呪印のキャンディ
常連の女の子に言われた。
『いつもお店が開いてるようにみえるんですけど、お休みってあるんですか?』
それに私は答えた。
『ないですね。あっても何か緊急の用で出かけている時くらいですか』
女の子は何故か落ち込んだ。
しばらく待っていると、女の子は改めて発言した。
『あの、店長さん以外にお店番してる人を見かけませんけど、ずっと一人でお店を回してるんですよね?』
『ええそうです。置いているものはあまり強い呪物がないとはいえ、やはり素人に任せきりにするのは私としても不安でしてね』
素人に下手に任せて、呪物が暴走してしまってはどうなるかわかったものではない。店が壊れるだけであれば別にいいのだが、呪物がそんな『真っ直ぐ』な効果なわけはない。周囲一体を呪い場に変えてしまい、国の神官たちが派遣されるような自体になってしまう可能性も考慮すべきだ。そうなればさすがにお国から止められてしまうだろう。いくら国王様から認可されている店とはいえ、だ。
『せめて信用できる方がいれば任せてもいいのですが』
信用できる人間。
それを見つけることがどれだけ難しいか。
私自身、審美眼に自信はあれども、見る目はないだろうし。
どうしたものか。
私が思案に耽っていると、女の子が顔を上げて私の目を見て言ってくる。
『あ、あのそれじゃあ私を――』
それにしても美しい。造形もさることながら、純真な目。輝く光を宿し、利発な様子で私のような顔の男とも別け隔てなく普通に会話する。それだけで彼女の心も美しいということがよくわかる。それにしても直接聞いたことはないが、年齢は17、8。さぞモテるだろう。30間近で浮いた話一つない私とは違って。なんて、比べること自体彼女に失礼だろうか。
『――店長さん?』
『ああ、すまない。少し考え事をしていてね。えっと、なんと……?』
問いなおすと彼女は「うぅ…」と唸るように声を発し、
『なんでもないですっ!』
と顔を背けてしまった。
うーん、どうやら機嫌を損ねてしまったようだ。これも全て話を聞いていなかった私が悪いのだが、申し訳ない。
☆
なんて話が数日前にあったのだが、それを踏まえて私は思ったわけだ。
そうだ、弟子をとろう。
弟子をとって、呪術について教えこむ。そしてたまに、店を弟子に任せるのだ。その間私はゆっくり新しい服を作れる。
美の天啓は待ってくれない。思いついたその時その瞬間形に為さねば、それはやがて変わりない凡作となるだろう。そんな一時を確実に収めるには、そう、店番が必要だ。
そんな訳で私は、街の孤児院へときていた。
呪術師となるにはそれなりの素質が必要だ。募集しても適切な人間がくるとは思えない。であれば、こちらから可能性のあるところへ行く方がいくらか建設的というもの。
それに教えるならやはり、美しいものがいい。大人はやはり煤けて汚い人間が多い。それに呪術を教えるなら必然的に時間がかかる。教えるものによっては泊まり込むこともあるだろう。むしろ教えることの膨大さや日中は店番があることを考えると遅くなることが予想される。となると家を持つ者より、そのまま引き取ることのできる孤児の方が手早い。幸い部屋の空きはあることだし……。
そんなことを昨夜唐突に気付き、急遽店を休みにして来たのだった。
常連の子には何も伝えずに店を休みにして申し訳ないが、店に張り紙で休みとその理由も添えて書いてあることだし大丈夫だろう。
私が訪れた孤児院は、お店から最も近い孤児院。つまり郊外に最も近いところにある院だ。商業の中心から離れた場所というのは、必然的に地価が安く土地を確保しやすい。その孤児院もそれなりに大きく、小さいながら子供が遊ぶ空間が確保されていた。
「すみません」
そこで私は外で遊んでいた子供たちに声をかける。
顔を見られると驚いて逃げられてしまうので、フードはいつも以上に深く被る。子供は見上げてくるので、ばれないために屈んで話しかけた。
「なぁに?」
