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【ハイファンタジー 西洋・中世】

SSSランクの賞金首

作者: 小雨川蛙

 

 人間の歴史を紐解いていくと、その原点にあるのは勇者による魔王の討伐だった。

 曰く、魔王による圧倒的な力により世界中の人間は恐怖に怯えながら暮らしていたのだ。

 そんな最中、突如生まれた勇者により魔王は討伐され、世界に平和がもたらされた。


 一方、魔族側の歴史を紐解いていけばどうなるか。

 その原点にあるのは魔王による勇者討伐だった。

 曰く、勇者により増長した人間達により世界中の魔族は恐怖に怯えながら暮らしていたのだ。

 そんな最中、突如生まれた魔王により人間の支配から魔族は解放されていき、ようやく世界に平和がもたらされたのだ。


 原点があるということは当然ながら続きがある。

 即ち、人間の歴史では平和になった後に再び魔王が生まれて恐怖に怯えるようになったと記されており、対して魔族の歴史の方でもまた勇者が生まれて人間に支配されるようになったと記されている。


 つまりだ。

 人間と魔族の歴史とは魔王と勇者が交互に生まれ、その都度に魔族と人間のパワーバランスが変わっていく……その不自然なほどに規則正しい順番が存在するのだ。


 さて、魔王が支配していたある時代に勇者パーティーの一員である大賢者がこの法則に気が付いた。

 彼女はそれに気づきながらもそれを誰にも話すことはなかった。

 そして、魔王が勇者の手によって滅び去った時。

 その祝賀会の最中、不意打ちによって大賢者は勇者の首を刎ねてそのまま姿を消した。

 突如行われた大賢者の蛮行により人々は混乱するばかりだったが、彼女が何も口にしなかったために謎は謎のまま消えていき、人々は勇者によってもたらされた平和を傍受する他なかった。


 次に大賢者が表舞台に訪れたのはそれから何十年も後のことだ。

 すっかりと老婆になった彼女は隣には初老の魔族を従えて国王の前に現れた。

「貴様! 今まで何を……!」

 叫ばんばかりの声を出した王の口を大賢者は魔法を使い封じると、隣に立っている魔族を自分の一歩前に立たせた。彼の腕には未だ赤子にも等しい歳の一匹の魔族が不思議そうな顔をしたまま国王を見ていた。

「魔王だ。まだ生まれたばかりだが」

 大賢者の言葉には有無を言わさぬ説得力があった。

 事実、その赤子から放たれる魔力は老齢とは言え大賢者を超えている。

 突如帰還した大賢者と隣に控えている初老の魔族……挙句の果てに生まれたばかりとは言え魔王まで。

 当然ながら王や騎士、そして兵士達はパニックになりそうになる。

 その刹那。

 初老の魔族が赤子の喉を風の魔法でズタズタに引き裂いた。

 人とは違う色で満たされる王の間で無残にも死体に変わった赤子をその場に投げ捨てて魔族が王の下へ一歩踏み出して言った。

「同盟を結びたい」

 その言葉と共に大賢者の魔法が消え失せて、王の口は回るようになった。

「同盟?」

「ああ。人間と魔族の同盟だ」

 混乱の極みにある王に対して、大賢者は今になりようやく魔王と勇者が順繰りに生まれる奇妙な事実について伝えた。

「では誰かに操作されていると?」

 王は血相を変えて問うが大賢者が首を振る。

「わからないさ。そんなこと。もしかしたら世界そのものがそう出来ているのかもしれない。だけど、仮にそうだったとして私達がそれに従う必要なんてないだろう?」

 魔族は大賢者の言葉に頷いて見せると血だらけのままの手を王へ差し出す。

「握ってほしい。この手を。そして、共に作り上げていこうではないか。同盟の世界を。いや……その果てにある共存を」

 その時の王の胸中は定かではない。

 けれど、結果だけを述べるならば王はその魔族が差し出した手を握ったのだ。


 それから千年以上。

 理想には程遠くとも人間と魔族は共に歩める世界は築かれていた。

 今では人間と魔族による異種婚も珍しくなく、また町の中を人間や様々な魔族が共に暮らす世へと変わっていた。

 全てはあの日、人と魔族が手を取り合ったからに他ならない。

 故にこそ、人間も魔族も自分達が迫害した『彼ら』を恐れ続けている。


 とある酒場で人間と魔族が混合になっているパーティーが手配書を見ていた。

「狙っちゃう? 一攫千金」

 一行の中でもお調子者であるリザードマンの少女が手配書を指さして言うと、隣に立っていた人間の女性が軽く彼の肩を叩いて言った。

「もうそのネタ飽きてんのよ」

「いや、そこは付き合ってやれよ」

 魔族の青年がため息交じりに言うと、一行のまとめ役である壮年の獣人がパンっと手を叩いて皆をまとめる。

「くだらねえこと言ってないでとっとと行くぞ。俺らの仕事は精々Bランクがお似合いだ」

 そう言って歩き出した獣人を見て、皆が思い思いに雑談をしながら付き従う。

 魔族と人間が争っていた時代にはとてもではないが考えられない光景だった。

 しかし、今となってはありふれた日常。

 それを支えているのは、ひとえに『彼ら』の犠牲だ。

 先ほどリザードマンの少女が指さしていた手配書。

 そこには堂々とした文字で『SSS』という最高ランクの表記と『生死問わず』という文言。

 そして、現在ではおとぎ話の存在となった『勇者』、『魔王』と書かれていた。

 残念ながら似顔絵はないが。

 今や、実在さえも疑われる『彼ら』の手配書は世界中のあらゆるギルドで見ることが出来るし、それは同時に平和の象徴でもある。


 果たして、世界に『彼ら』は存在するのか。

 もし、存在しているならば『彼ら』は今、何をしているのか。

 考えるのも馬鹿らしいことを考えるものなどいない。

 平和な時代ならばなおさらだ。

 

 長い時間の果てに共存の道を見出した人間と魔族は今日もまた穏やかに日々を暮らしていた。

いつか書きたいな……って思いながら、全く手がついていない作品です。

舞台設定紹介みたいになっちゃいました。

いつか、書いてみたいです。

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