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フィールドに舞う桜と共に  作者: しーた
『奇跡の桜』編
24/90

第24話『ジェニーの作戦』

つぐは大との戦いでのハーフタイム。

私達は既に疲れきっている様子ネー。まぁ、それも仕方ないかも。大学生チーム相手によくやっている方だとは思うネ。

とはいえ、相手には余力がある。前半はこっちの戦力分析をしていたかも。

さて、桜はどうでるかな?

早速ホワイトボードを持ってきたネー。


「おさらいするよー。まず、最初の得点チャンスだった時だけど…。」

前半を振り返りながら、こういう動きも出来たよねとか、こうするともっと良かったかもと説明していく。最近は聞いている方からの質問や提案もあったりして、かなり浸透してきているね。しかし桜はよく覚えていると思うよ。私ですらこんなに覚えてないね。

桜は、守備についてはとても良かったと言っているネー。

確かに安定していたし、取られてしまった1点のところは体格差と、やはり経験や駆け引きの差であって、これからカバー出来ていけると思うね。

ただ、両ウィングが守備的に動きすぎていたとも指摘しているよ。これは仕方ないんじゃないと発言したけども、攻めなければ勝てないと桜は言う。確かにそうネー。

だからサッカーは難しいとも付け足したね。


「前半は敢えてプレーを抑えてもらった人がいるのだけど分かる?」

みんな考えている。

「ジェニーか?」

天龍が気が付いたね。

「そう、こっそり桜と取り決めしていたネー。」

「だけどさ、そのぐらいの差では、埋まらない力量の違いがあると思うぞ。」

部長の指摘だね。そう思うのは普通かな?

「こっちにも苦しいながらも余力があるってこと。それはとても大きな武器になるよ。」

「桜先輩は勝てるって思っているのですか?」

フクがたまらず聞いたよ。確かにみんなはそうは思ってないよね。


「だって、勝ちたくない?」

桜の言葉に誰もがポカーンとなったよ。

「はははははははっ!俺も勝ちたいぜ!百舌鳥高の前に、あいつの鼻をへし折ってやる!」

天龍が桜の提案に乗ったネー。

「そりゃぁ、勝ちたいけどさ…。」

部長もそう思っているが自信がなさそうね。確かに相手は経験でも技術でも格上だよ。

「サッカーはね、作戦も重要になってくるよ。1点多く取って試合終了の笛を聞けば勝ちなの。だからね…。」

桜は時々ホワイトボードを使って後半の作戦を披露したね。あのチームに勝つにはこれしかないかな~。


「相手が前半様子見していたのは相手の作戦であって、後半いつでも追加点が取れるという油断だと思うの。だから後半は、相手の作戦を上回る作戦で挑めば勝てる。桜ヶ丘学園の初勝利が大学生、それも日本代表がいるチームなんて、面白いじゃん!」

ニシシーと笑う桜。可愛い…、いや、頼もしい!

だいたい、私が目立ってないとかプレーを抑えていたなんて言っていたけど、あれは嘘。守備に徹するしかなくて、攻撃参加はあまり出来なかっただけだよ。

きっと彼女は、守備はディフェンス陣に踏ん張ってもらって、両ウィングとボランチの私が攻撃参加することで、チャンスは絶対あるって思っていると思うね。

GKミーナの調子も良いしネ~。というか、彼女は才能あるよ。アメリカに連れて帰りたいぐらいにね。


桜の元には人が集まる。惹き付けるというか、彼女と一緒にいると何かが起こる、自分が変われる、そんな期待をついついしちゃうね。だから私もアメリカからやってきたよ。今もワクワクしているネ~。

そんな私達を、桜は必死になって導こうとしている。サッカーを始めたばかりの仲間を懸命に指導している姿は、全然辛そうに見えないし、むしろ楽しそうネー。

だから惹かれ合っている。そのうちに夢中になっちゃう。

だから私も、そのビッグウェーブに迷わず飛び乗るネ!


つぐは大チームがピッチに出て行き始めたよ。

「さぁ、桜ヶ丘の反撃だよ!」

「よーし!いっちょやるか!!」

「僕もまだまだ走れます!」

「走るのなら私だって負けないから!」

「攻撃のリズムは守備からだぞ!」

掛け声を掛け合いながら仲間が走りだすネー。

ふふふ…、日本人って見た目と違って、とても闘志があるのよね。いつもは押したら倒れそうな彼女達も、いざピッチに経てばサムライそのもの。

何がナデシコよ。何が清らかで美しい日本人女性よ。彼女達はサムライ。私は嫌というほど知っているね。敵にまわすと怖い存在だけど、味方だとこれほど心強いことはないネー。


コートチェンジして円陣を組むよ。

「では、作戦通りに頑張ろう!」

「舞い散れ桜ヶ丘!!!」

「ファイッ!オオオォォォォォ!!!」

全員が自分のポジションへと散らばったね。桜は私の少し前でキョロキョロと全体の様子を見て、そして振り返り私を見たよ。そして両手を合わせてごめんねとウィンクしたね。とてもキュート!

