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木枯らしに吹かれて  作者: 桜木 斗真


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1/1

木枯らしに吹かれて

木々の葉が次第に落ちていき、季節の移ろいを静かに告げるころ。


僕はベンチへと腰かけ、本を読んでいた。


最近までは、ここはきれいな銀杏並木が見ることができる場所であったが、今では、冷たい風に吹かれ散りゆくばかりで、銀杏の葉は静かに色を失っていっている。


僕はペラペラと勝手に捲られていく本を閉じ、深く座り直す。


心が奪われるほどきれいだったこの場所も、いまや誰も足を止めることなく通り過ぎていき、きっとこのまま静かに忘れ去られてしまうのだろう。


僕だけが散っていく姿をただ無情に見つめていた。


ふと、物思いにふける。


彼女は今幸せなのかと。


もし過去に戻れるとしたら、僕は、彼女に何て声をかけるんだろう。


今度こそ好きを伝えられるのだろうかと、過去の何気ないけれど忘れられない記憶に思いを馳せる。


でももうそれは叶わない。


今になってこんなこと考えるのは、きっと友人との話が原因なんだろう。


少し前、久しぶりに高校の友人と飲みにいった。


積もる話もあり、酔いが回っていた。


どんな話の流れで聞かされたのか覚えてはいないが、アルコールが抜けるほど衝撃だったのは今でも覚えている。


先月、彼女は同じ職場の同僚と結婚したらしいよ、と。


まるで、大したことのないように話す友人に少しいら立ちを覚えた。


彼女は、学園のアイドルのような存在で、僕は、誰よりもそばにいたいとそう願っていた。


でも、彼女を取り巻く周囲や僕と彼女を比べるたび、気づけば僕にとって彼女は誰よりも遠い存在になっていた。


笑顔にさせるのが僕であればいいと分不相応な願いを抱きながらも、自分ではない誰かが彼女を笑顔にしているのを見るたび、その幸せそうな姿を見られるだけで十分だと、何度も自分に言い聞かせた。


誰よりも幸せを願って、誰よりも好いていたのに。


それを言葉に出せなくて、行動に移せなくて。


あまりにも情けなくて。


僕は深く息を吐く。


不甲斐ない過去の自分を、冷たい風が現実へと引き戻していく。


この気持ちに終わりがあるのか。


今日思い出したのも、きっと何かの偶然で、この気持ちも少しずつ風化し、現在から過去のものへと変わっていくのだろう。


もしかしたら、今日にでも。


このまま、銀杏が散るまでここにいればいつしか。


僕は寒さを受け入れ、もう一度、今もなお散っていくその木を見つめる。


木枯らしに当てられた僕の体は次第に冷えていき、長年くすぶるように帯びていた熱は、どこかへと忘れ去られていく。

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