やはり子供はいい。美への可能性が詰まっている。
「院長先生を呼んできてくれないかな? 少し話があってね」
わかったー、と子供たちはみんなで競争をするかのように院の中へと走って行く。
しばらくして、院から4,50程度の男性が現れた。院長だろう。
「遅くなって申し訳ありません。して本日はどのようなご用件で?」
男性は私を見て顔を強ばらせた。顔は見せていないものの、やはりフードで顔を隠した人間と相対すれば緊張もするか。
「急な来訪申し訳ございません。今日は――子供を一人、頂きたくて伺わせていただきました」
☆
院長に案内され、孤児院の一室へと招かれた。
院長の執務室だろう。質素なデスクとチェアが奥に置かれ、手前には対話用の小さなソファとテーブルが置いてあった。こちらは奥のデスクより質が良さそうだ。削るところは削り、必要なところにお金を回す。ここは恵まれた孤児院だろう。子供たちが元気に遊んでいたこともその考えを補強する。
「本日は子供を一人預りたいとのことですが、どういう意図で?」
恐らくこちらの外見を気にしているのだろう。顔を見せない男がいれば警戒もする。
私は院長に「失礼」と断ってから、フードを脱いだ。
院長は私の顔を見て、案の定驚く。
「その傷は……」
「少し、ありましてね。こんな顔ですので子供たちに不用意に見せれば怯えるかもしれませんので、隠しておりました」
院長から警戒の色が和らぐのを感じとってから、先ほどの問いに答える。
「弟子をとろうと思い、こちらを伺わせていただきました」
「弟子?」
「はい。――呪術師の弟子を」
呪術師、と発した途端院長が一気に顔を強ばらせた。
「じゅ、呪術師ですか。そ、それはまた珍しいご職業で」
焦っている。やはり呪術師に対する世間の印象はあまりよろしくない様子。しかし仕方がないか。呪術師の半分は、そういうのを生業としている人間なのだから。
ちなみに残りのほぼ全てはそれに対向する術として呪術を研究している者たちだ。ほぼ全てから外れた人間は……自分のような趣味でやっている人間だろう。
院長は恐らくこれからこちらの要求をどうはねるかを考えているのだろう。焦りながらも目を斜め上に向けたり、こちらを伺ったり、指を組み替えたりと忙しない。
これは用意してきた甲斐があったかなと、懐から証書を取り出した。
「ご安心を。私、国から認可を頂いております対呪術の専門家でして……」
あまり公にすることはないのだが、私とその店は国――もっというなら陛下から許可をもらってやっている、国王認可の正式な店だ。だから店の経営で売上がなくても、国からの援助でやっていける。というか先月まではそうだった。なんと先日、ついに服が一着売れたのだ。経営にかかる費用なんて、私の食費くらいなものだからそれで今月はプラス。コレも全て常連の子のおかげ。女の子さまさま……。
っとと、本題から逸れたが。
私自身あまり研究には興味が無いものの有用な対抗術をいくつか開発している。そのため同業では優秀な呪術師という扱いらしい。しかしそれと陛下からの覚えがいいのは関係ない。師匠が理由なのだが今はいいだろう。
私が国から発行された証書を提示すると、院長は目を丸くして文字を読み出す。
そこには私の名前が記されており、彼の者を対呪術の専門家として国が認める旨が書かれている。
院長は読み終えるとほっと一息をつき、
「わかりました、でしたら問題ないでしょう」
と安堵しつつ言った。
「さて、そういうわけでして呪術の才能がある者を探しにこちらへ参りました」
「呪術の才能、ですか……。どういったもので?」
「……いえ、説明できるものではないのである程度利発な者を見せていただきたいのですが」
呪術の才能とはいうが、一言で言えばどれだけ性格が捻くれているかだ。師匠もそう言っていたし、私自身そう考えている。特に対呪・呪術師は。相手の思考を読み、それに対する対抗術を編み出し、相手がそれを踏まえて出し抜こうとするのを更に出し抜く。時にはただ真っ直ぐなだけのそれが効果的だったりと、イタチごっこでもあるから気の長いものがより理想的だ。
