表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 過干渉編 -

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/69

第8話:水の謎と記録


「まず何から説明してくれますか?」

 

藤宮に詰め寄りながら璻の目は必死に藤宮対して訴えかけるよう見つめる。



「早く説明してください。この不思議な現象を‼︎非常にワクワクします‼︎」



そう言っているように藤宮には見えた。

璻の好奇心が目から溢れているのを無意識で藤宮は感じ取ると藤宮は思わずため息を出す。



 …そういえば、謝ってなかったな。一応謝っておくべきだよなここは。初日からあぶない目に合わせたし…



「璻さん初日から危ない目に合わせてすみませんでした。」


藤宮は座ったまま頭を深く下げる。

 

璻はなぜ藤宮が頭を下げ謝ったのか理解できなかった。

璻は驚いた様子で藤宮に聞く

 

「でぇぇぇぇぇ、なんで謝るんですか!足引っ張られた事ですか?気にしてないですよ!あんな事二度とない経験ですよ‼︎」

 

藤宮は璻の態度にあっけらかんとした。

最初の仕事で危ない目に合わせることは一般の仕事の感覚だと即退職するだろう。

そうなっても仕方ない出来事だったと藤宮は責任を感じていた。

軽い返事で返す璻に思わず聞き返す。



「えっ……そうなの?」

 


藤宮は想像もしてないかった璻の返答に混乱をする。


…えぇぇ…最初ちょっと嫌がってたのは誰だよ。なんで何事もなかったのようにケロっとしてるか俺にはこの女の思考はわからん……


藤宮は素直に璻に気持ちを白状する。

 

「いや、俺はてっきり璻さんは巻き込まれないだろうと浅い考えだったので…ちょっとは怒ってるのかと」


璻は笑いながら答える。


「ええー怒ってませんよ。あーでも今回の状況を説明しないままでいたら普通に怒ります。だからすぐに事情を教えてください!」



藤宮は肩を落とすとなんであんなに気にしていたんだろうか少し後悔をしながら待たせてる璻を気遣って早く事情を話すことにする。



「はい。璻さんにせっ……説明します」


 

藤宮は座っているソファに背筋を正すと真剣に聞き始める。


 

「今回、狭山さんの原因は過干渉だったわけです。璻さんが見て体験した黒い手の正体はエゴと呼ばれるものです」



璻は?が頭に浮かぶと思わず藤宮に対して言葉を聞き返す。


「エゴ?エゴってあの思考する方のエゴですか?」


藤宮は璻の言葉に頷き、さらに細かく説明をし始める。


「はい。思考の方であってます。まぁでも狭山さん本人は自分のエゴに今まで気が付かず過ごしてきたわけです。黒い手でしたっけ?璻さんと話し合いしたの?」



「はい。黒い手であと狭山さんの声で話かけられましたね…」



「狭山さんはエゴである自分自身に気づかず、無意識に首に力を入れ自分で首を締めて、呼吸が薄くなったり自分で決める時にも黒い手で足をひっぱり、自分自身を洗脳していたわけですよ」



 璻はそれを聞いて思わずゾッとする。

 



「どっ……ドMの境地じゃないですか……」

 

藤宮は璻の言葉を聞いて顔を手で覆いながら笑い始める。


「ドMの境地って、くっっ……ははははは〜あーーそうですね。はははっ〜」


璻はそんな藤宮を白い目で見つめる。


…真面目に聞いてんのになんでこんなに笑ってるんだ…


笑い続ける藤宮に対して冷たい視線を向ける。

藤宮はそんな視線を感じとったのかスッと笑うのをやめる。

 


「あっーすいません。思わず、話続けますね。今生きている人間は無意識の内にエゴと呼ばれる自分の概念を作って現実を生きてるんですよ。みんな常にエゴに気づいてないんです。それがエゴだと常に気がついていけるのは大体2割の人間です」


璻は今の日本の人口に対して2割とはなんだか少なく感じた。

 

「2割の人間って割合少ないですね」


藤宮は少し悲しそうな表情すると璻の質問に答える。


「はい。8割は普通に暮らして自分のルールや概念を知らずに亡くなるんです。それで幸せな人は世の中にたくさんいます。それはそれで素敵な人生ですし俺はそれでもいいと思います。」


 

