星間物流組合
辺境の惑星「アムス」がある宙域は、3つの惑星と11のコロニーを有する星系国家「アルバ連合国」の領土である。
スバルがまず向かったのは、隣の惑星「イリス」の惑星軌道上、第二コロニーにある「星間物流組合」である。
この組合に所属する事で、仕事の斡旋や各種保険、修理業者の手配と割引等が受けられる。
コロニーの停泊ドックの優先権もあり、使用料も組合への貢献度によって割引率が上がっていく。
積荷の重要度によっては、護衛艦を付けてくれることもあるらしい。
まぁ、無所属の営業であれば組合費を払わずに済むが、輸送中のトラブルは全て自己責任、荷主との賠償も自己負担と中々に厳しい。
それでも太客を掴まえて、専属契約を結べれば安泰なので、一発逆転狙いの無所属も一定数いるらしい。
閑話休題
組合の建物は、ドッキングポートの近くにあり、徒歩10分圏内というところ。お役所的な佇まいで、入口には乗船していない護衛艦のクルーが、持ち回りで警備に立っている。
「よう、アンタ見ねぇ顔だな」
「あぁ、組合に登録に来た」
「メイド連れてか?ボンボンの道楽なら止めておけ。船乗りはそんな甘え仕事じゃねぇぞ」
「ボンボンでもなけりゃ道楽でもない。一応c級持ちだよ」
「は?退役軍人か何かか?にしちゃあ若えし………まぁいいや。登録は入って正面のカウンターだ」
建物に入りカウンターに向かう。
「………スバル、やはりメイドの格好は不適切だと判断する。余計なトラブルを招く」
「今のはトラブルじゃねぇし。アレは先輩船乗りが、親切心で忠告してくれただけだし」
「そうか?」
「そうだ」
カウンターには愛想の良い女性が座っている。見た目年齢はスバルの少し上だろうか、仕事出来ますオーラがバンバン出ている。
「いらっしゃいませ。物流組合へようこそ。ご要件をお伺いします」
「組合登録に来た。これが船の登録証と俺のライセンス証だ」
「データ拝見します。乗務員は二名ですか?」
「あぁ。俺が船長兼操舵士、コイツがオペレーターだ。後は作業用ボットで廻せる」
「かしこまりました。スバル=マグナ様、船名ネフシュタン、最大積載量9600トン、航行履歴は………あれ?アムスからこちらへの航行のみ………新造艦ですか?」
「そうだが、問題あるか?」
「いえ、新規登録の方は、中古の船で実績を積んて、お金を貯めてから買い替える方が殆どなので。少し驚きましたが問題はありません」
「そうか」
「はい。では仮登録証をお渡しします。本登録には5日程かかりますので」
「仮?早速仕事をしたいと思ってたんだが、仮登録で仕事は出来るのか?」
「星系内での近場でしたら出来なくはありません。ですが………重要度の高い希少品は無理ですね。食料品や一般鉱石でしたら構いません。その分運賃は安いので、スバルさんの船のサイズですと、往復の燃料代くらいにしかならないかと」
ネフシュタンの動力は、ナターシャと同じ位相循環エネルギー炉。スバルが開発した、今最も「永久機関」に近い動力炉である。
ナターシャの極小サイズに比べて、4800倍の出力を誇る大型の炉を4基、最初の火入れ時に「精製エネルマテリア」が必要だが、一度動いてしまえば補給の必要は無い。
「構わない。新造艦だからな、習熟訓練を兼ねてやれる仕事ならそれでいい。燃料代になるなら上々だ」
「なるほど、そういう事ですか。でしたら4〜5日で終われそうなお仕事を見繕いますね」
(うむ。やはりこの受付さんは「出来るタイプ」だな。対応の適格さ、丁寧な受け答え、淀み無い会話術………)
「お待たせしました、こちらの3件はいかがでしょうか?」
「どれどれ………まずここのコロニーで穀物4000トン積んで、第一コロニーで鉱石5000トンを合い積み、工業プラントで鉱石を降ろして畜産プラントに向かい、穀物を降ろして食肉加工品を4000トン積んで、またここに戻って来ると………まぁ、無駄なく廻れて3件分の運賃なら悪くないな」
「この工程なら、多少のプラス収支は見込めるかと」
「そうだな。んじゃ水と食料カートリッジの補給、積み込みの間に日用品の買い出しを済ませたら出るよ」
「はい。では積荷と補給の手配はこちらで行いますので、日用品の買い出しを先に済ませてください。何分初仕事ですので、今回は組合職員が現場に立ち会います。一人で勝手に積み込まないでくださいね」
2025/02/06積載量修正しました。
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