魔力の素養がなくても術式の開発はできるし、いくつかの薬品の調合はできる。だからなくてもいいのだが、できればあった方がいい。
「分かりました。であればこれからこちらに呼んでまいります。少々お待ちください」
しばらくして、院長が戻ってきた。
「これでこちらの院にいる優れた者は以上になります」
7,8歳くらいの子から15くらいの子までが並ぶ。8人ほどだ。利発な者、と要求しただけあってか列を乱すようなやんちゃっ子はいない。捻くれているという意味ではそういった子の方が良かったかもしれない。これは失敗したか。
ひとまずはと、ざっと子供たちを見回す。ピンとくる子はいない。魔力の素養がある者もいない。
「君たち、呪術師とはどのような存在だと思う?」
私は指をピンと立て、子供たちに質問した。なおフードは被りなおしているので顔を見られる心配も少ない。
年齢順に並んでいるようなので、年長から順に指差し答えてもらう。
「えと、呪いをかける人でしょうか?」
「呪いから守る術も作っていると聞いた覚えがあります」
「えとその、すっ、すごく怖い人……」
「薬を作る人?」
「怪しいことしてそうだと思います」
「怪しげな儀式をするとか」
「人を呪って殺す人」
「怖い人ー」
質問も当たり障りないというか一般的な解釈ばかり。
「それじゃあこのキャンディ。みんな舐めて感想を聞かせて」
懐からキャンディを入れた袋を取り出し、子供たちに1つずつ渡す。皆すぐに口にした。――いや、一人だけ周りが食べたのを見てからだが、女の子だし態度もオドオドしているからただの気質だろう。
みんな口々に美味しい、甘い、などと声を挙げる。
これはだめかなと、院長に目を移す――間際、部屋の扉が少しだけ開いていることに気がついた。
ははーん、と思いつつ「どうしようか」などと声を上げて席を立つ。
手で子供たちにそのまま、と合図しながら扉へと近づき。
「どうしたんだい?」
と声をかけながら扉を開いた。
「「「うわーーー」」」
部屋を覗いていた子供たちが、扉の開閉に沿って倒れてくる。
「こ、こらお前たち!」
院長が怒る。
「に、逃げろーー」
「えーい」
などと言って走り去ろうとする子供たち。
それらを捕まえてどんな子か見ようと思ったのだが、それ以上に気になる存在が廊下の端にいた。
黒い髪の男の子だ。15歳くらい――孤児院にいることを考えると成人(15歳)間近だろう男の子。彼は騒いで逃げる子供たちを、冷めた目で見ていた。
誰かと一緒にいるわけでもなく、ただ一人くだらないものを見る目つきで、逃げ去る子供たちを見ていたのだ。
「院長!」
私の呼びかけに、院長が背筋を伸ばして焦りの声を放つ。無視して言った。
「あの子をこちらへ」
私の指は、黒髪の男の子を示していた。
☆
部屋にいた子供たちには退室してもらった。
彼らには素養はない。代わりに黒髪の男の子を部屋に招く。そのとき男の子とすれ違った少女が驚いたような顔と――心配するような目を少年に向けた。
「院長、彼は?」
「すっ、すみません、この子はあまり物覚えがよくなく、こちらには呼んでおりませんでした」
あまり物覚えがよくない。
先ほどの冷めた目がちらつく。
「少年、呪術師とはどのような存在だと思う?」
「呪い師」
間髪入れず答えた。
くく、それにしてもそう答えるか。確かにそうだ、呪術師は呪い師。間違っていない。
「では次の質問だ。少年、君は図書室で返却されてきた図書の整理を任された。どうやって整理する?」
懐かしい質問をする。これは師匠に自分が見出された時質された内容だ。
その時自分はこう答えた。
『借りた人間に、元の場所に戻してもらいます』
私は、『いい方向に』捻ている。師匠にそう言われたことがある。
そうだろう。でなければ呪術であんな道楽はしない。
さて、少年はなんと答える?