「狭山さんはその2割にあたる方だと?」



 

「そうですね。ウチに来る方は2割の人間に分類されますね。狭山さんの場合は水分子の記憶に入った時に相当記憶に固執しないとあんな形では出てきません。エゴは自分と似たような体験をした人間しか選びませんので、今回は璻さんを選び足を引っ張ったと言う事です。」



その言葉を聞いて璻は思いあたる節があった。


「なるほど…言われてみるとそうですね。」

 

璻は記憶を振り返ると親が少し過干渉な場合がいくつもあった事に気がつく。


 …私、そういえばあんまり気がついていなかったな…

 

 藤宮に小声でボソッと言葉をかける。


「今思い出すとたしかに私も両親が少し過干渉でしたね…」



藤宮はその言葉を聞き取り眉間に手を当てた。

璻が過干渉の可能性がないと心の中で自負し自分の判断が正しいと驕り高ぶっていた事に深く反省をしていた。

新人を依頼主のエゴにつれていかれるなんて今まで一度もなかったので想定もしていなかったことを悔やむ。


…これは俺、藤宮泉の判断ミスだ…


藤宮は再度璻に謝る。

 

「事前にすり合わせをし把握しとくべきでしたね。すみませんでした。症状が重い方や深いトラウマになってる方ほど依頼主のエゴは攻撃的になりますので取り込まれた時に注意が必要なんです。」

 


璻はそれを聞いて思わず前のめりになり藤宮に大声でツッコミを入れる


「事前に仰ってくださいよ!そ、れ、を!」



藤宮は申し訳なさそうにしながら答える



「そうですよね…でも大概は温厚ですよ。話を聞いて説得し狭山さんが望んでる水分子の形を教えて貰う所まで俺がやるもんだと思っていたので」


 

璻はその話を聞き、本当に予想外のことだったのかと理解する。

…まぁでもしょうがないか……藤宮さんも謝るくらいきっと珍しい事例だったってことなんだ……



璻は藤宮の顔を真剣に見つめながら意を決して疑問をぶつける


「あのっ…藤宮さんもう一つ質問してもいいですか?」


藤宮はキョトンとしながら璻の返答に答える。


「はい。なんでしょう?」


 

「水分子が竜胆のマークをつけて消し飛びましたけどあれは……」


施術の中で竜胆が揺れて上下に揺れて水分子が消し飛んだのを見た璻はずっと疑問に残っていた。


…あれは普通に考えてどういう原理だかわからない…


何か機械で熱を加えてるようには見えなかった。

何より璻は大学卒業以来あんな高度な技術は見たことはない。

藤宮は大して表情も変わらず、まるでそんなの普通ですよと言わんばかりに飄々と説明を始める。



「ああ。あれは水の持ってる記憶ごと蒸発させました。前に喜三郎さんが言ってた通り、俺は感情が読み取れるゲノムを持っているって言ってましたけど。正確には感情に当たるもの全てに俺は干渉できる能力ですね。それと水流士である水分子の技術を使っただけです。」


藤宮の説明だと璻にはまだ理解できず聞き返す。


「どういうことですか?」



璻にわかるように丁寧に藤宮は説明する。


「まず水分子は目に見えない微量の電気が走って回転する事で他の水分子と記憶や情報を共有させます。それを竜胆で回転を左回転に変え高速に水分子を回すと熱を帯びて水が状態を変えて水蒸気になります。ので消し飛ぶように見えるんです。ちなみに狭山さんの一部強く固執した記憶も薄れます」



藤宮の話はにわかに信じられないが璻は魔法でも使わないとああならないと信じていた。


…あんなの見せられたら誰だってワクワクする。お決まりの魔法陣か‼︎キターーーーとか思ったのに…


意外な返答に璻は藤宮の話を聞くと冷静になり少し凹んだ。

案外話を聞くと物理的なやり方なことなんだと思うとそれまでの期待はなんだったのか過去に戻って期待を返してほしいものである。


璻はふと藤宮の話で気になる言葉をボソッと呟く。


「うん??一部強く固執した記憶?」


…いや待って。一部強く固執した記憶って言ってたけど…


璻の中で疑問が生じ藤宮に質問をする。


「理屈はなんとなくわかりました。記憶が薄れるって狭山さん自身は大丈夫なんでしょうか?」


璻の不安が募るが藤宮は淡々と質問に答える。


「今回は幼少期が問題でしたので、染みついた強く固執した感情だけ感情の記憶を薄くしました。基本的に強い感情と歪んだ水分子は脳の記憶と紐づいています。幼少期の強い感情が変われば脳の記憶は変わり本人の未来は変わります。狭山さんの場合、他人に全て決めてもらいたい。自分に価値はない。という記憶を持った水分子と強い感情だけをピックアップして施術しました。厳密にいうとちゃんと記憶は残ってますよ。ただ本人がその時トラウマに感じていた感情だけ執着しないように変わっただけです。」


