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「西山ダディダディ布施明ニキ」爆誕

「踊れよ、踊れ」


上級生に言われるまま、踊る。


「これ歌え、分かってるんだろうな」


池本君に軽く首を抑えられて、恐怖のあまり声が震える。


「もっと大きな声出せよ!」


踊らされ、歌わされ、動画に撮られる。ようやく解放されかけた時にちょうど担任の先生がやって来た。今にして思えば、決定的な場面に出くわして巻き込まれたくなかったのかもしれない。


「お前ら、何やってるんだ」


池本君は嘘くさい笑顔を浮かべて、大きく返事した。


「いやあ、親睦を深めていたんですよ、あ、太田、菅野、掃除きちんとやれよ!」


先生は一瞬、面倒くさそうな顔をしたが、一言残して去った。


「面倒なことすんなよ」


笑顔で一礼した後、先生が去ってから池本君は僕を見て睨みつけた。


「一言でも喋ってみろ、同じようにするぞ」


そして、ふんと鼻を鳴らした。


「大人なんてちょろいもんだな」



「ひーちゃん、お帰り。池本君と遊んできたの?」


「アイツの話はしないで!」


そう叫ぶ僕に驚くお母さんをすり抜けて部屋に入る。


疲れた、怖い……そう思っていると、知らない人からメールが来た。


TikTokのリンクがある。用心しながらも、気になって押した。


そこに映っていたのは、僕のAIだった。


問題や犯罪を起こした芸能人に混ざって僕がコールに合わせて踊る、最後に僕が『君は薔薇より美しい』のラスサビを叫ぶ声が加工していた。


動画は瞬く間に広がり、僕は「西山ダディダディ布施明ニキ」と呼ばれるようになった。



家から出られなくなった僕を、池本君が訪ねた。何も知らないお母さんはどれだけ断っても部屋に入れた。


「大事な友達が来てくれたのよ!このままじゃ不登校児じゃない!自慢の息子だったのに、こんなことになったのは私のせいじゃない……」


混乱したお母さんの「私のせいじゃない」に更に傷ついて、僕と池本君は二人になった。


「帰ってよ」


「計画通りだな」


「え?」


限界寸前の僕に池本君は、勝ち誇った顔で言い放った。


「四月の上級生は仕込みなんだよ、お前を俺の懐に入れて依存させる、俺のものにする、それで『始末』して終わらせる。お前はな、生意気なんだよ、新学期の自己紹介の時に女子から騒がれやがって、ちょっと顔が良くて申し訳程度に子役やってるからって、何で誰も俺を認めないんだ、俺のこと『シュレック』って言うんだ、ざけんなよ、ざけんなよこの野郎……」


心が壊れた僕に、池本君はとどめを刺した。


「お前はダメ人間だ、何をやってもダメだ、お前には価値が無い、価値が無いのは俺じゃない、お前だ、白川」


池本君が去ってから僕は暫く黙っていた。


一時間後、大声で泣いた。心配して部屋に入ったお父さんとお母さんを振り払って泣いた。


妹の詩織が「にいに、にいに、どうしたの、悲しいの?」


僕は叫び続けた。あんなに叫んだのに次の日から声ひとつ出せず布団をかぶって震えていた。



一ヶ月後、前に関わった芸能事務所の話を断るお母さんの電話をひったくった。


「外山海音君いますか?」


過去に共演した中で、彼にだけは友達とも話せないような悩みも話せた。海音とだけ会うことを条件に芸能界に復帰したけれど、問答無用でバラエティ番組に出させられて、不信感でいっぱいだった。


収録が止まってカメラが回らない間、震える僕の手にそっと海音が手を置いた。


「嫌だったらいつでもやめていいんだぞ」


その時の手の感触は忘れても、手に手を置いてくれたことだけは忘れていない。

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