人生初ステージは in 浅草
それから1時間後。舞台は大歓声に包まれた。
「いいぞー!少年!」
「めっちゃ歌うまいじゃん」
「よく見なくても格好いいし、芸能界入ればいいのに」
「あの子、子役やってなかったっけ?」
「見たことあるな」
正体がばれそうになった僕は慌てて舞台の袖にはけた。
僕は頭を下げた。
「楽しかったです」
「いやいや、こっちこそごめんね急に」
佐助さんは頭をかきながら苦笑いした。
「自分が嫌いだったけれど、受け入れてもらえて嬉しかったです」
「そんなになったのはどうしてだ?差し支えなければ言ってみろよ」
「とにかく、ぼくは人間失格なんです。恥の多い人生を送ってきました」
鉄仮面の芸のためのフリップに大きく「人間失格」と書いた。
「漢字が違うな」
佐助さんが真顔で言った。
「え?」
「失格の『格』の左側が『木』じゃなくて人偏になっているよ。あと、『人間』の『日』が『目』になっているし、『恥』の右側は『心』だよ。『忩』じゃないね。書き過ぎたね」
「あぁ……」
「ケアレスミスが多いのかな?」
思わずまた落ち込んだ。
「恥の多い生涯です」
「でも度胸あったぞ、坊主」
あんな格好いい鉄仮面が褒めてくれた。
「誰も指摘できない負のオーラがあったけど、もう今はだいぶ良くなったよ」
佐助さんのフォローも嬉しい。鉄仮面は横を向きながらボソッと呟いた。
「恥の多い人生でもいいじゃねえか。みんなそんなもんだよ。今だけ考えて走り抜けてみても良いんじゃないか?少なくとも、うずくまって無抵抗でいるよりずっと良い」
レプリカの刀を磨きながら、こう付け加えた。
「ただ、素っ裸で走るなよ。メロスじゃねえんだから」




