第54話:ローズマリーのハーブティー
ログハウスのドアを開けた喜三郎は全員に呼びかけた。
「全員部屋の中に入ってそれから今後の流れを説明する。」
九鬼、穂積、部屋の中に入ると璻は喜三郎の声に気づき璻は自分だけ話を聞いていなかったということだけは避けたいと思ったのかログハウスの前まで全力で走った。
「はぁはぁ……」
ようやくログハウスの中に入ると璻は部屋の中をキョロキョロと見渡す。部屋の中までも見慣れた光景に璻は驚く。やはり、藤宮といたオフィスにそっくり。違いはいうと…ドアの位置と入り口の階段ぐらいだろうか?似たようなところにキッチンもある、部屋も何部屋かあるようだった。ドアの入り口で璻を待っていた喜三郎は急に話しかけてきた。
「遅いよ璻さん。それよりこれオフィスにそっくりでしょ。」
璻は喜三郎の方向に振り向くと何度も頷く。
「はい。びっくりです。」
なぜか嬉しそうにする喜三郎はまた璻に話しかける。
「このログハウスは藤宮くんと諏訪に馴染みがある家なんだよ。オフィスも設計したのは俺だから似てるのは当然」
璻は思わず驚く喜三郎が水以外の分野でも多才な人物だとは思わなかった。
「喜三郎さん内装のデザインもできるんですね…多才でびっくりしました。」
褒められた喜三郎はさらに嬉しそうにお礼を言った。
「嬉しいね。この歳になって褒められることなんてあまりないからさ。ありがとう。璻さん。ちなみになんだけど、俺のお願い聞いてくれる?」
喜三郎がお願いというのはなかなか新鮮に璻は感じる。
恐る恐る返事をする。
「いいですけど、お願いってなんですか?」
喜三郎は璻の質問に対して応える。
「ハーブティーを人数分淹れてくれる?棚にティーポットがあるのでそれで淹れて欲しいんだ。カップは棚の置くに5つほどあった気がする。もちろん他の連中は掃除をするからその間に淹れて欲しいんだよ」
「いいですけど、他の人じゃダメなんですか?」
喜三郎は渋りながら璻の回答に応える。
「あぁ…そりゃ、あれだな。3人とも依頼主にハーブティー出さないんだよ。水か白湯しか出さないから、この際ハーブティーの良さを知って欲しいのもあってお願いしてる」
確かに藤宮の元でハーブティーを入れているのを見てきたので出来るといえば出来る。ただ藤宮ほど上手ではないのは璻自身もわかっていた。そして正直言うとあの3人がハーブティー淹れている想像がつかない。淹れ方がわからない3人からしたら非常に無茶な話だろう。
……こうなると適任者は私しかいない。掃除よりハーブティー淹れてた方が楽しいわ……
色々、考え納得したのか璻は頷きながら喜三郎の指示に応える。
「そういう事ですね。わかりました。ハーブティーはなんでもいいんですか?」
喜三郎は少し悩むと璻に具体的に指示を出す。
「畑で確かローズマリーをこないだ取れたってそしじぃが言ってたな。ローズマリーのハーブティーがいいな。下の棚にローズマリーを入れてある瓶があったっけ?そこから1束取って沸騰した鍋にローズマリーを入れ5分ほど煮出すとハーブティーができる」
璻は頷き喜三郎に対して返事を返す。
「わかりました」
喜三郎は璻を気遣いながらアドバイスをする
「5人分運ぶ時はゆっくりでね。落としたら怪我しちゃうし、呼んでくれたら手伝うから」
璻は「はい」と返事すると早速キッチンへ向かいハーブティーを淹れる作業をする。喜三郎は九鬼、穂積、諏訪に向かってパンっと手を叩き指示を出す。
「3人はテーブルの上を拭いて掃除だ。このログハウス自体、あんまり使われてないからな。サクサクやるぞ。依頼主は2時間後に来るからな」
九鬼と諏訪はダルそうに「へーい」と喜三郎に返事をする。その後で穂積は小声で「はっ……はい」と返事をしそれぞれの仕事に取り掛かった。
━━その頃の璻はというと━━
棚の中を開け瓶を探していた。5個のカップや大きいポットは見つかったが、ローズマリーが入った瓶が見つからずにいた。璻は下から2番目の棚を開けゴソゴソ探していた。ローズマリーが入っていると思わしき瓶を見つけると瓶を手に取りキッチンに置く、何やら棚から一枚の写真が一緒に落ちてきた。璻は写真を手に取りマジマジと映っている人物を見る。写真には小さな男の子が母にしがみついて映っていた。
……誰だろう?これ………
璻はとりあえず、写真を黒い白衣のポケットに突っ込むとカップとポットを洗い場に置き食器を洗ってから水分を拭いていた。鍋を洗い水を入れ沸騰させる。ローズマリーの瓶を開けローズマリーの葉をちぎると鍋の中に入れ5分ほど煮立たせる。ローズマリーのフレッシュでシャープな匂いが部屋いっぱいに広がる。ハーブティーをポットに移し、トレーに5個のカップとポットを乗せた。璻はそれを持ち上げようとする。
