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柚木崎さんと日高くん

作者: 常緑園
掲載日:2026/02/04

物書きは初めてです。

暖かい気持ちで読んでいただけると嬉しいです。

私は柚木崎


そして日髙は私の友人である。


日高の容姿はそんなに悪くない。成績も良い。

出会ったのは高校に入ってからだが、なにかと気が合うのでよく行動を共にしている。


今日は数学の補修で私だけ居残りなのだが、静寂に包まれた環境でひたすら二次関数とにらめっこしていると気が狂いそうになるので、道連れとして日髙を同伴させている。

こういう時にひとり話し相手がいるだけである程度の気休めになるので、放課後という貴重な時間を使って無駄話につきあってくれるのはとてもありがたい。


数字と記号の羅列にもやっと終わりが見え、話したい事をひと通り話し終えた後にいつもは話さないような話題を振ってみることにした。


「小中のころ好きな人とか気になった人っていた?」


高校生にもなって恋愛経験のないこいつに色恋の話を振るのはいささか無謀だと思ったが、9年間という人生半分以上の長い期間だ、気になったやつ1人2人ぐらいはいるだろう。


「中2の時に気になっていた子ならいたね」

日髙は少し目をつぶった後、恥ずかしそうに言った。


ふ、予想通り。2D環境(ギャルゲー)での恋愛経験(ラブロマンス)しかなさそうなこいつにも人間らしい経験の1つや2つはあるのだ。


「どんな人?」

狩人は獲物に余裕は与えない。矢継ぎ早な聞き方になったのは決してこいつの恋愛変遷が気になったからとかではない。


「同級生の女の子だよ、少し変わった子だったけど」

日髙はもう、過去の甘酸っぱい思い出への恥じらいは感じていないようだった。


この感情の切り替えの早さ

あんたも大概な変人だよといいかけたが、思い出に水をさしてはいけないと思い口をつぐんだ


「俺は図書委員だったから、昼休みに委員会の女の子と持ち回りで本の貸し出しの当番をしててさ、貸し出しはパソコンで管理をしてたから、貸し出し用のカードを通すとその人が以前借りた本の履歴が全部見れるんだよ」


うちの図書室にもその制度はあった、まさか図書委員会のやつらに自分の趣味嗜好(あいどくしょ)を握られていたとは思わなかったけど


「で、その気になってた同級生の女の子なんだけど毎回図書室で同じ本を借りててさ、その本に何か秘密があるんじゃないかって思って実際に借りて読んでみたんだけどただの文庫本なんだよ。」


「何かほかに理由があるってことか」

突然なミステリの登場に思わず前屈みになる。

文系の私にとってはX、Y とのにらめっこよりもこちらの方が魅力的だ。


「そうそう、どうしても気になってね。委員会の女の子が偶然その子と同じクラスだったから、委員会の女の子にその子のクラスでの様子とかを聞いてみたらさ、にやにやした顔でさ「あの子は読書とかしないよ」っていうからさらに謎は深まったわけ。」

日高のおしゃべりのギアが上がってきた。


「不思議ちゃんやね」


「そんなミステリアスなところが素敵だなと思って、合同授業とか昼休みとかで見かけるたび目で追ってたりしてたんだけど…

やっぱ恥ずかしいからさ...俺から話しかけたりすることはなくて」

青春じゃん。私はそんな経験ないのに日高のくせに生意気だぞ。


「幸運にも中3で同じクラスになって、ちょくちょく話すようになったから思い切って本人に理由を聞いてみたらさ、あの子 何て言ったと思う?」


「・・・」


「自分の奇行がばれてはずかしかったんだろうね

 顔を真っ赤にして、「同じ本を借り続けてたら、気になってる男の子の方から声かけてくれるかなって思ってたの」ってさ」

日高はクスクス笑いながら話を続けた


「・・・衝撃の告白やね」

色んな意味で


「その子が片思いしてる男の子がどんな奴か知らないけど、それ聞いてその子への興味が冷めちゃってさ

、こっちは勝手にワクワクして勝手に失望してその子とはそれっきりさ。」

日高は話し終えて満足したらしく遠い目をしている


私がこいつの話から得られた教訓はただ一つ


「おまえアホだろ!」

私のなげた消しゴムは間抜けな顔をした日高のおでこにクリーンヒットし、どこかへ飛んで行った。


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