鉄仮面との出会い
そして海音と楽屋で話すも、僕は外に飛び出した。
そう、そこで恩人「鉄仮面」に出会ったんだ。
事務所を飛び出して、電車に乗った。とにかく逃げ出したかった。
適当に降りた浅草の演芸場に駆け込む。ひとまず暗い場所で身を隠していると、ショーが始まった。
「鉄仮面!」
「待ってたよ!鉄仮面!」
本物そっくりの刀を携えた男の人がステージの真ん中にやって来た。確かに顔には仮面をつけている。でもそれはヨーロッパの昔の人がつけるそれだ。思いっきり日本の袴姿の男の人が何でつけているのかな?
年齢はきっと中年。でも、体を鍛えて若々しい人なんだろうという雰囲気は顔を隠していても伝わってきた。
そこからのパフォーマンスが圧巻だった。タップダンスの後に、舞台のようなコント。そこで見せる刀捌き。どうやら刀を使った芸を「殺陣」というらしい。演目のめくりに書いてある。「さつじん」かな……怖いな、でも格好いい。
笑えて、シリアスで、少しほろっとするコントを見続けていると、心が少しずつ楽になった。
せっかくだからと写真を撮ろうとスマホを向けると、こちらに向かって大声がした。鉄仮面だ。
「そこの坊主!俺の演目は撮影禁止だ!」
見る見るうちに自分が震えていくのがわかる。おびえる僕に、鉄仮面と一緒にコントをしていた「佐助」さんが近づいてきた。
「ごめんな、少年。そんなに大声で言われたら怖いよな。初めてかな?俺たち写真や動画の撮影は禁止なんだ」
こ、こ、こ、怖かったよおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
泣き叫んだ。今までのこと、勝手に写真を撮られて、ネットに上げられて、それが広がって、ヒソヒソ言われて、家族や親せきにも「恥ずかしい」と言われて……。
自分も勝手に写真を撮ったからこそ、今までのことを思い出して泣いた。客席はザワザワしている。また僕は、浮いているんだ。
「坊主、声大きいな」
「え?」
「いい声量してる。歌は好きか?」
あれ、絶叫美形ニキじゃね。そんな声が聞こえてきた。鉄仮面は構わずこちらに近づき、ステージに僕を連れていくと、マイクの前に僕を促した。
「俺も悪かったよ。一緒に歌おう」
「いや、何でそうなるんだよ!この子、いっぱいいっぱいなんだから」
焦る佐助さんに、僕は言った。
「歌っていいんですか?」
「え?君も歌うの?よく分からないなあ」
ここなら知らない人ばかりだし、いっちょ歌ってみようか。僕は息を吸い込んだ。




