表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

鉄仮面との約束

「佐助、行こうぜ」


鉄仮面が踵を返したその瞬間、僕は思い切って声を出した。


「あっ、あのう、鉄仮面さん……」


「どうした」


「LINE交換しませんか?」


退学した私立中学校のグループラインは消した。公立中学校のグループラインは招待されても輪に入る勇気はなく、今でも仲のいいグループLINE「光をどうにかする会」とその友達との個人のアカウントしか僕にはない。


一度は拒否された。でも、でも……。


「俺、携帯電話持ってないんだわ」


ガーン!僕が落ち込んでいると、鉄仮面がさっと紙の切れ端を取り出した。


「メールでいい?パソコンなんだけど」


僕が首をぶんぶん縦に振って頷くと、佐助さんが声をかけた。


「こいつ、歌や演技のうまい人を見つけると連絡先を渡すんだよ。あ、怪しくないから安心して……そういうと怪しいか。なんにせよ、会いに行くときは親御さんにも話し通して一緒に、ね」


「鉄仮面さん」


僕は思い切ってさらに話した。


「鉄仮面さんみたいに格好良くなるにはどうしたらいいですか」


「そうだなあ」


「否定しろよ」


鉄仮面と佐助さんは掛け合いは出来上がっている。きっとお互いに慣れているのだろう。


「毎日、タップダンス踏みな。あと、剣道やってごらん。泣き虫も治るよ」


「はい!」


「じゃ、俺はこれで」


2人に僕が一礼すると、事務所『TEENtoOLDERティーントゥオールダー』の名刺を落とした。


拾った鉄仮面が呟く。


「まだ続いてんだな……」


「え?この事務所知ってるんですか?」


驚いた僕の頭に鉄仮面が手を置いた。


「事務所の社長に行っとけ。『タレントを大切にするのなら双六は6つそろう』って」


「はあ……」


「それともう一つ、俺たちのことは誰にも喋っちゃだめだぞ。事務所の社長にも、友達にも、家族にも。仲間や相棒や恋人がいても話しちゃだめだ」


僕が首を縦にぶんぶんぶんぶん振ると、


「そんじゃ」


と声がして、顔を上げたら二人はもう裏口の扉のすぐそばにいた。



その後、事務所に帰ると海音と関さんが迎え入れてくれた。太陽と潤もいて、スタッフの皆はよかったと叫んだ。


お母さんは僕を連れたがったけれど、僕はスタジオに入った。


海音がすっとそばに来てささやく。


「この中に入るってことは、この世界に入るってことだぞ。お前、嘘つけないだろ。大丈夫か?」


「大丈夫」


僕は目を閉じて呟いた。


「秘密の一つや二つくらい、僕にだってあるよ」


歌詞に悩む海音に覚悟を伝えると、納得して頷いてくれた。


イントロが始まる。逃げ出していた日々から、また同じ繰り返しが始まる。僕は大きく息を吸い込んで、最初の声を歌いだした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