第61話:考え方と価値観
九鬼は山田に質問をする。
「もう一つ聞いてもいいですか?」
山田は軽く頷いて返事をする
「はい」
九鬼は書類を見ながらある質問をする
「いつも女性と接する時に辛く当たりそうになった時やイラッとする場面ってどんな時ですか?」
山田は少し考えると冷静に話し出す。
「どんな時と言われるとそうですね。言ってることとやってる事が違う女性とかですかね…あとはすぐ飽きっぽい所とかあとは気がつくと全然違う事をやってたり、そんな姿を見ると極端にイライラしますね」
九鬼は話を聞いていてある事に気がつき質問をする。
「それってお母様そうじゃありませんでした?もしくは…小学校の女性の先生とか」
山田は声をあげて驚いた表情をし応える。
「あっ!いました。母親もそうでしたけど学校の先生もクセ強で言っている事とやっている事が真逆の担任がいました。何度も俺を呼び出して説教された記憶があります嫌だったな」
九鬼は頷き納得した表情で応えた。
「俺もそうだった事があってもしかしてと思ったんです」
山田は初めて感情を共有出来る相手を見つけたのか嬉しそうに語り始める。
「九鬼さんもですか?」
九鬼は深く頷くと自分の幼い頃の話を始めた。
「はい。俺小さい頃母親に触ると母親は嫌がっていた時期がありましたね。妹が生まれてからは妹ばかり可愛がってて……小学生の担任も女子ばかり可愛がって男子には厳しいタイプばかりでしたね。俺の場合は担任が男性だったので山田さんとは真逆ですね」
山田は九鬼の話しに驚いた表情を見せた。山田は女性に対してトラウマが深く全て女性が悪いと思っていた。だが九鬼の話を聞きそんな男性もいる事に深く驚いている様子だった。山田は九鬼に問いかける。
「女性だけじゃないんですね?会った事ないですが……そういうひいきばかりするタイプは俺は女性が多かったです。井戸端会議するばかりの連中で、愚痴と文句しか言わない。お前ら文句言うくらいなら早く行動しろよって思いますね」
九鬼は山田の話を聞きながら思うところがあった。
……やはり山田さんは女性が悪いと思っている部分が多いな。言動からもその感じが垣間見える。問題の本質は外側にいる女性ではなく本当は女性に認めて褒めてほしかったのかもしれない。ますます俺とトラウマが似ている……
九鬼は山田の話を頷きながら応える。
「俺も仕事ならそうなりますね。学校の先生視点と生徒の視点がまず違う気がします。例えば……学校の先生は仕事しているのに生徒は学びに来ている。学校の先生は特に効率よく学ぶ事を仕事にしているから個々のペースや感情なんてあんまり考えてない事が多い。今はそういう学校は減りましたが、俺らの時は多かった気がします。まず生徒自体、先生がお金や生活のために学校に来て、周りの先生方や校長や教頭の評価で生きているなんて考える生徒はあまりいませんから。男性女性関係なく教育の仕組みが悪かった感じですね。ウチの先輩も同じ事言ってたんで」
山田は九鬼の話を聞いてなぜかガッカリする
「九鬼さんの話聞いて…女性のせいにすればいいと俺思っていましたね」
その言葉を聞いた九鬼は山田に反論する
「女性だけじゃないです。そんな俺の担任だった男性も平気でいます。山田さん自身で女性は変わった生き物だって自分の中の常識を見つけたなら今日は合格じゃないですかね?」
そう話す九鬼は嬉しそうだった。九鬼が山田を誉めているようにも感じ山田も嬉しそうにする。九鬼は何か忘れていたのか言葉を呟いた。
「あっ……そういや時間」
そういうと九鬼は壁にかかってある掛け時計を見た。開始から14分ほど経っていた。九鬼は慌てながら山田に言葉をかける。
「あっ、山田さんこれからの15分は助手の女性を加えてお話させて頂いてもよろしいでしょうか?山田さんが嫌ならこのまま俺と話しますが。いかがしましょうか?」
山田は頭の中で色々考えていた。
……俺が辛く当たっていたのは女性のせいではないなら俺にとって女性はなんなんだろうか?女性の意見を聞いて判断する必要があるんじゃないか。でも必要以上につらく当たってしまったらどうしようか……
山田はなぜか落ち込みつつも九鬼に心配する様子で話しかける。
「つっ……辛く当たってしまいそうで…怖いですが女性の意見も聞いてみたいです」
山田は怖がっていたのか膝に置いた手が小刻みに震えていた。九鬼はそれを見て山田にある提案をする
「山田さん辛く当たってしまう前に俺がフォローを入れますよ。ウチの助手はそんなにやわじゃないですし、半端な答えを絶対に言わないです。なんなら新しい学びがあるかもしれないです。俺らの考え方に新しい答えをくれる!これってちょー面白そうじゃないですか!」
九鬼は嬉しそうに山田に語ると山田は気が乗らなさそうに返事をする
「わかりました。よろしくお願いします」
