う通りだね。切り終わると、各自配っていかれる。

えーーー?私の無いよ?


「可憐ちゃん…、あの…、あの…。」

「桜ちゃんもケーキ欲しいの?」

「ほーしーいー!」

「桜は、関東大会2回戦目で、ジェニーと秘密協定を結んで試合に出たので、ケーキはお預けです。」

「えー、そんなんじゃないよー。」

「そうネー。そりゃぁ、ちょっと桜が可哀想だったってのもあるけどネー。」

「うーそ。」

「ん?」

「嘘よ、嘘。まぁ、ジェニーのお芝居が下手くそだったから、直ぐにわかったけどね。だから、桜ちゃんはサッカー大好きだから、ボールを食べてもらいます。」

「えーーーー!?」


そう言って後ろから取り出した箱は、2号ぐらいのサイズの箱。

本当にボールじゃないよね?まさかね…。

「じゃじゃ~ん!」

そう言って箱の上部を持ち上げると、そこにはサッカーボールがあった。

「ほ…、本当に、ボール…?」

「そんなわけないでしょ。」

そう言ってフォークを渡された。

「早く早く、食べてみて。」

言われるがままにフォークをボールに刺す。

「あれ?」

凄く柔らかい感触。これはまさにケーキのスポンジの感じ。

すくってみると、本当にケーキだった。

「ケーキ屋さんがね、特別に作ってくれたの。関東大会優勝おめでとうだって!」

「すご~い!でも…、でも…。私だけが食べちゃったら…。」

「いいの!皆には話してあるけど、誰も反対しなかったよ。」

私はふと、視線を上げて周囲を見渡した。誰もがニッコリ笑っていた。

「生誕祭の主役だからな。教祖様には是非一番の物を食べてもらわないと。」

「そうネー。それに味はたいして変わらないと思うネ~。」

「だけど、桜先輩、後で一口くださいね。」


私は直ぐに視界が歪んだ。

「もう、何で泣いちゃうのよ。」

いおりんが優しく肩を抱いてくれる。

「だって…、だって…。こんなに大勢で、こんなに凄い誕生日会、やったことないから…。嬉しくて…。」

「本当にバカな子。来年も再来年もやるんだから、今のうちに慣れておきなよ。」

「うん…。」

来年以降私達はどうなっているかわからない。

進学する人、実家で仕事を手伝う人、サッカー続けられる人も全員じゃないと思う。

だけど、そんな事関係なく、これからもいつでも会えるって、言ってくれているんだと思った。

とても嬉しい…。

ポロポロと涙が落ちちゃう。

「先輩!早く食べないと、食べられちゃいますよ。」

そう言われて一口食べた。

甘くて柔らかくて溶けちゃいそうな美味しさに、ほんのり塩味を感じたのは涙のせい。

この味は一生忘れないって強く思った。


隣で福ちゃんも自分のケーキを食べる。

「んー!甘くて美味しいです!」

「イチゴすっぺー。」

反対側では天龍ちゃんも食べていた。彼女にケーキという組み合わせが、予想外過ぎてちょっと笑っちゃった。

「俺だってケーキぐらい食うぞ?」

そう言いながら豪快に食べる。

あっ、ほっぽに生クリームついてる。

「天龍ちゃん、動かないで。」

「あ?」

私は彼女のほっぺについている生クリームに触らないように、頭をそっと押さえて顔を近づける。

「おい!桜!」

「うごかないで…。」

そう囁くと、天龍ちゃんはおとなしくなった。

そっと舌の先で生クリームを舐めた。

「ほっぺに生クリームついていたよ。」

「先に言え!びっくりしただろ!」

顔を真っ赤にして怒る天龍ちゃん。なんで怒ってるんだろ?

ふと反対側を見ると、福ちゃんも口元に生クリームつけてる。もう、子供なんだから。

「福ちゃんも動かないで。」

「あぁ、桜先輩…、駄目です…。僕達女の子同士じゃないですか…。あぁ!」

ペロッ

「福ちゃんも生クリームつけてたよ。」

「ぼ…、僕…。お嫁にいけません!」

「ふふふ、大袈裟なんだから。」


「ちょーーーーっと待ったぁぁぁーーーー!桜!あんた何しているのよ!?」

「えっ?二人共ほっぺに生クリームつけていたから…。」

「あぁーーー、もう!とんでもないことしたって自覚ある?」

「ん?」

いおりんが凄く怒っているみたい。何のことだろう?

彼女は直ぐに問題の二人組を見た。

「ちょっ!二人共やめーーーい!」

見ると、部長とジェニーがケーキのお皿を両手で持って神妙な顔付きをしていた。

「ジェニー、覚悟は良いか?」

「OK!」

「天使のキッスをいただくためだ。ここは派手にぶちかまそうじゃないか。」

「これがハラキリ…。なんて崇高すいこうな儀式なの…。」

二人共、とても神妙な顔付き…。何をしようとしているのだろう?

