鬼社長の弱音
私、長友司は冷酷な鬼女社長と呼ばれる。
その異名も上等だ。
私がツカツカと靴音を響かせるたびにスタッフやタレントたちが怯える雰囲気が伝わる。業界でついたあだ名は「ツカツカ司社長」。
それでもなお、普段と様子が変わらない少年に立て続けに2人会った。外山海音と白川光。所属タレントでは、あの「6人」以来だ。
この子たちなら、この二人なら私の消えない思い出、『KATA-KA-NA』を超えるかもしれない。私がまだ若く血気盛んな頃を思い出した。いけない、感傷的になっている。
「司さん、ご気分優れないですか」
運転手で執事の松丸がこちらにちらりと目をやる。そうだ、私を恐れない人はまだ、他にも何人かいるじゃない。でも、実の子に怖がられて嫌われて、それでも孫に会わせてほしいとせがむなんて。「鬼女」の名が廃るわ。
「大丈夫。急がなくていいからね」
そう言うと松丸はゆっくりとしたカーブを描き、車を滑らかに進める。
「海音さんと光さん様様ですね」
私は返事をしなかったが、答えるまでもない。3年ぶりに孫に会う条件として一人で子育てに励む娘が出したのは、「SbyKの二人に孫が会いたいから、そのついでに来て」という返事だった。思わずため息をつき、下を向く。
「そうね」
「認めるなんて珍しいことです」
こんな風に軽口をたたく人が昔はたくさんいた。まだ、私が小娘扱いされていた頃のこと……。