(あれっ?この人サラッと今とんでもないこと言ってない?私の聞き間違いか?)


藤宮の言葉を聞くと璻は一瞬顔が引き攣る。



「か…感情を変えるんですか???」



「なんというか、トラウマを思い出し重きを置くことなく普段の生活を生きることができるようになります。あーなんというかこの方法は特殊で俺らも施術者も負担がデカいですし、依頼者の本人も少なからず影響はあります。本当は依頼者が一般的なメンタルトレーニングし3ヶ月以上かけて癒すのが普通です。でも狭山さんの場合は早く治さないと命に関わってしまいます。だから今回この施術をしました。水分子扱える水流士がコントロールするとことでこれは成功します」


…ああーそうか…


璻は深く頷くと藤宮にさらに突っ込んで聞く


「根っこになってるトラウマの感情を剥がすのが水流士の最大の仕事、癒しなんですね?」



「そうですね。それが癒されると他のところも自然に過去を癒すようになっていきます。それまでのサポートは必ず俺らでやります。そういうアフターケアは必須で行います。」



「なるほど…」


璻はなぜか言葉に詰まる。

頭に思い浮かぶのは”あれと”同じことなんじゃないかと考えがよぎってしまう。自主的にやるか器具を使うかその2択で対人に自分のトラウマを一緒に癒してもらいたいと思った人が来る場所なんだろうなということを改めて感じた。


藤宮は璻に言い忘れていたことを話す。


「ああ。あとこの施術は業務以外で行ったら重罪に当たりますので覚えておくようにお願いしますよ。」


…重罪って懲戒解雇か何かになるのか?…


璻は頭の片隅に覚えておこうと決心し藤宮に返事をする。


「はい。とりあえず承知しました。」



とりあえず水流士がどういう仕事でどうトラウマを癒すのかはわかった。

しかし、水分子をどうやって蒸発することができるのか理論上不自然で説明がつかないことだらけだ。


今の段階璻は全く理解できない。


だが、実際魔法みたいなことが可能なんだと思うと璻は胸の中からドクドクと心臓が鳴り身体全体が震え始めたのが自分でもわかった。


それはまるで新しいおもちゃを見つけ、どうやって遊ぶか夢中で考えてる子供みたいにときめいた感覚になった。



そんな璻の様子を見ながら、藤宮は話を続ける


「まぁでも璻さんの水分子を移植したのでもう他人に全て決めてもらいたい。自分に価値はない。と思う事も今後段々と少なくなりますね。トラウマの感情が薄れる話は狭山さんには事前に説明してありますし、同意書も書いて頂いてますのでそこは安心ください」



璻は少しホッとする。



「じゃあ狭山さんはこれから平穏に過ごせるんですね。よかった…」



…あれ?待って…その話からすると私って大丈夫なんだろうか…



璻は途端に現実に引き戻された気分になると水分子を抜かれた手を触りなぜだか急に心配になった。



「聞き忘れましたけど、移植した私は大丈夫なんですか?」


不安そうな璻に藤宮はフォローをする。


「璻さんの水分子はまだ記憶をしてない水分だけお借りしました。体内や記憶には問題はありませんよ。なので後で水を飲んでいただけると良いと思います。」


璻は藤宮の言葉に安心する。


「はあ…とりあえずなんともないんですね。よかった」



何はともあれ、この会話での収穫は多かった。


左回転で高速に回すと分子が擦れて水は蒸発するのはわかるが記憶も薄れるなんて璻にとって聞く話だしそれに強い感情と歪んだ水分子は脳の記憶と紐ずいているなんてのも初めて知った。



