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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 新人研修編 -

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第46話:水の構造

 



 ─────その頃の璻はというと─────



 無数に広がる水分子を見つめ悩んでいた。



「諏訪さんのせいにしてる場合じゃない。どうすればいいか考えなきゃ…って考えてる時間なぁぁぁいっ!」



 …叫びたくもなるこんなに水分子が見える中でどれを……選べば・・・選ぶ?


 その時、璻はふとある事に気がつくと周りに広がる水分子を確認し始める。


「やっぱり、この水分子たちは大体六角形や丸に近い形ばかり、水分子の配列も全て綺麗で均等な形」


 …逆に壊れている水分子はないんだろうか?…


 璻はキョロキョロと周りを探す。無数の水分子から形の崩れた水分子を探すが見当たらなかった。


 あることを璻は確信する。


「藤宮さんの時は形が悪い水分子を中心に見ていたけど、この水分子たちは形の悪い水分子は周りに一つもない」


 璻はこれからある推測を立てる。


 …この水、分子の形状が細かいかもしれない。普通の水道水の場合、一定に家庭に支給する際に水へ圧をかけるけど、通常こんなに水分子の配列が綺麗にならない。だとすると、考えられるのは…




「H3O2の水分子。EZ水、第4の水構造」



 説明しよう。H3O2の水分子とは何か。

 水には今まで第三構造しかないと考えられていた。

 固体(氷)、液体(水)、気体(水蒸気)の3つの事を指している。



 水の三態変化ともいう。


 大概は小学4年生で習うものだが、2019年に第4構造というものが発見され広く知れ渡った。このH3O2は主に温泉水や山の水の事を指す。とろっとぬめりがある水を第4構造と呼ぶ。第4構造の水は自然豊かな場所に多く存在しそれを飲むと健康長寿になるとか言われそれを求めて移住する人も多くいる。



「こんなに形が一定ならどれ見ても同じなはず…」



 璻は目の前に見ていた丸の形の水分子を見る。



「とりあえず、これ触ってみよう」


 璻は意を決して人差し指を出し水分子に近づけ触れた。

 思わず強く目を瞑る。



 水がどこかを流れる音が聞こえる。

 まるで璻が水の中に溶け込んでいるように感じていた。



 その水分子は璻に水自身の記憶を見せていた。


 藻にあたり、岩にあたり、石を揺蕩い、流れるままさすらう。時たま大きい魚の顔に水が当たるが魚は気にせず泳いでいる。璻は驚きながら、思わず笑ってしまう。



「水の視点で物事を考えたことなかったな。こんなふうになっているんだ」



 水は流れに沿って広い湖のような場所に出た。

 太陽の光で水が反射する光景につい璻は心地よくなってしまっていた。



 …冷たくて、温かい、なんて矛盾した気持ち。光に満ちた場所…湖…ここは見たことある…諏訪湖?



「おいっ!龍後」


 誰かの呼ぶ声がするが璻は目を開けたくない。


 あまりに声が響くので嫌々目を覚ます。

 すると声のする方へ璻は顔を向けると諏訪がすごい形相で璻を凝視していた。


「おい!!龍後一回で目を開けろ。もう終了だ。」



 驚いた璻は思わず声が漏れ出る。



「ヒィッ……」



 諏訪はため息を出すと璻にお説教をする。


「はぁっ…3分20秒、20秒の遅刻だ。馬鹿野郎!言われたらサッと起きろ。」


 諏訪の言葉に璻は冷静になると申し訳なさそうに返事をした。



「はいっ…」


 諏訪は璻の顔を見ると話しかけた。


「この水片付けっから少し下がってろ」



 璻は「はい」と返事をすると諏訪から2歩ほど離れた。

 宙に浮いている水に向かって諏訪は合掌すると何かを唱え始める



「水面よあるべき場所へ戻り給え」



 そう唱えると宙に浮いている水は紙コップの中へと戻って行った。

 璻はその光景を見ながらふと疑問がよぎる。


 …そういえば、諏訪さん水分子の形全部同じだったのは知っていたのかな?・・・


 諏訪は紙コップを手に取ると中の水を確認する。

 特に何も変化がないのがわかったのか紙コップをテーブルに置くと同時に璻は諏訪に質問をする。



「あの…諏訪さん水分子の形大体同じだって知ってたんですか?」


 諏訪は特に悪びれる様子もなく璻の疑問に答える


「そりゃな。事前に水分子の配列見てるし、それにお前なら時間内にわかると思ったからだな」



 …なんだ、その言い訳なんというか信頼しすぎというか…


 事前に璻に詳しく教えなかった事の怒りよりも新人の璻に対して根拠のない信頼を寄せていることが嬉しくなってしまい怒る気力すらなくなる。


 そんな自分はさぞ単純なやつだと思う。璻は諏訪になんともいえない表情をする。



 諏訪は璻に見えた記憶について聞き始める。



「んで、水分子を見た感想と龍後の見解を聞きたいんだが」



 その話を待ってましたとばかりに璻はウキウキと返事を返す。


「はい!では私の見た水分子の配列から説明します」


 明らかにテンションが上がっているのが諏訪にもわかった。


「推測するにH3O2の水にですかね。水道水ではない事は水分子の配列からわかりました。それに人間の体内の記憶の水ではない事もわかりましたね。六角形や丸の形ばかりで、所々形は崩れていなかったので。」


