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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 新人研修編 -

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第76話:意識という視点



書き出しながら璻は話し合った内容を全員に共有していくことにした。



「とりあえず、内容をまとめますね。今回の与瀬村さんのカウンセリングは、改善ではなく本人に気づくきっかけを与える事が主軸になります。手順としては、まず幼少期を一緒に振り返る事、過去を振り返った時に本人の感情がどうだったか思い出してもらえるような話の展開にすること。その際に今問題になっている習慣と感情を照らし合わせること、同じ状況に陥った時のメリット、デメリットを一緒に考えること。傷ついた過去がどこにあるのか相手の話を注意深く聞きながらカウンセリングを行う。これらでどうでしょうか?」


穂積がおどおどしながら璻の質問に応えた


「あのっ…よよ与瀬村さんって蟹座だったので自分の親しい集団にフォーカスしてカウンセリングするといいいかもです」

 

璻はなぜその考えに至ったのか疑問に思い穂積に聞き返した。


「蟹座ってそういう特徴あるの?」


穂積はきょどりながら説明をした。


「かかか蟹座は親しい集団、家族、身内、仲間を守る考え方になりがちな人が多いです。なので身内のトラブルやトラウマ重視の質問が多いとひひヒントになるかもしれません」


 この視点は、獅子子で占星術を習っている穂積だから見える視点でもある。璻ではその考えすら浮かばなかった。璻は穂積に感心すると穂積の会話に応える。


「さすが、星ってそういうこともわかるんだ…」


 占星術を少しでも理解してくれた事が嬉しかったのか璻を見ると満面の笑みで応えた。

 

「ほんとっ…星によよっても個性も違う、価値観も違う占星術って面白いよね」


穂積なりにカウンセリングの事を深く考えているのかもしれないと思った璻は最初より自分の意見を言ってくれたのが嬉しく思えた。璻は穂積の提案を紙に書いた。


「特に身内関係は詳しく聞き出すっと・・・」



 璻は書き出す手を止めふと、藤宮と諏訪を見る。

 

……一様、目上の意見も聞いてみようか……


 そう思った璻は諏訪と藤宮に話しかけた。


「お二人は何かアドバイスありますか?」


 最初に諏訪がめんどくさそうな顔をしながら璻の質問に応える。


「えぇそうだな。まぁ……何度も言ってっけど依存ってようは執着なわけよ。何に与瀬村あいなが執着しているのかの視点で考えることだな。例えば、父親がいない家庭で育った幼少期があるなら理想の父親に似た大人に惹かれ、母親がいない家庭で育つと自分の理想である母性的な大人に惹かれる。その現実を望んで自分が作っているんだという視点に立って物事を見れば依存なんてしねぇんだよ。演劇やってんだよ。みんな」


 藤宮は諏訪の話に何かを思い出したのか頷きながら応えた。

 

「それで、思い出したんですが昔、諏訪さんと俺の何人かでなぜか演劇研修受けた事ありましたよね……」


 諏訪はため息を吐きながら藤宮の話に応えた。


「確かに、そんな地獄みてぇな事あったな…」


 その話を始めた途端に諏訪と藤宮の顔が青ざめていく。そんな2人を見た璻は興味本位で研修の内容を聞いてみる事にした。

 

「演劇研修?ってなんです?」


 諏訪は璻の問いかけにため息を出しながらだるそうに応えた。

 

「はぁっ……お前らはしらねぇか?昔な、自分の過去振り返って1番嫌な思い出を他人に演じてもらうっていう研修つうか、トレーニング?があってだな」


その話を聞いていた途端に璻、九鬼、穂積は顔を引き攣り3人ともやりたくなさそうな表情を浮かべていた。

そんな3人の表情を見ながら諏訪は淡々と続きの話を始めた。

 

「あの演劇研修、脚本も自分で書かなきゃいけなかったから、なんつうか……書いてる時も地獄でな。全員にお披露目する際にいざ自分の体験した事を他人が演じるだろ?あら、びっくり……あの時のあの俺って随分感情的だったんだなってなったわけよ。ちなみに藤宮も別の奴が演じてたの見たけど、まぁ〜あん時は視野が狭い事に気づかなかったんだよな……俺ら」

 

藤宮は何かを思い出したのかさらにゾッと顔が青ざめていた。諏訪の話から璻はなんとなく昔の演劇研修の話が面白そうと感じてしまった。しかし、自分も演劇研修をいざやってみる立場になった時、地獄の光景になるんだろうなと容易に想像できてしまった。