九鬼はソファからゆっくり立つと山田に声をかける
「では、助手を呼んで来るので少しお待ちください」
山田は「はい」と返事をし頷き九鬼は席を立ち、玄関まで早足で歩いて言った。九鬼が助手を呼びに行っている少しのあいだ山田はソファに深く座り天井を見上げていた。ログハウスの木の香が全身に広がる。数回深呼吸をすると玄関から2人の足跡が近づいてくる。ソファに軽く座り直すと九鬼が山田に話しかける。
「山田さんでは今から助手の龍後に入ってもらい話を続けますね!」
璻は山田に頭を下げる
「よろしくお願いします」
山田は軽く頭を下げて挨拶をする。
「よろしくお願いします。龍後さん」
山田は璻が出てきてから緊張しているように見えた。
璻と九鬼はソファに座ると話を始める。九鬼がまず璻と山田のやりとりについて状況を説明した。
「さっきほど山田さんと話していてわからない事があったから龍後さんに聞いてもいいかって話をしてたんだ」
璻は頷きながら九鬼と山田を見ながら応える
「はい。何を話していたんですか?」
九鬼は山田を見ると問いかけた
「山田さんさっきの事、自分で話してもらってもいいでしょうか?」
山田は九鬼が説明してくれると期待していたが話を丸投げされ困惑しつつ九鬼に反論する
「俺ですか?」
九鬼は頷きながら応える。
「はい。自分で話した方がわかりやすいですしね」
山田は表情が暗くなり九鬼に返事をした。
「えっ……あっはい。」
そういうと山田は緊張しながら璻に向かって話しかけた。
「じっ、実は俺女性が苦手でして……話すと言い方キツくなりやすく困っていました。なので九鬼さんと先程まで話していて言っている事とやっている事が違っていた母親と学校の先生が原因かもしれないと…」
璻はそれだけを聞いてなんとなく理解した。
「山田さんは行動と言動が一致している女の人が周りにあまりいなかったんですね」
少ししか説明していないのになぜか内容が伝わっている事に山田は驚いた。頷きつつ璻に話の続きをする。
「はい。だから許せない感情が出て来て女性にキツイ言い方をしてしまったのかもしれません…」
璻には山田が誤っているように見えた。まるで今まで全ての女性が行動と言動があっておらず、さも全て悪いような言い方をして申し訳なかったと言っているようにも見える。
璻は手を左、右に振りながら山田に応える。
「山田さん、落ち込まないでください。山田さんを攻めてませんよ!」
山田は困惑しながら言葉を詰まらせる。
「えっ……」
璻は山田に優しく諭すように話し始める
「山田さん自分で認めたじゃないですか。自分で作った常識を自分で認めた。じゃあまた常識を作り直せばいいじゃないですかね?女性には色々な人がいるって認識を持つと女性に対して差別的にならなくなります。」
山田は必死に璻に対して懇願する。
「どうやって……どうやって変えればいいんですか!」
璻は落ち着きつつ解決策を伝える。
「簡単に説明しますね。まず自分が嫌だった過去の出来事を書き自分で認識します。ええーっと紙、紙〜九鬼さん紙あります?あとペンも」
九鬼は立ち上がるとソファの目の前にあるローテーブルの下を探した。すると白紙が何枚もあるのが見えた。九鬼は8枚ほど紙を出し璻に紙を渡した。
「はい。ありがとうございます。では始めましょうか。これ山田さんにこれは九鬼さんにはい。これ」
璻は山田と九鬼に紙を配る。渡された九鬼は文句を璻に言い放った。
「はぁ?俺もやんのか?」
璻は淡々と応える。
「はい。諏訪さんが九鬼もそれ一緒にやってくれって言ってましたし、それに山田さんと一緒にやるとなんとなくわかるので」
九鬼は嫌そうな顔をしながら璻を見た。
「わぁーわかったよ。わかった。ったく…………」
嫌々そうにしながらでも付き合ってくれる九鬼に璻は最初出会った時よりも精神的に大人になっているようにも見えた。璻は2人を見ると説明を始めた。
「では、今から説明しますね。」
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・幼少期の思い込みが激しい山田の価値観と九鬼の価値観
九鬼:女性は贔屓する
山田:女性は行動と言動があっていない
九鬼の価値観では女性は贔屓するものという価値観が幼少期の考え方に残っています。この考え方が基本にあると女はすぐ贔屓すると考えて行動しがちになりますなので女性に対しても信用がなくなります。逆に山田は女性は行動と言動があっていないものだと思い込んでいます。二人とも幼少期にトラウマがあったのがきっかけですがこの考え方がベースにあると行動できなかったり、必要以上に無意識に女性を攻撃しやすくなります。
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