藤宮泉は只者ではないと璻は深く感じる。

それと同時に尊敬する人物だと確信した。


藤宮はさらに話を続ける


「普通水は凍ると個体になり、より記憶ができますけど。液体でもある程度記憶を持っている状態です。狭山さんの場合は共通の感情認識がある人間の水分子を移植した方が早いと思ったんです。俺の疲労は増えましたけど大成功してよかったですよ。ほんっつと。だから璻さん俺を褒めてください」



璻は藤宮の言葉に一瞬戸惑う。


さっき尊敬する人物だと確信したところだが初日の新人に俺を褒めてくださいなんて上司は璻にとって初めてだ。

子供なのか大人なのかよくわからなくなってくる。藤宮の言葉で璻の尊敬が遠くに行ってしまった。



また藤宮を璻は白い目で見る。



 …いや、急に…なんだこいつ。理屈はわかる。すごいなとも思う。でもなんでわざわざ褒めてくださいって言うあたりが非常に気に食わない。とりあえず…

 


璻は思わず拍手をしながらカタコトで話し始める



「ワァーフジミヤサンスゴーイシゴトデキルカッコイイオトナデスネ」

 


藤宮はカタコトの璻の言葉にあまり嬉しさを感じなかった。



「それ褒めてます?感情が感じられないんですけど」



 ……藤宮さんだりぃよ。その返し。あぁもうめんどくさい!……



璻は全力で尊敬の眼差しを向けながら猫なで声話す。

 

「そぉんな。ことないですよぉ〜すごいです!尊敬してますよぉ!」



藤宮はなぜか気持ちよくなったのかニヤニヤしながら「ありがとうございます」と嬉しそうに笑った。



璻はフッと笑い心の中で嘲笑った。


 ……藤宮さんちょろいすぎ……

 

璻は急な疑問が脳裏をよぎる


…そういえば、私がくる前は業務どうしていたんだろうか?…

 

「まさかですけど、藤宮さん。毎回依頼主見る時に藤宮さん1人でこの作業してるんですか?」

 

藤宮はケロッとしながら璻の質問に答える



「はい。簡単な依頼だと俺1人ですけど、大概は喜三郎と一緒にやりますね」



璻はこの作業を1人でやる大変さを考えると無謀だと思った。


ケロッとしながら話す藤宮に璻は少し引きながら聞き返す。


「えええ……この業務結構疲弊しますしメンタルきますよね?」


 

藤宮はニコッと笑いながら璻に圧をかけて話す


「はい。そうですね。疲れ切ってしまいます。ですからこの後に俺が喜三郎さんに本日の報告書と水分子の記録書をまとめないといけないので璻さんには少し手伝っていただきたいですね」



藤宮の目は一ミリも笑ってなかった。


まだ仕事あるから帰れないぞ。ここはそんなに甘くないぞと伝わってくる



璻は肩を落とす



…まだ仕事あるのか…



璻は少し絶望するが腹を決めると袖をまくり藤宮に申し出る。



「わかりました。まとめてやり方教えてください。前回の記録書と毎回提出してる喜三郎さんの報告書。前回のでいいので一緒に見せてください。」



藤宮はソファから立ち上がる。



「承知しました。向こうの部屋にあるですぐ持ってきますね」

 


藤宮は今日は早く終わると確信したのだろうか足取りが非常に軽く見えた。

璻もソファから立ち上がると藤宮に聞こえるように呼びかける

 


「あ!藤宮さん一応聞きますけど今日はこれで依頼主の業務は終了ですよね?」



隣の部屋から藤宮の声が聞こえてくる

 


「はい。そうです。これで今日は終わりですね」



「わかりました。早く終わらせましょう」

 



璻はすぐにソファの周りを片付け、施術台に行き

狭山が使ったバスタオルをまとめておくとソファに戻る。



藤宮は隣の部屋から戻ってくると

書類を何枚も持ってテーブルの上に置いた

 

…普段はコンシェルジュで送るんだろうけどなぜ書類が出てくるんだろ?この時代に…


璻は不自然に思った


藤宮はソファに座り書類を開きながら璻に説明する



「データで軽く報告しますが、本当に大事な内容は書類でまとめておきます。コンシェルジュごとハッキングされたら厄介ですしね。」



「そうなんですね。わかりました。」


璻は書類の量の多さに何となく察した。


 

