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宇宙輸送艦「ネフシュタン」の航海日誌  作者: 菊RIN
【海賊女帝編】青緑の蛇
6/93

出航準備

予定外ですが、2話投稿します。



「あら、中々に様になってますね」


スバルは今、おろしたての艦長服を着て組合に来ている。カウンターに居たケイトの第一声がソレだった。ケイトのニヤけ顔に少しムッとしたが「今日は仕事モードだ」と自分に言い聞かせ平静を装う。


「荷積みに立ち会いが付くんだろ。もういつでも積めるが、都合はどうだ?そのへんの打ち合わせに来た」

「荷主様に話はついております。担当を呼びますので、少々お待ちください」


ケイトが奥に引っ込んだので、スバルは待合席に腰掛ける。


「………あれが使い分けなるものですか」

「ん?あぁ。仕事用の話し方だな」

「学習します」


ナターシャは会話マニュアルをインストールしたばかりなので、スバルの判断でまだ他人との会話を許可されていない。

普段は聞き取りに徹し、こういった合間の会話で確認と修正を繰り返すことにしたのだ。


「お待たせしました。担当のキツカです。よろしくお願いします。

本日はまず、ネフシュタンの倉庫ユニットの衛生状況の確認とクルーの健康状態のチェック、それに合格しましたら積み込み作業に入り、ユニットの密閉と温度管理の確認をします。

その全てをパスしなければ、出航許可は出ません。宜しいですね」


(おいおい、お役所的マニュアル通り、一字一句間違いなく通達からの

若干上からの圧みたいなヤツなんなん)


キツカと名乗った職員は、皺一つ無いビジネススーツに良く磨かれた靴と、毛一本動かない塗り固めたような髪。

背筋は伸び、眼光鋭くスバルを見る。

しかしスバルは、彼の圧がコチラを値踏みする類のものではない、どこかしら余裕の無さから来ているように思えた。


「どうぞ。あぁ、ウチの積み込みクルーは作業用ボットで、指示も私がブリッジから出しますが………ボットも健康診断しますか?」

「っ、不要です!」

「フフッ」


後ろでクスクス笑うケイト。


(あらあら、軽いジョークも通じないか………顔真っ赤でプリプリしてる)

「では早速行きますか、案内します」


船へ移動する一行。その間会話一つ無く、靴音だけが響く。取っ付きにくさも極まって、近くのハズのドッキングポートまでが、やけに長く感じた。




「ここですよ。これが私の船、輸送艦ネフシュタンです」


キツカは一瞬動きが止まった。各造船メーカーの旧型から最新艦まで、彼の頭には全て入っている自負がある。

だが今目の前にある船は、そのどれとも一致しないのだ。どこの誰が設計したのか、キツカはスバルに問い詰めたい思いを懸命に抑えている。

ようやく落ち着いたところで、それぞれの項目を一つ一つチェックする。


「………い、いいでしょう、積み込みを開始してください」

「了解。ボット起動、アームロック解除」


隙間無く積まれる穀物コンテナ。その速さが異常だった。

同量の作業を頼む船で行えば、扱いに慣れたベテランでも1時間では終わらない。それを僅か20分も掛からず終え、気密ロックまで済んでいる。


「積荷の状態データ送信中。フルタイム管理だからいつでも見れるぞ」

「………あ、はい」


キツカの思考が追いつかないまま、全てのチェックは終了した。思考の波に呑まれながらも、仕事を全うした自分を誰かに褒めて欲しいと思う。

ただどうしても聞かずにはいられないキツカは、最後に一つ質問する。


「あ、あの………もしやこれは、星系外の船なんでしょうか?」

「ん?いや。辺境の民間工場で造った、オリジナルのワンオフだ」

「………そうですか」


ここまでのハイスペック艦が辺境の、しかも民間の工場で造られたなんて、キツカは信じられなかった。

斬新な設計と卓越した技術、辺境の一工場に居ていい存在ではない。おそらくマイスターレベルの仕事だ。だが全てのマイスターは、中央のコロニーか軍に居るはず。

いっそ星系外だと肯定してくれた方がまだマシだ。造船関係は自分の仕事では無いし、自分が何を言ったところで漣程の影響も無いだろう。しかしもったいない………

そこまで考えて、半ば諦めのように思考を放棄した。まさかそのマイスターが目の前に居るとも知らず………


「これでようやく出航出来るな」

「そうですね。航行計画は既に組合から提出されています。私はこれで失礼します。良い旅を」


そう言ってキツカはドックから出て行った。酷く疲れた顔をしていたのは、気のせいだろう。



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― 新着の感想 ―
仕事熱心だけどちょっとだけ高圧的な職員が疲弊して去っていくの少しだけスカッとしますね笑 なう(2025/06/11 16:13:25)
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