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14話 ニート、再び本部長に会う

2章 1


 あれから4ヶ月が経過した。

 その間に古代鬼の出現はなく、とりあえずの解決となる。

 俺がその間に何をしていたかといえば、何もしていない。

 2ヶ月に1度、異界化迷宮へ行かないといけない件は本部長から探索者協会に出入りするだけでいいという話を教えてもらったので、たまに、数日に1回立ち寄る程度だ。

 特にその間変わったこともなく、死ぬような目にもあっていない。

 だから仮に死んだ場合またやり直しの可能性もあるので、極力危険からは遠ざかっている。

 だがたまに訪問すると、大場さんに気にかけられるようになった。

 探索者になったのに表向きには1度も異界化迷宮へ行っていないやつが気になるらしい。

 迷宮に行けとは言わない辺り行かなくてもいいことを知ってるようだ。

 いらない心配とは伝えたが、意味が通じているかは疑問だ。


 俺は家にいる間、基本的に部屋から出ない。

 家族から外に出る事を求められもしないし、なんならたまの外出を家族は喜んでいる。

 部屋にいる時はネットで時間を潰している。

 迷宮核のせいで日本の国土は減り続けているが、インフラ関係の心配は無い。

 技術は常に進歩しているのだ。


 今日もまた、俺はネットの海に放流された大昔のドラマを見ていた。

 今の時代に芸能の仕事は少ない。

 探索者の中には昔でいうアイドルや芸能人のような扱いの人もいたりするのだが、大半は何かしらの生活を守るための仕事に就いている。

 娯楽に割くほどの余裕はないのだ。

 まぁ完全にないわけでもないのだが、ドラマは迷宮核出現以前に限る。


 そんな日々の毎日は、ある一通のメールによって止められた。



 ――――


「わざわざ来てもらって申し訳ないね」


 巨体を曲げる大男のいる部屋に俺はいた。

 探索者協会本部長の部屋だ。

 いつの間に俺の連絡先を手に入れたのか。

 怖いので聞かない。


 とりあえず要件を聞こう。


「来てもらったのは、とある迷宮の攻略に君の手を貸して欲しいというのがひとつ。君の例のスキルの事について知りたいことがあるのと、国が君の確保に乗り出そうとしているという理由がある」


 前半2つはともかく、3つ目は無視出来ないな。

 どうして今になってだ?


「どうやら君と同じく探索者となった者が、特殊なスキルに目覚めたらしい。それをきっかけに君ともう1人、北見くんという者を調査しようとしているらしいのだよ」


 なるほど。

 その特殊なスキルは気になるが、モルモットになりたくは無い。

 だが呼び出されたという事は何か解決策があるという事か?


「もちろんだ。()()()に行って欲しいのは近年発見したばかりの三等級異界化迷宮だ」


 三等級と聞いて、眉をひそめてしまう。

 二等級の異界化迷宮であれだったのだ。

 それがひとつ等級が上がるだけで危険性は跳ね上がる。

 それに俺は探索者として一等級だ。

 新人も新人、ド新人だ。


「心配は無い。君は既に三等級探索者だ。北見くんも二等級なので、探索者協会の決まりには引っかからない」


 どうやら手を回されたらしい。

 探索者協会の本部長直々の連絡なので、何かあるとは思っていたのでそこまでは驚かない。

 しかし北見さんも二等級か。

 頑張っているんだな。


 で、それで何故俺たちがその迷宮に行かないといけない理由になるんだ?


「端的に言ってしまえば時間稼ぎだよ。我々は外では大っぴらに力は使えない。君たちを守る事は簡単ではない。だが異界に入ってしまえば国も易々と手は出せない」


 異界に入れるのは探索者だけ。

 単純明快だ。


「後は政治だ。私は探索者協会の本部長ではあるが、見ての通りに政治には疎い。だが私には心強い味方が多くてね」


 なるほど。

 俺には分からない世界だ。

 守ってくれるというのなら、従う他ないだろう。


「君たちに行ってもらう迷宮の詳細は部下に用意させよう。もちろん、攻略してもらって構わないし、時間が掛かっても構わない。あるいは」


 そこで本部長は言葉を止める。

 あるいは、()()()()()()()()

 俺が死ねば、俺のスキルが発動するかどうかが判明する。

 死ななければ分からない。


 これも単純明快だな。


 そこに悪意があろうが、目論見があろうが人間観察に疎い俺には判断はつかない。

 今はただ、信じるしかないだろう。


 ニート生活が終わったのは非常に残念だ。





 ――――



 三等級異界化迷宮。

 五段階中の三段階目にあたるこの異界化迷宮は、俺の知る二等級異界化迷宮と比べて格段に広い。

 とある街を丸ごと飲み込み、今尚拡大を続けており以前の二等級異界化迷宮とは違い、積極的な迷宮核の破壊を求められている。

  

 出現する魔物の質と量はともに()()()二等級異界化迷宮とは格段に異なり、危険度も跳ね上がる。


「よろしくお願いします」


 他人行儀に頭を下げる北見さん。

 いつぞやとは異なり、俺と北見さんにほとんど関わりはない。

 大場さんのお節介の時に顔を見た程度で挨拶もろくにしたことが無い。

 だから彼女にとって俺は、得体の知れない存在だろう。

 だが説明は出来ないので、俺たちは今回がほとんど初対面なのだ。

 まぁ前も別に仲の良かった訳ではないけれど。


「今回行くのは三等級の迷宮ですよね? あなたは三等級探索者だと聞きましたが、なぜ私と一緒に行くことになったんですか?」


 どうやら本部長は説明責任を果たさなかったらしい。

 俺はしどろもどろに説明する。

 当然、納得しなかった。


 俺は本部長を恨んだ。 

 

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