……というか、それ実際にやる可能性があるのか聞く必要があるんじゃないか?……


そう思った璻は思い切って質問をした。


「あのそれ、私たちやるんでしょうか?話聞いてて目立つ事が嫌な人は地獄のような時間に感じるんですが」


 諏訪はそれに対し、手を左右に振りながら璻の質問に応えた。


「そういう考え方があったからな。"今はなんでか中止"になっている」


 ……なんだそれ"今は中止"になっているって事はこれから再開する予定なんだろうか?……


 璻はため息混じりに諏訪の問いかけに落ち込みながら応えた。

 

「そうなんですか……」

 

 落ち込む璻を見た藤宮は励ますように声をかけた。


「璻さん、そんな落ち込まないでください。その研修では色々な視点があるなと初めて気づいた事も多かったですよ!人間って面白い生き物で一つの感情に執着するとその事しか見えなくなります。例えば、"嫌いだ"と思う人がいたとします。その"嫌いだ"という感情に対して自分の過去や感情を掘り下げていくと、実は自分がやりたかった事を相手がやっていたり、嫉ましい感情が出てきたり、実は自分の感情を相手が表現しているんだという視点に気づく事が出来ます。その発見から自分の中で新しい視点が出てくるんです。その視点が水流士には必須になるので。そのための他者視点?みたいなものを演劇で養っていくんですが、いかんせん……」


 そう言った藤宮は少し嫌そうな顔をした。諏訪はテーブルに肘をつき、顔を乗せると藤宮を見ながらだるそうに話を返した。


「ようは"自分"と認識している記憶、感情、人物、持ち物、そういったシチュエーションが揃って初めて"自分"という意識になる。そうじゃない真逆の視点に立った時に自分という意識から解けて全体を見える意識になる。それが演劇研修をやる本来の目的なんだ」


その話を聞いて九鬼は頭の上に???をつけると混乱しつつ諏訪を見ながら助けを求めた。


「全体意識?つか、俺があるのは俺って認識して……ダメだっ……今の俺じゃむずすぎて理解できねぇ〜簡単に解説してくれ……」


 九鬼は頭を抱えながら顔を下に向けていた。九鬼の様子を見た諏訪は諦めたように言葉をかける。


「無理して理解しなくていいぞぉ。今の朔のパーソナルエネルギーじゃあ、この話を聞いて理解できるキャパじゃねーからな」


諏訪は唐突に璻を見るとぼそっと声をかけた。

 

「まぁ、この中で少しでも理解できるのはパーソナルエネルギーレベルが高い、龍後くらいか……」


その言葉を聞いていた九鬼はイラッとすると睨みつけながら璻に話しかけた。


「お前、今の話理解出来たのかよ?」

 

九鬼の妬みを感じた璻はため息を出しながら九鬼の質問に応えた。

 

「はぁっ〜ようは……自分の視点をいかに広げて考えられるかって話ですよ。1番目は自分、2番目は家族、3番目は友達や会社、4番目は地域の活性や自然、5番目は国の利益や自然環境、6番目は地球の自然環境や人類の発展向上、その視点が全て揃って自分が成り立っている。その各視点で意図や意識を持って判断し、行動出来てますか?って話ですよね?」


 諏訪は「おぉ」と声が漏れると話を続けた。


「8割当たりだが2割ハズレだ、龍後の場合、他者視点すぎて自分の視点が欠けている。だぁぁっ!!この感覚って言葉にするとむじぃんだよ。解釈って人によっても違うからな。こればっかりは自分自身が体験しないとわからん」


諏訪の答えにホッとしたのか九鬼がニヤッと笑い、バカにしたように璻に話しかけた。


「ふっ……お前、不正解だとよ。よかったな」


 璻は九鬼を蔑むように見ては睨みつけていた。

 

……ほんっとコイツ……


「一ミリも理解出来なかった九鬼さんよりマシだと思います。人のマウント取るよりなんでマウント取っている自分がいるのか?もっと自分の内面みた方がいいですよ。ほんっと」


 雰囲気が悪いと感じ取った諏訪は2人の仲裁に入った。


「おーそこ、今にも殴り合いそうな雰囲気やめろ。それと朔、煽るなよ。お前らより見てみろ穂積が慌てているから」

 

璻は穂積を見るとなぜか酷く慌てていた。

 

「あわあわわわわわわ、おちおちあち落ち着いて。」


 穂積の態度に思わず九鬼はツッコミを入れた。


「いやまず、お前が落ち着けよっ!!」


 璻は穂積の肩に手を置いて話しかける

 