私は小さく右手を上げて答えたよ。さっきは私が隠し玉みたいな言い方をしたけど、そうではないと彼女もわかっているね。チームメイトを勢いに乗せる為の嘘だとね。

だけど大丈夫。心配いらないね。半分は本当だったから!

日本に来て始めて、試合で右足を開放するよ。私だって母国では将来のアメリカ代表へと期待されているんだから!


ピッーーーーーーー

後半戦開始の笛が鳴る。ボールは桜ヶ丘からね。

天龍から桜へボールが渡ると、フォワードがスゥーと前へ走る。両サイドも前へ走りだしたね。

守備陣もゆっくり最終ラインを押し上げる。

私は桜の後方を右に左に移動しながらフォローするよ。彼女に対しては格段に厳しいチェックが二人以上でかかるから。

私は直ぐに駆け寄りボールを受け取るね。そしてワンタッチで右サイドへ大きくパスを出したね。そこにはいおりんが待ち構えているよ。

彼女は桜とパス交換しながら勝機を伺う。私も前線へ向かうネー!

いおりんは逆サイドへボールを振った。そこへ藍が走りこんで、ダイレクトにフクへパス。相手ディフェンダーともつれながらも、ゴール前へグラウンドのボールが入る。

天龍はダイレクトでシュートを打つ素振りを見せる。相手守備陣に緊張が走った。

だけど彼女はそれを打たずにヒールで後ろの桜にパスを出す。再度緊張感が高まる。


すぐにディフェンダーが桜を取り囲むけど、彼女は更にヒールで後方へパスを出したネー!

そこへは、私が走り込んでいるよ!

大きく助走を取り、ダイレクトでミドルシュート!!!

ドスンッ!

ボールはゴールに吸い込まれたネ~!

直ぐに桜が駆け寄って抱きついた。おうふ…。興奮するネ…。

「ナイスシュート!ジェニー!!」

「サンキュー!」

「ジェニー先輩!凄いです!!」

「やるじゃないジェニー!」

賞賛の嵐はいつでもどこでも嬉しいネ~。

「さっそく我がチームの盲点を突いてきたわね~。」

田中さんが感嘆しているね。


そう、桜の作戦第一弾はミドルシュート。最前線でのシュートは田中サンに防がれちゃうね。パスコースもシュートコースも塞がれて、オロオロしている隙にボールまで奪われちゃう。フィジカルでも対抗するのは難しいし、本当にやっかいなディフェンスだね。だけど、ミドルシュートなら彼女の能力も完全には発揮出来ないネ。しかも天龍が彼女のブラインド役となっているのも重要なことね。

ハーフタイムで私が隠し玉と言った桜の話は、半分は嘘だけど、これだけのミドルシュートはなかなか打てないと自負しているよ。唯一打てるとしたら桜なんだけどね…。


とにかく上手くいったネ~。ここからは作戦の第二弾に移行する。

そう、ここからは徹底的に守備に徹する。つまり逃げ切るね。

私はあまり好きな作戦ではないのだけれど、桜が言うように勝つには必要な時もあるのは理解しているよ。

つぐは大は慌てずじっくり攻めてきたよ。奇襲やカウンターを警戒しつつ、確実にゆっくり侵攻してくる。

長い時間相手陣地にボールが行かない時間が続く。ポストプレイヤーのフクを残し、天龍も浅いところでは守備に奔走する。

サイドからサイドへ振られながら、知らない内に走らされて、守備陣はもうヘロヘロ…。これはまずいネ…。


そこへボランチの位置で、田中サンがボールを受け取る。彼女は再び左サイドへ大きくボールを出した。ピッチ上の雰囲気が、今までと違う!

「踏ん張りどころネー!」

クロスを上げられシュートを打つけど、味方に当たった。跳ね返ったボールを再び敵が確保すると、またもやクロスが上げられる。シュートを打たれたけど、今度はミーナがファインセーブしたネ。

だけど更に転がったボールを、勢い良く敵が奪い、ペナルティエリアギリギリぐらいの所にボールが上がるネ…。あっ…。

私はうっすら気付いていながらも対応が遅れたネ。田中サンだ。

彼女は胸でトラップするとそのままシュートを放つ。あぁ…。


ピピッーーーーー

ゴールを知らせる笛が鳴る。

喜び合うつぐは大選手。やはり戦い方を熟知していると思うよ。こちらを揺さぶり体力を奪い怒涛のごとく攻め立てられたネ。

時間は残り10分…。

嫌な時間に同点にされてしまった。これも計算されてやられたなら相手が悪すぎるネ…。

だけど私は信じている。

だって、チームメイトは誰ひとりとして勝利を諦めていないから!

後1点。先に取った方が圧倒的に有利に立てる。

相手に取られてしまって、ガッチリ守られたらどうしようも無くなるネ。

だから、だからこちらから攻める、桜が言うようにね!

桜は中央で三本の指を立てて、目一杯上へと手を伸ばした。

作戦の第三弾が発動したネ~!

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