「やりません」
「くく、くはははは」
「じゅ、呪術師様?」
思わず声が漏れてしまった。
そうか、やらないか。整理を任されておいて。
はは、いや、まじめに答えようという気がないのだろう。だから、だからこそ、その回答は私の気を引くぞ?
「では少年。この飴を」
「お断りします」
くく、くくく。
「合格、合格だ。少年、私のところに来なさい。君はいい呪術師になる」
院長は私の言葉に驚いている。子供が無礼を働いていたというのに、それを気に入り預かろうというのだ。そんな顔もするだろう。
肝心の少年はというと、私の言葉に嫌そうに顔をしかめる。
「見たところ君は魔力を扱う素養もあるようだ。私が責任を以って一流にしよう。それでもダメか?」
この少年、恐らく院長たちの目を欺いて育ってきた――いや、院長の焦り具合からすると、能力をわかっていて紹介しなかったのだろう。この子は明らかに問題児であり――聡明だ。子供の遊びを冷めた目で見つめ、普通の大人が欲する回答の真逆を答える神経。渡そうとする飴を拒否する図太さ。いや、最後のは私が欲していたものだが。こんなフードを被った怪しげな人間を警戒しないなど、呪術師ならあってはならないことだから。
「お断りします」
少年ははっきりと拒絶を言葉にした。
助けを求めるように院長を見る。院長は無理ですと首を振った。ではやはり少年は、万事が万事この調子なのだろう。
どうしたものかと頭を巡らす私に、先ほど少年を心配していた少女の顔が浮かんだ。
「う~ん、これでは先ほどいた子供の中から選ばないといけないなあ~」
顎に手を当て、悩んでいると主張する。
「呪術師のことをいくらか知っていたし、二人目の子かなあ。いやそれとも全く知識がない一番若い子にしようか。教えこむのも悪くない。……あ、そうだ。あのおどおどした女の子とか可愛かったし、将来美人に育ちそうだし義娘にするのもいいかもしれないな」
おどおどした女の子、にほんの僅かにだけ眉を歪めた。ビンゴ。
ここで少年にはわからないよう、院長に耳打ちする。
「さっきいた女の子と少年はどんな関係ですか?」
院長は突然の耳打ちに驚きながらも、小声で返してくれる。
「彼の唯一の友達、でしょうか。彼は院内でも孤立しているようで、あまり親しい者がいないのです」
心配してくれて情が移ったといったところでしょうか。
「そうですね、では先程の女の子を呼んできてください」
にやにやしながら小声でそっと伝えると、院長は快く応じてくれた。
☆
「し、失礼します……い、院長先生に呼ばれてきました」
少女が入ってくると、少年は今度はもっと分かりやすく、目を見開いた。
そして視線をこちらに向ける。まさかさっきの言葉が本気とは思わなかったと言わんばかりだ。
ふふ、こういう人の顔を伺ってするやりとりは子供じゃあまり経験できまい。できればその純真さを持ったまま育って欲しいが――私が引き取ろうと引き取るまいと無理だろうなあ。
「すまないね。こちらの少年を連れて行こうと思ったのだが、本人はあまり乗り気じゃなかったので止めさせてもらったよ。それで君を引き受けようと想うのだが、君はどうだい? 呪術に興味はあるかな?」
少年が固まっている間に、さっさと説明を済ます。
女の子は「私が?」と驚いている様子だったが、ちらちらと少年の方を見てからこちらに目線を合わせる。
「あ、あの!」
「なんだい?」
「彼をもう一回見てくれませんか! 私が説得しますから!」
ここからどう彼を揺さぶって本音を吐き出させようかと考えていたのだが、彼女が説得してくれるなら話が早い。
私が首肯すると、彼女は目の前で少年と話し始めた。
「どうしてお話を断ったの?」
「あんな怪しいやつについていけるか」
「怪しくない人の時だって頷かなかったじゃない!」
「あれは結局向こうから断ってきただろ」
「あなたがそういう態度を続けたからでしょ!」
「向こうに忍耐力がなかっただけだよ、俺のせいじゃない」
「もう! ああ言えばこう言う!」
こうしてみると、少年もただの子供だな。
少女の方は、知り合いとならビクつかずに話せるみたいだ。オドオドしていたのは……やっぱり私の見た目かな?