「ごめんって、喧嘩しないからっ!」

 

諏訪は時計を見ると慌てて璻と九鬼と穂積に話しかける。


「おい、そこの成人ガキンチョ3人組。もういいか?お前らの仕事は新しい視点を相手に気付かせる事だ。さっき言った全体意識の視点考えると答えが出るからな。ほれ。時計見ろ?もうあと15分で与瀬村来るぞ。あとは藤宮と穂積と龍後の3人で打ち合わせだな。朔は俺と宿舎に戻る。解散だ!解散!」


諏訪の呼びかけに璻も置き時計を目を向けた。

確かに与瀬村がカウンセリングを指定した時刻の15分前になっていた。諏訪の声をかけに全員立ち上がり各々準備を始めた。諏訪も席から立ち上がり玄関まで歩く、藤宮とすれ違った瞬間何かを思い出したのか少し立ち止まり藤宮を見ては嬉しそうに話しかけた。

 

「あっ…そういやさ。思い出したんだけど藤宮お前、演劇研修の時なんでか知んねーけど皇もいたよな?」


 藤宮はドキッとしゆっくりと諏訪を見ていた。諏訪はそんな藤宮を全く気にせず話を続ける。


「俺の時はつまんなそーに見てたのになぜか、お前の番になった時、最初から最後までずっと爆笑してたよな。俺が見た限りじゃあ、お前の脚本で笑う要素一ミリもなかったのになぜか笑ってたからな。意味わかんねーよな」


それを言われた藤宮は顔を真っ赤にしながら諏訪に言葉を返した。

 

「思い出さないようにしてたのになんでいうんですか!マジ、アイツのああいう所ほんっとムカつくんすよ。」


璻は2人が話している後ろで黙って話を聞いていた。藤宮の言葉からなんとなく想像がつく。神出鬼没な上に藤宮を揶揄う。それが生き甲斐の皇は今も昔もやっていることは対して変わらないんだということがよくわかった。


 ……あの皇さんなら藤宮さんを小馬鹿にしてちょっかいかけるのはやりかねない……


 諏訪は続けて藤宮を見ながら話をする。

 

「そんなことあったな。藤宮、昔は楽しかった。俺もお前ももう人を教える立場になっちまったけどよ。今回は吟さんの頼みだから"最後の最後まで"面倒押し付け悪りぃけど見てやってくれ。そんじゃ行くぞ。朔」


諏訪の声がけに九鬼も席から離れると諏訪の後を追いかけていた。玄関に向かう諏訪の足取りは重く見える。諏訪の言葉からなぜか諦めているような感覚がした藤宮は残念そうな顔をすると諏訪を呼び止めていた。


「あのっ!諏訪さん」


 咄嗟に諏訪は振り返り「あ”っ?」と言葉をかけると藤宮を見ていた。まるで情けをかけるつもりがない、人を見捨てるような冷たい目をしている。


「俺は最後だとも思っていませんし、諦めていませんよ。その人のベストな人生が出来るように視点を変えるだけです」

 

 諏訪は「はぁっ……」とため息を吐いた。九鬼はやっと諏訪に追いついたのか諏訪をじっと見上げていた。


「藤宮、お前のそういう線引きが甘い所、心底気にくわねぇな。男に二言はねぇよな?お前が”大人なら”自分の行動言動、全てに責任持つんだな?今回の報告書は期待してっから」

 

 諏訪はそういうと手を振り、ドアノブに手をかけ九鬼とともにログハウスから退出した。


。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


「"自分"と認識している記憶、感情、人物、持ち物、そういったシチュエーションが揃って初めて"自分"という意識になる。」


自分という意識は過去の記憶、感情、自分を取り巻く人物、自分の持ち物、その場所のシチュエーションによって初めて自分という意識になります。そこに自分という意識がなければ自分は無いのと同じになります。これは量子力学の『二重スリット実験』という実験に基づいています。意識を向けた物を拡大させる。この構造は宇宙における原理原則かもしれません。


 

 ・演劇研修

 水流士は年に何回か研修があるが基本的には自分の内面を見直す研修が大半あります。水流士のパーソナルエネルギーごとにレベルは分けられその人ごとに研修内容も変わります。演劇研修は基本的に自分の感情を客観的に見るトレーニングなため、あまり人気がありません。ちなみに講師は毎回変わります。役者や声優、舞台俳優を経験した水流士が担当することになっている。


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