『笑顔』
僕は宮野さん達と別れた後、あの三つのドアがある廊下で静かに佇んでいた。
廊下には、梨守さんの四肢がバラバラとなって散らばっていた。
当然、顔も切断されていたので、廊下に転がっていた。
梨守さんの目は虚ろとなって、僕を見ていた。
まるで、恐怖を訴えているかのようにただ、僕をずっと見ていた。
僕は近寄り、梨守さんの開いたままの目を手で重ねて、閉ざした。
……これ以上、彼女の無残な姿を見ていたくなかった。
彼女の散らばった四肢を集めて、廊下の向こう側へと置き去りにした。
そして、最初の「鐘」のドアの前に座り込んだ。
びっしりと、大量にプリントを挟み込んだファイルを見る。
梨守さんが殺される前に、彼女から受け取ったものだ。
「……梨守さん」
彼女の姿を頭に思い浮かべて、目が熱くなった。
それを我慢しながら、ファイルをゆっくり捲っていく。
ファイルを捲っていく内に、ある重大な事がわかった。
この殺人ゲームは、今回だけではなく、過去に何度も行われていた事。
その度に、全員が死亡している事など……。
僕は夢中になって、次々とページを捲っていった。
「……ッ!」
思わず、息を飲み込んでしまう。
その捲ったページには、今まで殺してきた人の死体の写真と死亡要因が、大量の文字と一緒に紙に記されていた。
<肝臓剥き出し>、<頭部串刺し>、<四肢切断>。
惨殺な殺し方が、たくさん書かれている。
本当に人間なのか、と疑ってしまうくらいにとても惨たらしい。
最後のページを捲ると、僕達の事が書かれていた。
<NO.51 白木 アキラ>
ライアーに踊らされて、死体を偽装する。
だがその後、腹部を何度も刺されて、死亡。
その後、ライアーに臓器を抉られて、死亡者の右手に持たせる。
「こんなクズは死んで当然。イヒヒヒヒヒッ!」
――死体を偽装……? それに、アキラはあの時、“左手”に臓器を持っていたはずだが……。
そこには、一番最初に殺されたアキラの殺人方法が、異なって書かれていた。
一体、どういう事なのだろうか。
アキラはあの時、死んでいなかったとでも言うのだろうか。
分からない。
今は確かめる術がない。
「……アキラ」
最後のかぎカッコに書かれた殺人者の言葉が、なんとも腹立たしく、同時に恐怖が込みあがってくる。
人を殺して、どうしてこんな言葉が書けるのだろうか……。
アキラのすぐ下に書かれていた、次の項目を見る。
<NO.52 月村 優>
「鐘」の部屋を空けてそのまま下敷きになり、死亡。
四肢が廊下に飛び散り、残った者達に恐怖を与える。
血は廊下にどろどろ流れて、恐怖の顔を浮かべるよ。
「第二のゲームは幕を閉じたよ。これで残りは3人……」
「そ…んなっ!」
このファイルが正しいならば、本来なら第二の殺人は梨守さんではなく、僕が死んでいたという事になる。
「梨……守…さん…!」
胃がキリキリと締め付けられるように、痛くなる。
目が熱い。目頭が少し濡れてしまう。
……梨守さんは、僕のせいで死んでしまったのか。
どうしようもない罪悪感が心の底から、湧き上がってくる。
それを、グッと押さえながら、次の項目を見た。
<NO.53 大城 沙流歌>
腹部を切り裂かれて、死亡。
体内の臓器を全て剥ぎ取られて、トイレに捨てる。
「死んで同然。だって、うざかったんだもの」
「大城さん……」
今更だが、彼女を一人で行かせてしまった事を後悔した。
この事が書かれているという事は、彼女はいずれ殺されてしまう。
――……だが、今更この事を言っても、どうなるのだろうか?
大城さんだって、どうせ僕の事を信じてはくれないだろう。
いや、こんな重要なファイルを持っている僕を犯人と疑うかもしれない。
最後の項目を見てみる。
そこには衝撃的な事が書かれていた。
<NO.54 梨守 真夜>
ライアーの正体を暴く。
今までのゲームで唯一の生還者となるだろう。
「残念。これでゲームのおしまい」
“このゲームのおしまい”。
すなわち、脱出方法なのだろうか。
梨守さんを生かしておけば、彼女だけでも助かった。
最後の項目にはそう書かれている。
「え……最後?」
僕は目を大きく揺らしながら、もう一度、今回の殺人ゲームのファイルを捲った。
だが、何度探しても、最後の一人の名前がファイルには書かれていなかった。
「宮野 美影」の名前が……!
それでは……、それでは、犯人は!?