……藤宮さんこれ1人でやってたの?少し業務量が多くない?……



璻は一枚一枚書類を見ながらむむむと言う


藤宮はそんな璻を見ながらなにか怒ってるように感じた。不安になった藤宮は璻に問いかける

 


「璻さんなんか少し怒ってます?」

 

璻はむすっとしながら藤宮に文句を言う。


「いや、怒ってますよ!なんで早く私みたいな人間雇わないんですか!これじゃ毎回藤宮さんがパンクします」



藤宮が予期せない反応が返ってきて思わず吹き出してしまう。

 



「ふふふ。あははは〜こんなに笑ったの今年が初めてですよ!璻さんほんとウチ来てくれてありがとございます。あなたがいて俺は助かりますよ」

 



璻は複雑な気持ちで藤宮を見つめる。


「はぁ…よくわかりませんがありがとうございます?」


自分の中で嬉しい気持ちとなんだかちょっと複雑な気持ちが入り混じる。




テーブルにあった書類をペラペラみながら藤宮は璻に質問をする。

 


「璻さん黒い手で足掴んできたって言ったじゃないですか?」

 

藤宮の質問に首を傾げながら答える。


「はい。そうですけど…どうしたんですか」

 

「俺の個人的な意見ですけど狭山さん本当は誰かに手を引いて欲しかったんじゃないですかね?」



璻は藤宮の会話の内容にハッとする。



 …確かに。誰かに助けてもらいたくて、誰導いて欲しいそんな気持ちはなんとなくわかる……

 

 

「そう…ですね。精神的に自立するには本人の気持ちと気づかせてくれる他人が必要だからずっと探していた感じはします。」



…両親の依存が切られて社会のせいにするか、他人のせいにするか、それは人それぞれだけど。そこでおかしいなと自分自身に気づけるのは多分ごくわずかな人だと思う。それに狭山さんが気づいたことはこれから彼女の人生にとって大きな転換点にきっとなる…


 

藤宮は書類を見ながら璻に話す

 


「今の時代、感情抑制する脳内器具を移植できるのにそれでもウチに来てくれて体内の水と感情と目の前の自分にきちんと向き合おうとしてくれる。これって俺は大事なことだと思うんですよね。」



璻も頷くと書類を置き藤宮の顔をじっと見つめる。

 


「それは私も同感ですね。機械でネガティブな感情押さえても本人の根本的な解決にならないですよね」



今の時代、ネガティブな感情を長期間感じると脳のダメージが大きく健康に悪影響が出るため機械を入れて微量の電磁波で感情を抑圧する事が主流になっている。

それがいい悪いではないが人間としてどうなのかという議論は今の今まで続いている。

 



…いい悪いの問題ではないが機械を入れない人のケアは多分私たちの仕事に当たるんだろな……


 

璻は書類を確認しながら藤宮に書き方がわからない書類を見せると業務の質問をする

 

「やり方これですか?どこにあります?」


藤宮はテーブルに重ねてある書類を確認し探すと該当する書類を見つけ璻に渡す

 


「ああ〜璻さん。はい。それはこちらにありますよ。ここはこの形式でお願いします」



璻は書類を藤宮からもらうと「はい。わかりました」と言い書き始める。

  

 

今まで追い詰められて会社クビになったり、この人生早く終わらないかなって思ったり、転生したいなとか散々思ってたけど。


生きていて嫌な事や絶望する事もあるけどそれを経験する事で人の助けになる事がある。

生きてる事は無駄じゃないし、なんだかんだ人生で経験したことも無駄じゃないんだ。



生きる事って面白いと生まれて初めて璻は実感した。

今まで何にも代えがたい1番の経験をしたそんな業務初日であった。




。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


・感情抑制する脳内器具を移植


脳の中に灰白質と言われる海馬がある。

灰白質が増加することによってストレスや感情が安定するが長期間の深い悲しみ苦しみ痛み嫉み不安が増えると

灰白質が減り、眠りや食生活また感情コントロールができなくなり、ベーシックインカムの額が減らされる。

この世界では人間は手軽に感情をコントロールしたいがために脳内に『脳内器具』と言われる機械を入れる人が増えている。ちなみに隠者と言われる方々や璻、藤宮、喜三郎も脳内に機械は入れすに今まで生きています。


。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