静かな二人―血の繋がらない兄妹―
本屋の袋をぶら下げながら静口迪は妹の鈴愛と一緒に家へ向かっていると、ふらふらと向こうから歩いてくる女性に見覚えがあった。
同じ大学に通う。的井希恵羅だった。
ふらふらで何か様子がおかしいと迪が思っていると、鈴愛が彼女をじっと凝視しながら迪の服を掴んでいた。
くいっくいっくいっ。3回引っ張る。
その行為に迪は彼女の様子がおかしいのもなんとなく頷けた。
3回服を引っ張るのは霊がいる。
鈴愛はある事情で喋る事が出来ないため、ジェスチャーや携帯の音声アプリを使って会話をしている。
なので声をかける変わりに触れたり服を引っ張るなどの合図をして交流している。
また、鈴愛には霊感がありる。霊の姿も声も感じ取れるのだが本人は怖いらしくいつも迪に引っ付いて様子を伺っている。いない場合は霊の方を見ず、意識しないようにしている。
対して迪は霊感がないため存在にたいして信じてないが、鈴愛が感じたものは信じている。この、矛盾してることには本人も自覚はある。
今回は知り合いに霊が憑いてるのか、と内心溜め息をついていると、彼女と目があった。
「静口じゃない」
希恵羅はやつれてる感じはするが意識はまだはっきりしているように見えた。
迪は返事の変わりに頷くと、彼女は相変わらず無口ねと呟いてから迪の後ろに隠れるように希恵羅の様子を伺う鈴愛を見下ろした。
「何、幼女誘拐でもしたの」
希恵羅がその言うと迪は「妹」っと答えながら、鈴愛の頭を優しく撫でた。
「似てないわね」
その言葉に頷く迪。希恵羅はちょっとした冗談で言ったつもりだったのにその答えに少し驚く。
その顔色は気づけばいつもの様子であった。もしかして霊がいなくなったのかと迪はちらっと鈴愛を見ると、小さく頷いていた。
何の理由で憑いてたのやらと思いながら、自分と鈴愛を見比べている希恵羅に呟いた。
「養子」
「マジで……そう、初めまして私は的井希恵羅です。名前何て言うの?」
少しばかり信じれない希恵羅はしゃがみこみ、鈴愛に自己紹介を求めた。
鈴愛は少し戸惑うも、ポシェットから携帯を取り出し指でいじる。
一瞬希恵羅はその行為にムッとしたが携帯から発せられた機械の声の言葉で理解した。
『こんにちわ。きえらおねえさん。私は、しずぐちすずめです。私は話すことが出来ないので、音声のアプリでごめんなさい』
「そう、すずめちゃんって言うの。可愛い名前ね」
『ありがとう。おねえさんも綺麗な名前』
「本当?ありがとう」
「……、…」
迪は少し鈴愛の希恵羅に対してのお世辞に笑いそうになりながら、なんとか無表情を通した。
確かに背も女性にしては高くすらりとして、見た目も綺麗な感じだが性格はきつく、気がつけば携帯の画面やら写真らしきものを眺めては一人微笑んでいる。少し変わった女性だ。
しかも写真らしきものについて触れると「なんでもいいじゃない」と誤魔化し何かとは答えない。
迪は一度ちらっと見たことがあり、人が写ってるとまでは確認できた。それが男か女かはわからなかったが、なんとなく盗撮に近いようには感じた。
あれがもし盗撮だったら通報かと考えていると、希恵羅が「じゃあ」っと言ってさっていった。
『ちょっと怖そうな人だね』
機械の声がそう呟き、確かにちょっと怖いかもなと迪は頷いた。
それから、携帯の時刻を見てから今日は夕飯は二人だけだと思い出し外食にでもするかと迪は鈴愛を見下ろした。
「飯、食べに行く?」
そう問いかけると鈴愛は花が咲いたように頷いた。
『お子様ランチ!』
嬉しそうな鈴愛に迪は優しく微笑んだ。