SbyKに追加メンバー3人で5人グループ誕生?
「光をセンターにして、海音とレフト・フィンガーズの3人を合わせて5人で組ませることになったの」
司社長は浮かない顔だった。
「俺は良いですけど……」
海音さんが何でもないように言いかけた声を被せるように、涙声が大きく響いた。
「嫌だよ、僕、海音がいないと何にもできない……」
14歳、中学2年生になった光さんが弱音を吐くのは別にいつものことだ。
透さんは気に留める様子もなく、小さな魔法瓶に入れた白湯を飲んでいた。
優磨は尻尾を振る小型犬のように目を輝かせて、自分と似ていると言われる先輩のメソメソ泣く姿を無遠慮な視線で見続けていた。
まあ、まだ10歳だからそんなものだろう。そう思うやつらに言いたい。おむつモデルの頃から芸歴10年の優磨は、驚くほど立ち回りが上手い。
今だってカメラが回っているからはしゃいで見せているだけで、何からも映されていない時の優磨はスマホでSNSチェックか英会話アプリをしているか、無言でアイマスクをしている。
レフト・フィンガーズの3人に優磨が抜擢された時には、昔からのメンバーも面白くない顔をしていた。
「光くん、泣かないでよ~。一緒に踊ろ?」
そして、優磨のメンバー入りと同時に、もともといた8人からSbyKのファンクラブで人気投票のドべがレフト・フィンガーズから脱退させられた。
レフト・フィンガーズは定員を常に8人に厳守している。年に一度の投票で最下位の8位は、新人と入れ替わる。脱退させられたメンバーが戻るには一からオーディションを受けるしかない。
そして当然、今もレフト・フィンガーズは年一で募集されている。常に入れ替わりが行われるわけで、それをファンが楽しめるようなシステムになっている。
推しを脱退させないように、できることなら次のスターにするようお金を落とすようにも。
長友社長らしい戦略だ。
したがってレフト・フィンガーズの8人は二つに分かれて活動することが多い。
俺、優磨、透さんの3人はそれぞれSbyKのバックダンサーやドラマや舞台の子役。
他の5人は俺たち3人の予備として待機しながら、事務所『TEENtoOLDER』の中でも小さな舞台の端役などをやっている。
SbyKのファンクラブには、レフト・フィンガーズの熱心なファンもいて、彼女たちの多くは「サウスポー・ガール」、略して「サウガール」と呼ばれていた。
「何だ、名波のやつ……」
「あいつ、いつもああやって……」
「三谷だって大概……だろ……」
三谷は俺の苗字だ。
レフト・フィンガーズの補欠は、メンバー間で同志のように振舞うことが多い。当然、そんな風に慣れ合っている奴らは万年候補生でクビが迫っている崖っぷちばかりだ。俺は一線を引いていた。
「でも、なんで急にそんな大きなテコ入れを始めるんですか?」
海音さんがもっともなことを聞く。
きっかけは、海音さんと光さんの外仕事だった。
海音さんはフランスの映画で孤児院の日系少年役を、光さんはハリウッド作品で妖精役と挿入歌の歌唱を務めた。それが予想外の反響を生んだのだ。




