神様は残酷だと思った
彼女は僕にこう言った。これは運命なのだと────
僕はどこにでもいる高校生だった。そう、あの日までは・・・
僕はあの日、塾からの帰り道、遅くなってしまったのでいつもとは違う道を通り近道をしていた。それがいけなかったのか、異空間に巻き込まれた。こんなこと言っても誰も信じてはくれないだろう。だが、僕は確かに異空間に来ていた。そして、そこで出会った少女に言われたのだ。君は選ばれたと。
僕は何を言われたのかわからなかった。というか、わかりたくもなかった。なんとなく、嫌な予感がしたのだ。僕がこれからすることはとても辛いことだということが。
その少女は僕に言った。この世界を救って欲しいと。そしてこうも言った。私を殺して、そうすれば、世界は元に戻ると。
僕はそんなことできないと言った。でも彼女は、僕なら必ずできると言い切った。なんでそんなことが言いきれるのか、僕にはわからなかった。
数日を僕はその世界で過ごした、その時、戸惑っていた僕に彼女は教えてくれた。この世界の人間では彼女を殺すことができないと。そんな馬鹿なと思った。でも彼女は真実だと言った。そしてそばに控えていた1人の若い青年兵士が彼女を斬った・・・
普通ならこれで死んでしまう。僕はそう思った。だが・・・
「ね?この世界の人は、私のこと殺せないの」
はっきりと、彼女の澄んだ声がこの時初めて聞こえた。
そこで初めて、僕は彼女に惹かれていたということに気づいた。なぜ今気づいてしまったんだろう、あの時僕は何度恨んだことか。
だからこそ、神様は本当に残酷だと思った。なぜ僕が彼女を、この少女を殺さなければならないのかと。僕でなくてもよかったのではないか。なぜ彼女が死ななければならないのだと。僕はその少女がただ平和と幸せを願っている、優しい子にしかみえなかった。そして心のどこかで僕は彼女と幸せに暮らしていきたいと、願ってしまっていた。そんなことは叶わないとわかっていながらも・・・
そして僕は銃を渡された。彼女を殺すための、道具を。僕は嫌だと言った。でも彼女は首を横に振り、おねがいしますと言った。
「貴方しかいないんです・・・お願いします・・・私を、殺してください・・・」
彼女の両目から涙が溢れてくる。僕は嫌だった。でも・・・それが彼女のためなら、彼女がこの世界を本当に愛していることを知ってしまったから、僕は・・・・・
「じゃあ、また・・・僕は君に会って、次は幸せになりたいな」
僕はそう、彼女に銃口を向けながら言った。苦笑いをしていたのだろうか、そして、頬に涙が伝っていたのも気付かず、ただただ彼女の目をじっと見て。
彼女は僕を見て、嬉しそうに微笑みながら頷いた。そして、次の瞬間・・・
僕は彼女を撃ち抜いた。
そんな前世の記憶を持つ僕は。
前世の彼女に会えるわけもないのにただひたすら彼女を探し続けている。
そしてもし彼女に会えたら僕はこう言うのだ
今度こそ、一緒に幸せになろう、と・・・・・