放課後―彼女ではありません友達です―
放課後校舎を出て、正門へと向かうため歩いていると一緒にいた友人の孝が手を双眼鏡見たいにして何か見つめていた。
「あそこにいる子は女子中学生かね」
中学生?つい最近そのあたりの少女と関わったが、そう言えば学校前今朝、菊乃が後程っと言っていたのを思い出したが
まさか彼女なわけ―――。
「ほら、黒髪のボブヘアー見たいなおとなしめな子、彼氏か誰か待ってんかね」
孝の言葉にはっとして、正門を見た。
まさしく菊乃が通学カバンをぶらさげながら正門で佇んでいた。
菊乃が俺に気づき微笑んだ。
「へ?」
微笑む菊乃の視線が俺とわかった孝は交互に俺と菊乃を見て、最後に俺を見つめた。
「裏切り者ぉ!」
「違う!」
嘆きながら俺の首をしめる孝を落ち着かせようとするが聞いてくれやしない。
ことの元凶はクスクス可笑しそうに笑っている。
いや、お前のせいなんだけど。
「それでは邪魔者は一人で帰りますわ」
なんだその「裏切り者めくそ爆発しろ見たいな」目は、違うからな。
孝の恨めしそうな目と周囲の視線から俺は早くこの場から去りたかった。
「あめちゃんの彼女ちゃん。男は狼だから気を付けてね」
彼女ちゃう!
つか何吹き込んでんだよこいつ。
訂正しようと俺が口を開くまえに、落ち着いた菊乃の声が先に言った。
「何か誤解をしてますが、彼女ではありません。ただの友達ですよ」
にっこり笑う。
「あ、そうなの」
何処か安堵した顔になり、悪かったなと俺に視線を向けた。
俺は溜め息をついてから、菊乃を見下ろすと菊乃もこちらを見上げて「いきましょうか」と呟いた。
「え、あー、うん」
とりあえず頷き、俺は菊乃と帰ることになった。
「あ、そう言えば、こちらも言わせてください氷雨さんの友人さん」
「?」
途中で歩を止めた菊乃が孝の方を振り返り呟いた。
「男が狼であるならば、狼は気を付けるべきですね女は赤ずきんに扮した猟師かもしれませんから」
「………」
菊乃の言葉に呆けてる孝はかなり間があいてから「そ、そうだね」と吃りながら頷いた。
「それでは失礼します」
菊乃は軽く会釈し歩みだし、俺もそれに続いた。
友人を見知らぬ少女にとられ、一人寂しく帰ることになった孝は少女の言い放った言葉に少しだけ考えていた。
それは言い放った彼女自身のものなのだろうか、それとも別の女をさしてるのだろうか。
考えを巡らしながら歩いていると誰かととぶつかった。
「きゃっ」
その拍子にぶつかった相手が倒れ、相手の持ち物が散らばりそれを見た孝は少し寒気を感じた。
良く知っている友人の写った写真。
さっきまで一緒にいた友人の写真で、どれも隠し撮りされたものに見えた。
ぶつかった相手は直ぐ様それを片付けから、孝を見上げた。
「見た?今の…」
気の強そうな女性が孝を睨み、孝はさっぱり何も見てないふりを演じた。
数秒彼女は孝を睨んでから、そうならよかったと言って立ち上がった。
「あ、すみません。あの」
「いいわよ。私の配慮が悪かっただけだから、気にしないで」
女性はすたすたと氷雨たちが帰った同じ方へ向かっていった。
「女は赤ずきんに扮した猟師」
氷雨の友達と言っていた少女の言葉を思い出した。