第67話:お節介
獅子子が階段を降りていくとすぐさま穂積と璻も獅子子の後を追った。
1階に到着するとそこには藤宮と喜三郎、それと面識がない男性が立っていた。パーマをかけており茶髪の男性で柔らかい表情でこちらを見ていた。トイプードルのような印象に似ている。藤宮は璻の姿を発見すると意気揚々と嬉しそうに璻に話しかけた。
「璻さんお疲れ様です」
見た事がない人が目の前に立っている璻は戸惑いながら藤宮に問いかけた。
「お疲れ様です。藤宮さん。あの〜喜三郎さんの右隣にいるそちらの方は」
藤宮はああと呟くと淡々と紹介を始める。
「璻さんは初めましてでしたね。こちらは新埜さん、環境業務の補佐と依頼主の情報収集、たまにカウンセリング業務なんかもしています。」
新埜は頭を下げて璻に挨拶をした。
「自分は新埜吟と申します。自分は体内の水を変化させる事はできないですので補佐や情報収集が基本業務です。どうぞお見知りおき下さい。」
璻も慌てて新埜に挨拶をした。
「龍後璻です。よろしくお願いします。」
藤宮は璻と新埜の会話に割って入る。
「新埜さんはいつも個人プロフィールの作成や依頼主の情報をまとめて渡してくれる役割もあるんですよ」
藤宮の話を驚きながら新埜を見て言葉をかけた。
「あの個人プロフィールは新埜さんがやってくれていたのですか!ありがとうございます」
新埜は璻に笑顔で話しかける。
「いえ、自分はコンシェルジュを使ってまとめただけですよ。お役に立てたなら何よりです」
話が終わったのを確認したのか喜三郎は新埜に向かって問いかけた。
「んで……新埜なんの話だったっけ?」
急な喜三郎の問いかけに藤宮が慌ててみんなにわかるように補足をする
「喜三郎さん、急に話したら獅子子さん達が困惑します」
喜三郎はダルそうに藤宮に応えた。
「ああーそれもそうだな。泉、補足よろしく」
喜三郎に押し付けられた藤宮はため息を出しながら説明を始めた。
「はぁっ……実は獅子子さん達が来る前に新埜さんとお会いして与瀬村さんの話を仰っていたので話を聞こうとしてたんですよ。そしたら、新埜さんは獅子子さんに用事があるからって急に獅子子さん達を呼んだんで……」
獅子子は少し考えながら新埜を見ると問いかけた。
「で私が現れたと……吟、私の用事はあとだ。とりあえず依頼主の与瀬村がなんだって?」
獅子子はタイミングよくその話が来たのか少し嬉しそうに話をしていた。新埜は獅子子の問いかけに応える。
「はい。与瀬村あいなの亡くなった父親ですが、自分はその父親の友人でした。父親は凌という人物なのですが。凌は優しくいい父親でしたけど……再婚した相手がろくでなしでして」
獅子子は頷きながら言葉をつぶやいた。
「ろくでなし?」
新埜は頷きながら獅子子の問いに応える。
「はい、その人お金に目がないんですよ。娘のあいなのために貯めていたお金を使ってゼロにしたり、凌が亡くなった時も死亡保険をガッツリ持って行きまして。娘のあいなには1円もあげなかったんです。最悪なのが中学生になった娘のあいなを家から締め出したのです。その頃からあいなは夜の街を歩くようになりパパ活をするようになりました。それからというもの……あいなは徘徊を繰り返しています」
喜三郎はその会話を聞き深くため息を出した。
「はぁっ……クソみたいな母親だな」
新埜は続けて話をする
「自分のやっている事はお節介かもしれません。今回、依頼が成功しなければ……自分はもう何もできませんね」
璻は新埜の言葉に疑問を持った。
……この人はどうしてこんなに依頼主の事を知っているんだろうか?自分はもう何もできませんってまるで依頼をしている人のように聞こえる……
疑問に思った璻は新埜に質問をする
「あの……もしかして今回、依頼したのは新埜さんでしょうか?」
新埜は驚いた表情を見せると静かに頷き璻の質問に応えた。
「はい。凌の生前の遺言だったので。娘のあいなが脳内器具を入れる時にカウンセリングをしてくれと……ですが自分は水流士でありながら”その時はすでに”水分子が見えなかった。なので他の方にお願いをしたのですが……」
喜三郎が新埜の会話に割って入ると補足を入れた。
「んで、その頼んだ水流士が依頼主に骨抜きにされ挙げ句の果てに飛んだと……」
新埜は喜三郎の言葉を聞き申し訳ない気持ちになりながら喜三郎の質問を返した。
「そそそ、そうなりますね。その節は大変申し訳ございませんでした。なので、これから担当する藤宮くんと璻さんと穂積さんに補足とアドバイスをさせて頂きました。あいなは人たらしで懐に入るのが得意です……自分に不利な事があると脅して自分のいう事を聞かせようとする。支配的な所がありますので気をつけて欲しいのです」