二人の会話はその後もエスカレートして、最終的には少年が論破して終わった。
「だから、俺は呪術師にはならない。俺は成人してから冒険者になる。お前はそれまで大人しくしてろ」
少年の言葉に、少女はしゅん、とうつむく。
「……ぱい、だよ……」
「え?」
「私、心配だよ……。冒険者になって、二度と会えなかったらどうしようって。どこかで死んじゃわないかって……」
さしもの少年も、泣き落としには弱いようだ。少女の目に浮かぶ涙と震えた声に、少年は返す言葉を出すこともできない。
「はーい、そこまで。君たちそろそろ仲直りしようか」
私はそこに割り込み、二人の口元に先ほどの飴を放り込む。
女の子は、すぐにさっき食べた飴だと気づいて、涙を拭いながら美味しいと口を綻ばせた。
一方対照的に、少年は複雑な表情で飴をなめている。よかった、吐き出されずには済んだらしい。
「なんだ、この飴。苦いはずなのに甘いぞ」
――!
「味がわかるのか!?」
私は思わず、驚愕して大声を出してしまった。
少年は何を言っているんだというふうな顔をした。
「その飴は素材は野菜や薬草といった体にいいものと魔力にちょっとした反応をする魔草でできていてね。本来の味はとても苦いんだが、呪術を込めて甘いと錯覚させている特製キャンディなんだ」
その言葉に二人は目を丸くした。
少年は何故元の苦さがわかったんだ? 苦いはずなのに甘い? 舌先で味の感覚がわかるのか? それとも抗魔特性を持っていて、呪術を弱めたのか?
どちらにせよ、思わぬ拾い物だ。その力は呪術師にとって必ず役立つ。
これはますます弟子にしたくなってきた。
少女はちらちらと少年を伺っている。
少年は苦いはずの甘いキャンディを複雑な表情でなめながら、私の様子を伺っている。
二人が飴をなめ終わるまで、部屋はずっと静かだった。
「さて、では改めて聞きます。少年、私の弟子にならないかい?」
「お断りします」
すげなく断られる。
「そうか。……君は冒険者になりたいのかい?」
二人の話を聞いていて気になったのがこの言葉だ。
冒険者。未踏の地を求め、旅する者。
いや、今では何でも屋という印象のほうが強いだろうか。近隣の魔物退治、一般人には取りにいけない薬草魔草の採取。果ては近所の溝掃除。魔王の討伐に合わせ、魔物の活動が沈下した今は、仕事を得るにも苦労している体が資本の仕事だ。
少年はそういうタイプではないと断言できるが。
「ええそうです。冒険者に」
自分が言い出したことだ、否定はしない。だが本当になりたいのかという単純な疑問。
「何故、冒険者に?」
「魔物を倒し、金銭を得る。悪人を捉え、名誉を得る。これほど単純な仕事はないでしょう。私もそういった仕事に憧れているだけですよ」
少年の目を見て、嘘だ、とは言い切れなかった。
言葉にしなかった何かが、彼の言葉に隠されているのだろう。それが何かはわからないが。
「……分かりました。それでは気が変わりましたら、郊外にある呪術店へお越しください。私はいつでも歓迎いたします」
慇懃に腰を曲げ、礼をする。
そしてそっと言葉を呟くのだ。
「<マインドスティール>」