…ちょっと重い…
流石に1人で5人分を運ぶのは無理があったのか璻はポットだけ先に運ぶ事にした。リビングらしき所に歩いて向かう。テーブルはだいぶ大きい木のテーブル。正規で売られているような感じではなく、太い木を切り倒して出来た個性溢れるテーブルに見えた。ポットだけ、運んだ璻はテーブルに座っていた穂積に話しかける。
「あれっ?みんなは?」
穂積は璻の質問に答える。
「まっ、まだ掃除しているみたいです。ここ2階もあって、掃除しがいがあるとか…」
璻はそれを聞いた瞬間なんとなく想像がついた。喜三郎の事だろうきっと徹底的に掃除をやってるに違いない。穂積は掃除が終わったので1階に待っていたという所だろうか…1人で不安そうに見つめる穂積に璻は応える。
「そうなんだ。じゃあ、きょうちゃん、手空いてる?ハーブティー淹れるの手伝ってくれたら嬉しいな」
穂積は嬉しそうに璻に応える。
「はっ……はい!わ、私でよければ」
穂積の返事を聞いた璻は嬉しそうに歩きながらキッチンに向かう
「よし、じゃあまず、カップ持ってくるからちょっと待ってて」
璻はキッチンに向かうとカップがのったトレーを持つ。重いのかプルプル震えながらゆっくりとテーブルまでカップを運ぶ。それを見た穂積は璻が持ってきたトレーからカップを取り出しテーブルに並べる。穂積は璻に問いかける。
「いっ…5つを並べればいいんですよね?」
璻は頷きながら応える。
「うん。テーブルに置いたらハーブティーを注いでおこうか。」
璻は5つのカップにハーブティーを注ぐと穂積はカップを席順に並べる。
すると階段からバタバタと何やら人が降りてくる音が聞こえた。九鬼が最初にため息を出して、リビングまで歩いてくるのが見える。その後をなぜか諏訪と喜三郎は口論をしながら歩いてくるのが見えた。
「きっちゃん、あそこまでやらなくてもいいだろう?」
「義景は文句を言ってばっかだな?あれぐらいやらないと綺麗にならないだろが。」
くだらない争いをまたやってるよと思いながら璻と穂積は呆れながら見ていた。九鬼、喜三郎、諏訪の3人がリビングまでくるとなぜか嬉しそうにしながらテーブルまで近づいて行く。
九鬼が嬉しそうにテーブルを覗き込むと思わず璻に話しかける。
「お前、ハーブティー淹れられるのかよ。」
すかさず、諏訪が九鬼に声をかける
「藤宮の所はカウンセリング用にハーブティー出すんだよ。洒落てるよな。って朔!お前勝手にのむなよ。座ってから飲めっ!」
九鬼を見ると立ちながら、ハーブティーを飲んでいた。全員がハーブティーを手に取り香を楽しんで飲んでる姿を見て少し璻も嬉しそうにする。
…みんな喜んでいたからよかったということにしておこう…
喜三郎はテーブルにカップを置くと両手を叩き全員に呼びかける
「ソファでもテーブルの椅子でもいいからハーブティー飲みながらこれから指示を出す。とりあえず各自座るように。あと、璻さんハーブティー淹れてくれてありがとう。」
璻はお礼を言われて少し嬉しそうにする。
「あっ、いえいえ。」
喜三郎は淡々と指示を出す。
「これから、2人の依頼主がくるのでカウンセリングを行う。九鬼と穂積が主に先導して動いてもらうからな。1人目を九鬼が担当し2人目を穂積が担当する」
璻は自分の名前だけない事に気がつくと喜三郎に向かって手を挙げ質問をする。
「あの…喜三郎さん私は?」
「璻さんは調整役、璻さんはカウンセリングの経験があるので2人の補佐を主に動いてもらう。」
喜三郎の言葉になんとなく璻の直感が働いた。
…それ一番大変な奴じゃん……
喜三郎はさらに指示を出す。
「なお、最初のカウンセリングの観点出しとカウンセリングの方向性は全員でやる。サクッと今回の依頼主の説明をする。今回は1人目は母にひいきされて育った成人男性、2人目は男性依存の若い女性この人たちをカウンセリングする」
璻は喜三郎の話を静かに聞きながらあることを思った。
……闇が深すぎやしませんか……
そう思いつつ、喜三郎の次の指示を聞いていた。
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・ローズマリーのハーブティー
ローズマリーのハーブティーは精神的なリフレッシュ効果や、花粉症の症状緩和や血行促進、消化促進などの効能があります。ちなみにそしじぃもハーブティーが好きでよく飲んだりしています。ログハウス自体、カウンセリング専門の場所にしているのである程度手入れはしてあります。
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