「やめなさい!部屋の掃除、誰がすると思っているの?」

「私が責任を持って、朝までかかってでも綺麗にするぞ。ついでに色んなところも…。」

「部長…、私も付き合うネー。」


「いったい二人は、何をしようとしているの?」

私はたまらず聞いてみた。

「二人はね、顔にケーキをぶつければ、生クリームだらけになるでしょ?そうすれば桜がペロッとしてくれると思っているのよ!」

「ん?そんなに酷かったら、ウェットティッシュで拭くか、洗面所で洗ってくるしかないよね?」

二人の動きがピタッと止まる。

「その手があったかぁ…。」

「奥が深いネー…。」

「ギャハハハハハハハハハッ!残念だったな!」

天龍ちゃんが大笑いしていた。

「桜教…。」

「破門…。」

「懺悔…。」

三姉妹ちゃん達のとどめで、二人は諦めたみたい。

「まーったく、くだらないこと考えていると、私が二人のケーキも食べちゃうぞ。」

藍ちゃんがフォークで奪おうとする。二人は皿を持ったまま逃げちゃったよ。

部屋の隅で寂しそうに食べていた。

よくわからなかったけど、ちょっと可哀想になっちゃった。


だから、皆には内緒にしていたサプライズをすることにしたよ。

まずはションボリしている二人の元へ。

目の前でしゃがむと、両手にサプライズのプレゼント品を握って目の前に出した。

「ん?なんだこれは?」

「ミサンガだよ。私から二人にプレゼント。」

「オオオオォォォォォォォォォォ!!!!!!一生大切にするぞ!」

「私は家の家宝にするネー!!!」

「ダメダメ。ちゃんと使ってね。」

全員同じ色で、オレンジ色なの。

「オレンジ色は、希望とかエネルギッシュって意味があるらしいの。」

手首に縛ろうとしたので、それを止める。

「利き足に付けてね。利き足につけると、友情とか勝負って意味なんだって。」

ミサンガは、つける場所にも意味があるみたいなの。

二人があたふたと付け始めたので、他の人にも配った。


「何だか、全員同じ物をつけているだけで、とても安心するであります。」

香里奈ちゃんの感想だった。

「そうかもね。百舌鳥校の時は、こういうの無かったから…。喜んでもらえるかどうかわからないけど…。」

「僕、もうつけちゃいました。桜先輩からプレゼントいただけるなんて、凄く嬉しいです!」

「あれ?何か書いてない?」

ミーナちゃんが気が付いたみたい。

「うん。目指せ!全国優勝!って書いたよ。」

全員の視線が私に集まった。

「駄目…、だったかな?」

「とんでもねぇ。気合入ったぜぇ。」

天龍ちゃんが試合の時のような、鋭い眼光になったよ。

「私も…、私も一杯シュート防ぎます!」

ミーナちゃんも凄く喜んでくれた。


「桜~。あんたも案外おもしろいことするじゃない。」

いおりんはニヤニヤしながら右足首につけていた。

「うんとね、昔、確か小学生の頃にもらったことあるの。」

「ほぉ?小学生でも女子サッカーあるのか?」

天龍ちゃんの質問だった。

「なかったの。だから男の子からもらったよ。」

そして私は小学校6年生の時の話をした。


「その時に住んでいたのは、北海道の旭川だったかな。そこで小さな小学校に転校したのだけれど、皆サッカーやっていたの。各学年1クラスしかなくて、私達6年生の担任の先生がアマチュアの社会人サッカーをやっていてね。色々と教えてもらってた。だけど、6年生だけだと11人いないから、4年生までも一緒にやっててね。凄く弱かった。」

「その頃の体格差とか、結構あるかもな。成長期だし。」

「部長の言う通りだよ。そんな中、夏休みに私の転校が決まっちゃって、夏休み前の最後の大会があって、みんな凄く気合入ってた。私と一緒に1勝するんだって。」

「いいね、そういうの。」

藍ちゃんからだ。

「うん。凄く嬉しかった。私も凄く頑張った。そしたらね、初戦勝てたの!もう皆優勝したみたいに喜んでた。だけど、次はあっさり負けちゃった。」

「あらら…。残念ネー…。」

ジェニーが寂しそうな顔をしていた。

「そして夏休み。同じ6年でパスが凄く上手かった男の子がね…、あの…、その…。」

「ん?どうした?」

天龍ちゃんが、どうして言いづらいのか不思議そうにのぞきこんでいた。思い切って話してみた。

「告白されたの。ミサンガを手に持って。」

「ヒュー!桜もやるじゃない!」

可憐ちゃんがニヤニヤしながら聞いていた。ちょっと恥ずかしかったけど、話を続けた。

「『俺のパスを全部受けとめてくれたのは、お前が初めてだ。だからお前がどこへ行っても、俺がちゃんと届くパスを出すから、大きくなったら、一番近くで最高のパスを出すから…。だから付き合って欲しい。』って言われたの。」

「格好良いですね!小学生にしては、おませさんです!」

「そうなの福ちゃん。その子、凄くカリスマがあるって言うか、誰もが引き付けられちゃう感じで、とても人気があったの。もうドキドキしちゃって、どうして良いかわからずに、ごめんなさい、って断っちゃった。」

「ちょっと勿体無いかもであります。」

香里奈ちゃんは自分の事のように聞き入っていた。

「次の引っ越し先が九州だったからね…。それに私、恋愛とかって感情は持っていなかったの。」

「そうだろう、そうだろう。ここは私のような頼れる人と付き合うべきだ。」

部長が元気になって前に出てきたところを、いおりんに取り押さえられた。

「そんでミサンガなんて思いついたの?」

「うん。」

「ちなみにその男の子、なんて名前なの?」

「松山 日向ひなた君だよ。」

「また日向君と会えるといいね。」

「会ってくれるかな?」

「桜、いっつも言ってるじゃーん。「大丈夫!」ってね。それよ、それ。」

「うーん。そうかなぁ…。そうだといいけどね。はい!私の昔話しは終わりです!ケーキ食べちゃいましょ。」


何だか昔話しで盛り上がりつつ、クリスマス兼誕生日会は楽しく過ぎていきました。

この時は、まさか日向君と直ぐに会えることになるとは、夢にも思っていませんでした。

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