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お日様色

作者: Koto

どうしてこうなってるのか、全く皆目見当もつかない状況にあたしは立たされている。

目の前には大柄なクラスの問題児でいわゆる不良なんかやってる蔵前くん(髪はオレンジ、ピアスはごっそり、おまけに煙草くさい)が、あたしを屋上のごつごつとして冷たい床に押し倒して上からじいっと見下ろしてるし。なんですか、この状況。なにかの遊びですか。

差出人不明の謎の手紙があたしの靴箱に入ってて、来てみればこうなるとか新手の嫌がらせですか。


「内村さん」


考え込んでいたあたしにそっと囁くように彼が名前を呼ぶ。

思わずぴくりと体が反応してしまったけれど(もちろんいやらしい意味なんて含まれておりませんよ)、恐る恐る顔をあげれば何を考えているのかわからない表情をしていて逆に対応に困る。


「なんでしょう……?」


そう言えば彼はため息をついてがっくり肩を落とした。

何に対してがっくりしているのかわからないけど。

訝しげに彼を見つめていると、さきほどまで太陽の光を遮っていた雲が風に流れたのか姿を消し光が降り注ぐ。

あったかいな、なんて的外れのことを考えていると、太陽の光はあたしたちまでせまり、よりいっそう暖かく照らす。


(あ……。)


途端に、塗りつぶされたような人工的な彼のオレンジの髪が光にすけてキラキラと光った。それはまるでお日様に同化しているようでどこか神秘的。思わず触ってみたくなるほど美しいとさえ思う。そっと手を伸ばして触ってみようかな、なんて思った矢先に復活した彼はガバッと顔をあげ、あたしを抱きしめた。



「なっ!?」



お前は何がしたいんだよ!

なんて言葉をむりやり飲み込む。だって相手は一応ヤンキーというかちんぴら?というか、とりあえず不良様だから。おっかないじゃん、ねぇ?



「す、す……」

「すす??」

「好きです!!!!!」



馬鹿でかい声に耳が痛い。

ん?てゆうか今なんて??


恥ずかしそうに顔を赤らめながら口元に手をやる蔵前君。

光がさしてるからか余計に赤い。目もなんだかうっすら涙ぐんでるのかキラキラしてる。

思わず手を伸ばして撫でてやれば、蔵前君は複雑そうな顔をしながらもさらに顔を赤めた。


「好きって、本当?」

「……ああ」


おとなしく撫でられてた彼は頷きながら肯定する。そんな彼が可愛いと思ってしまっている自分がいるのは是非とも気のせいだと思いたいけど……。


「俺と付き合ってくれ」

「……それはちょっと」


そしてあっさりとお断りしたあたしに対して、自分のことながらびっくりした。


「なんで!」

「煙草くさいから」


うっと顔をこわばらせた彼はまたしてもがっくりと肩を落とした。うん、なんか噂とは違って可愛いね。噂だったらとんでもないことしてるってよく聞くけど(喧嘩とか、カツアゲとか、婦女暴行とか…あれ?最後はちょっとされかけた?)、まあ案外そうじゃないのかも。


「やめたら付き合うか?」


子犬のように見上げるのやめてください。

うっと言葉が詰まっちゃうじゃないの……。


「……なんであたしと付き合いたいの?」

「は?好きだから」


然も当たり前のように言う彼に戸惑いつつ、あたしは言葉を続ける。


「蔵前君、ちょっとやんちゃだけど顔は良いじゃない?だったらあたしみたいに地味じゃなくて、取り巻きしてるような可愛くて美人な子と付き合ったほうがお似合いだと思うけど」

「俺はお前がいいんだよ。別にほかの女なんて興味ないね」


さっきとは打って変わって獣みたいな目をする。さっきまで幼気な子犬だったのに。


「あたし表情薄いから見てて楽しくないよ?」

「今日は緊張したり戸惑ったり優しい顔したりしてた」

「……きれいでも美人でも可愛くもないよ?」

「内村さんはきれいだし美人だし可愛い」

「…………、いやそれはないでしょ」


まっすぐドストレートに目をみて言ってくるもんだから気恥ずかしい。

どう言えば諦めるのかな、って思いつつ見上げれば、蔵前君の大きな手があたしの頬を撫でた。



「っ、」



内村さんはキレイだよ。そう低く甘い声でつぶやいた彼は、あたしの今時ないだろうと思われがちなおさげのゴムをほどき、眼鏡を奪った。



「ほら」



ほらって言われてもわかんないよ。

でもぼやけた視界で見つめた彼の表情はありえないくらい優しくて、甘い。

嘘偽りなんてまったくないって感じがまた困る。


「なぁ、」


そう言って彼はあたしを軽々と抱き上げ、胡坐をかいその上にすとんと下ろした。



「っ」

「付き合うよな?」



唇の距離が近い。

最早小さくこくりと頷くしかできなかった。


突発的に思いついた話。

ころころ表情の変わる男子は可愛い!

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