「……もう、わかってしまったのね」
扉の開けた音が聞こえると同時に背後から、ファイルに名前が記されていなかった者の声が聞こえてくる。
振り向くと、その手には血に染まった包丁が握り締められていた。
「本当はあなたが死んでいたのよ。そのファイルに書かれていたとおりにね」
「君が……君が殺したのか?!」
僕の質問に薄気味悪い笑みを交わして、答える。
「ええ、そうよ」
殺人鬼は包丁にこびり付いた血を嘗め回しながら、僕に一歩ずつ迫ってきた。
「どうして、どうしてこんな事を!」
後退しながら、殺人鬼に問いかける。
手に汗を握り締め、後退する僕の姿を見て、殺人鬼は狂ったように笑いながら答える。
「どうしてって……楽しいからに決まっているでしょ?」
当然のように、殺人鬼は僕に言い放った。
さっきまで、共に行動をしていた時とはまるっきり違う顔で。
その目に狂気を宿しながら、包丁をこちらに向けてくる。
「大城さんは!? 彼女ももう殺したのか?」
「そうよ。呆気なく死んじゃったわ。助けてー、助けてー……って、馬鹿みたいにひたすら叫んでいたわ。……うるさかったから、一突きで殺しちゃった」
「く、狂ってる……!」
後退するも背中が壁に当たって、これ以上はもう進めない。
足がガクガクと震え始め、立っている事もできずに地面に座ってしまう。
その僕の様子を見て、発狂しながら笑う殺人鬼。
だんだんと殺人鬼が近づいてくるにつれて、僕の心拍数が上がった。
これは恐怖の鼓動。バクン、バクンと胸打つ心音が、はっきりと聞こえてくる。
もう、まともな呼吸ができなかったため、息を荒げた。
殺人鬼は、もうすぐそこまで迫っている!
「はぁ…はぁ!! く、来るな! 来ないでくれ!」
僕の声も届かず、殺人鬼は包丁を振り上げた。
「……あ…ああ! やめろ……! やめてくれぇええっ!」
ありったけ振り絞った声で、僕は叫んだ。
包丁は振り上げたまま、殺人鬼は口元に笑みを浮かべている。
そして、ゆっくりと静かにこう告げた。
そう、僕達に見せた事のない最高の笑顔を浮かべて。
「……だーめ」
……グチャッ!
――あるニュースより
「先日、4人の少年少女が遺体が○○市○○区の廃棄工場から、発見されました。警察によると、4人はまったく何の関係もなく、犯人の無差別犯行ではないかと、考えております。なお、似たような事件が先週から起こっており、これで5件目になります。警察側はこれを集団グループによる犯行ではないかと、今後も調査を調べていく模様です。えー、次のニュースは……――」
プツンッ
ほら、あなたも目覚めれば……。
そこはまったく知らない空間。
「死と疑心の部屋へようこそ」
私は歓迎します。
あなた方を、心行くまで楽しませてあげましょう。
イヒヒヒヒヒヒッヒッヒ……。
作者の桃月です!
このたびは最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
では、早速ですが、ネタバレをw!
この作品の「嘘」というのは『最初は「グチャッ」』での前書きに書かれた事です。
これは犯人である美影の言葉であり、「私は“嘘”はつきません」というのがまるっきり、嘘という事なります。
つまり、美影視点で描かれた言葉はほとんどが嘘となります。
(もちろん、実際に人は死にましたが……)
美影視点に変えたのは、犯人が誰なのかわからなくするため、と上に記載した事の二つです。
まぁ、ぶっちゃけた話を犯人の嘘の言葉で話を進めていくという……w(まぁ、無茶はありましたが。
「美影は精神が狂っています」
白木殺人の件ですが、ファイルに書いてある通り、死体を偽装しています。
「踊らされた」と書かれていますが、大方、美影に「梨守さんの事を協力する」等と吹き込ませて死体偽装を協力させたと思ってください。
その後、無抵抗の白木をナイフで殺害。(あとは、沙流歌をファイルの通りにトイレで殺した後、白木をファイル通りにする。
あと、この物語の「真犯人」、読者の皆様です。
物語を読んでいく=人が次々と死ぬ
どのミステリー作品やホラー作品、サスペンス作品でも、これは殺人の定義となっています。(まぁ、言ってしまったらなんですが(汗)
前書きにも書いておりましたが、「これ以上読むな」や「引き返せる」はその事を指しております。
6話の「肉裂いて…」の内容についてですが、少々やりすぎたと思います。
不快な気分になった方、本当にすみませんでしたmm
はぁ〜。この作品を書いていて思ったことは「本当に難しい」です。
こんなグロい小説を書いたのは初めて(MURDER GAMEは一応アクションですのでw)だったので、本当にリアルに書くことができなかったと思います。
本当に申し訳ないです(汗)
次、書くときは頑張ってもっとリアルな描写が書けるように、頑張っておきますw!
ふぅ〜。これでやっと「僕、女になりました」を一筋で書く事ができました!(こらw
「僕なり」もよろしくお願いします!
では、本当に今まで読んでいただき、ありがとうございました!
これからも違う小説で書いていきますので、応援よろしくお願いしますヾ(*゜∇^*)ノ