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宇宙輸送艦「ネフシュタン」の航海日誌  作者: 菊RIN
【海賊女帝編】青緑の蛇
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出航準備………の準備?



 組合を出たスバルとナターシャ。


「ふむ………スバルはあのようなタイプが好みか。なるほど理解した」

「理解するな。好みという訳じゃないよ」

「彼女に好感を持っていると判断したが?」

「それは彼女の仕事振りに対してだ」

「あれくらい私にも可能だが?」

「唯仕事を熟すだけならな。そのうえで相手の立場や感情を慮ったり、丁寧な受け答えでスムーズに仕事を処理する能力は、評価に値する」

「最速で最短で作業を処理するには、不要なスキルと判断するが」

「そこがオマエに足りないところだな。作った俺が言うことじゃないけど、指示を熟すだけなら、それでも良かった。だがこれからは組合や顧客との折衝も必要になってくる。[仕事と作業は違う]んだよ」


実はこれこそが、スバルの行動理念であった。

要訳すれば[プロ意識]とか[職人気質]と言えるものかも知れない。自分だけではなく、相手、或いは周囲の要望に応えてこそ[仕事]であると。

物を作るなら使用者の為に、荷を運ぶなら顧客の為に、満足のいく仕事がしたいと常々思っている。



「………………理解しがたい。私はスバル達の会話から学習して、相互理解ツールとして会話しているが………」

「今まで俺と会話してたのは殆どが男、稀に女性も居たが全て軍人だったろ。これからは会話の対象が多様化するぞ。相手に合わせた会話術も必要になる」

「なるほど………では基本の会話術マニュアルのインストールを希望する」

「………まぁいいだろ。いくつか見繕ってやるよ」




 翌日、商業区にやって来たスバル。

軒を連ねる様々な商店では、肌着からコンバットナイフ、アプリケーションソフトから携帯用ブラスターまで、さすがに軍用品は無いが、民間用ならば大概のものは揃う。金さえ払えばだが。


「商業用会話マニュアルソフトをインストールするのはいいけどよ、TPOに合わせた会話は自分で学習しなきゃだぞ?まぁ、可怪しかったら都度修正するけどな」

「了解した」

「あとは………日用品だけど、よく考えたらそんなに要らないよな」

「要りますよ。いろいろ」


会話に割り込んできたのは、どこか見覚えある女性。オフホワイトの膝丈のワンピースに黒のスキニー、暗めの赤のショート丈のジャケットを着ている。


「!?」

「あらもう忘れたの?昨日受付したでしょ、組合で」

「あ、あぁ………服装が違うから、わからなかった」

「ん?そういえば名乗ってなかったわね。ケイトよ」

「ケイト、さん………それで?何が必要だって?」

「んー、歳も近そうだし[さん]なんて要らないんだけど………先ずは船長服ね」

「船長服?」


スバルの頭に、そのワードは無かった。


「あのね、商船乗りならそれらしい服装ってあるのよ。スバル君、あなた昨日も今日も作業着じゃない!」

「く、君!………いや、今日の作業着は、昨日のと違うぞ!」

「そういう問題じゃないわよ!船長ならお客様と顔を会わせる機会が多いでしょ?モニター越しでも、直接でも。服装って、結構見られてるのよ。その程度の事で評価下がっても、もったいないわよ。組合の信用にも関わるし」

「そんなもんなのか………」

「付いてきて。お店紹介してあげる。ついでに見繕ってあげるわ」


半ば強引にドナドナされるスバル。その後を「私のメイド服にはあれほど拘ったのに、自分の服装は………」とか言いながら付いて行くナターシャ。


「ここよ。さぁ入って」


連れてこられたのは看板の無い店。組合の提携店で、船乗りに限らず飲食店や会社受付等、各種制服を取り扱っているらしい。

ケイトはタブレットを操作して、スバルと船長服のイメージサンプルを交互に見ている。


「うーん………これなんか似合いそう………あ、こっちもいいわね。スバル君はどれがいい?」

「もう任せるよ、わかんねぇし」

「あなたが着るのよ!好みとかないの?」

「んーー、あんまり肩こらないヤツ」

「何よそれ、まぁいいわ。じゃあ、これなんかどう?」

「んじゃそれで」

「見てないじゃない!真面目に選んでよ」

「ケイトが良さげだと思ったんなら、それでいいよ」

「!!あら………そう………そっか」


デザインが決まり、そのまま採寸するスバル。言われるまま腕を上げたり下げたりしている横で、何故か機嫌のいいケイト。


「夕方には仕上がるから、船に届けさせるわね」

「あぁ、頼む。なんとか予算内に収まってよかったよ」


ようやく解放されたスバル達。会話マニュアルのインストールもしなきゃな………などと、今日中終わらせるタスクを考えながら船に戻る。いつの間にかケイトを呼び捨てにしていたことなど気付きもしないで………



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