鬼社長と大人な13歳とクッキーモンスターの役作りをする13歳
「俺たちが司さんのお子さんとお孫さんに会うんですか?」
楽屋で海音は驚いた表情を浮かべていた。
光は醬油せんべいをボリボリ齧りながらこちらを見ていて、マネージャーの関ちゃんに「光、こぼれてる、欠片がこぼれている」と注意されていた。
「関ちゃん」と言っても、妻帯者でヒゲ面の中年男性だ。
「娘と不仲でね……孫があなたたちの大ファンなの。海音と光が来るならって言われて……ごめんね、タレントにこんなこと頼むなんてマネジメントする人間として失格だわ」
STAR by keitは初ライブとファースト・シングルが大成功した。一躍人気新進アイドルとなり、セカンドシングルとオリジナル・アルバムが期待されている。
中堅事務所の虎の子を守るどころか自分の恥ずかしいお願いをしている。
下を向いた私に海音が声をかけた。
「行きましょうよ」
「いいの?」
「司さん、ちょっと暗い顔してたから心配してたんですよ。思い切って羽を伸ばしましょう。僕らも楽しめそうだ。な?光?」
光はチョコレートを食べながら頷いている。
「いいの?あなたたちは貴重なオフなんだから、ハワイとか、グアムとか、フランスとか……」
「ロケであっちこっち行ってるから近場がいいな。飛行機乗るの飽きた」
光が口にチョコレートをつけて笑った。
「じゃあ、箱根とか、鎌倉とか……」
「司さん」
海音が弱々しい笑顔でこう言った。
「どんなリゾート地も僕らにとっては大したオフにはなりませんよ。それより、気心と素性の知れた人たちとお家でまったりする方がどれだけ良いか」
光は海音を見て頷いた。
「以下、同文です」
「以下同文で自分の台詞を端折るな。あとな、さっきからお菓子食い過ぎだ。虫歯になるぞ」
「クッキーモンスターの役作りだよ」
「『セサミストリート』の舞台化に期待をするな」
私は深々と頭を下げた。両肩に大人より少し大きな二本の手がポンポンと叩く。