藤宮ははぁっとため息をつくと新埜に言葉を返した。
「状況はよくわかりました。新埜さんは環境業務専門なのでこれに関してはしょうがないかなとも思います。来て早々気が重いですが……すり合わせの参考にします」
話を聞いていた獅子子が新埜に質問をする
「ちなみにその依頼主の誕生日わかる?」
新埜は獅子子の質問に答える。
「はい。今獅子子さんの右手にある個人プロフィールに書いてありますよ。こちらの欄です」
獅子子は新埜に言われた通りに個人プロフィールを見ると誕生日の欄を見る。獅子子は何か思いついたのか穂積を見ながら言葉をかけた。
「穂積よく聞いて。この子、太陽と海王星、太陽と金星のアスペクト、月と海王星のアスペクト持ってる。ホロスコープ出してないからざっくりの配置だけど。今の聞いてたわね?」
獅子子に急に言われた穂積は頷きつつ返事をした。
「ははははいっ……!」
獅子子は穂積に言葉をかけた。
「ちょうど勉強した所よ、アドバイス出したからあとはやれるわね。」
穂積はきょどりながら獅子子に対して応えた。
「やややややれるかどうかはわかりませんっ!」
相変わらずの穂積の態度に獅子子は呆れながら穂積に言葉をかけた。
「もうっ!いや、そこはむしろやりますって言うところよ?はい。個人プロフィール返すから」
獅子子は穂積に個人プロフィールを受け取らせると穂積は黙って紙を見つめていた。
新埜は腕時計を見ると慌てた表情で声をかける。
「時間がないのでこれからの予定を口頭でお伝えします。獅子子さん、喜三郎さんはこれから環境業務の対応がありますので会議室へ。藤宮くん、諏訪くんは業務が終わり次第自分に声をかけて下さい。今回の業務内容をお伝えします」
藤宮は新埜に言葉をかけた
「わかりました。諏訪さんにはこれから会うのでお伝えします」
新埜は笑顔で藤宮にお礼を言った
「ありがとうございます。ではよろしくお願いします」
喜三郎は藤宮と穂積と璻の3人に声をかけた
「俺ら別の業務あるからここで解散な。3人とも頑張れよ」
獅子子は手を振って喜三郎と新埜について行った。
藤宮は穂積と璻を見ると話しかけた。
「では、ログハウスに行きますか。とりあえず靴は着替えますか…」
璻は藤宮に聞きたかった質問を話し始めた。
「藤宮さん聞きそびれましたけど、昨日の午後来るとかなんとか言ってましたよね。いつ到着されたんですか?」
璻はなぜ藤宮の到着が遅かったのか気になっていた。
……藤宮さんって昨日の午後に来るって言ってなかったけ……
藤宮は璻の質問に応える
「渦見さんが急にウチに来て……対応していたら中々帰ってもらえず気がついたら夜になったので片付けをして今日の午後に量子ゲートを通って移動したんです」
璻は渦見と言う言葉を聞いて納得をした。
「渦見さんですか……来るスパンが早くないですか…」
藤宮はニヤッとすると璻の質問に応える。
「璻さんの事を叫んでましたよ」
璻は渦見が叫んでいるところを想像した瞬間に背中のあたりがゾワゾワとした感覚が走った。気落ちしながら藤宮に言葉を返した。
「なんだろう、一気に気が重たくなりました。というか、さっき藤宮さん量子ゲートって言ってましたよね」
2050年は量子ゲートという物が存在する。要は瞬間テレポートという機械だ。各場所に設置されている。
……あれっ……量子ゲートってここら辺にあったっけ?大体駅の近くの地下にあるはずだけど……
璻は疑問に思ったのか藤宮に質問をした。
「量子ゲートってこの辺ありましたっけ?」
穂積は土間で靴を履き替えながら2人の会話に割って入る
「この地下に量子ゲートあるよ」
璻は驚きながら答えた。
「ここの地下にあるのっ??なんで駅とかにしかないんじゃ……」
藤宮は土間で靴を履き替えながら穂積の説明に補足を入れる
「いや、地下にありますよ。そしじぃの友人につけてもらったとかで」
璻はその話を聞き、益々そしじぃという人物が何者なのかわからなくなっていった。
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・新埜吟
蠍座:39歳の独身男性。
水流士歴は諏訪より先輩、理由により水分子を変えることが出来なくなってしまった。今は環境業務の補佐と情報取集がメイン。頭の回転が早く仕事には無駄がない男性です。基本は皇の依頼以外、新埜が個人プロフィールを作成し水流士に届けています。いわゆる補佐役に当たります。茶色の髪でゆるいパーマーをかけている。仕事中は基本丸眼鏡をかけています。ちなみに前職はエンジニアをしていました。
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