 諏訪はふーんと頷くとニヤッとした表情で次の質問を聞く。



「そうか、記憶の方はどうだった?」



「はい。私が見た記憶はおそらく、川の水から湖に出るまでの記憶、藻や岩や川魚がいました。最終的に湖が見えました。おそらくあの場所は諏訪湖なんじゃないかなと」




「おっ…そうか…」



 諏訪はそういうと少し黙り始め考える様子に見える。

 璻は諏訪に質問する。



「あの、諏訪さん、さっきどうして誰かと話しかけていたんですか?」



 諏訪は何かに気づいて説明をする。


「あぁ…そういや、説明してなかったな。俺は超聴覚があるって喜三郎のじじいが言ってただろ?」


 璻は頷くと同時に返事をする。


「はい」


「超聴覚は話している音が聞こえるんだ。特に俺の場合は水分子の配列の時に分子結合する際の微妙な音が聞こえるのと諏訪大社の御神体の声なんかも聞こえる。聞こえ方は人それぞれだが、朔なんかも聞こえ方はちげぇからあとで聞いてみろ」



 分子結合する際の微妙な音という言葉が引っかかったのか璻は非常に興味を持った。


「ちなみにどんな音が聞こえるのですか?」



「龍後お前、よく聞けるなぁ。まぁいいや。分子結合する時は耳鳴りみたいな時もあるし、右上の頭上から話し声みたいな時もある。これがなんなのか早く科学で解決してほしいけどよーまだ技術が追いついてねぇーからな」



 璻はふーんと呟く。


「要するに諏訪さんは普通の人が聞こえない音を拾うんですね。それ生まれつきなんですか?」



「あぁっ俺は生まれつきじゃなくて段々とそうなっていったからな…生まれつきの藤宮とは違うがな」



 …段々とそうなるってね、諏訪さんの血筋なんだろうか。てか、藤宮さん超聴覚生まれつきだったんだ…


 璻は思わず自分には関係ない話だなと思いつつ諏訪に答えた


「なんか、ここの人たち大変ですね…」


 諏訪は何言ってんだコイツという表情を璻に向ける


「いや、龍後お前他人事みたいに言ってっけど、お前も超感覚開き始めてるじゃねーかよ。」


 …えっ?…


 璻は諏訪の言葉が理解できずに聞き返す。


「今なんて?」



「いやだから、藤宮と同じ超感覚開いてるって話だよ。水と感覚を共有できるって藤宮より優秀じゃねぇかよ。普通の人間じゃ出来ねぇし。」



 …はぁぁぁぁぁぁい?……


 諏訪の言葉に信用してない璻は冗談っぽく話を返した。


「まさか〜そんな入って日が浅いんですよ?んなわけ…」


 璻が信用してないのがわかったのか諏訪は璻に言い聞かせるように説明をする。



「あのなぁ…日本人の遺伝子持っている奴は大概超感覚、超聴覚、超視覚を持っている民族なの知らねーのか。だからエゴや私利私欲それらの汚い部分の自分を認識し内側から自分で癒す事でそれらがうまく日常生活の中で発揮出来るようになるんだぞ。俺らはその先駆けた集団なんだ。少しくらい自分の能力を信頼しろ」


 そう力説されてもなぜか璻は他人事のように聞こえる。


「って言われましてもね。私、今まで普通に暮らしてきてたんであまり実感がないですよ。しかも諏訪さんが言うようにそのことに気づかない人結構いますよ」



 諏訪は腕を組みながら話をする


「そりゃ大半プロパガンダで覆われてるからな。石屋関係者がそういう人たちを精神異常だと言って病院送りにするのはしょっちゅうだな。入院し薬漬けにさせてまた一般社会に戻るの繰り返しだぞ。ネットの中にも石屋関係の工作員とかごまんといるからな。ようは社会や自分の在り方に疑問を感じ気づいた人からそこから抜け出し、立ち上がればいいと俺は思ってるね。そのための水流士だし。龍後お前は恵まれてるよ。よかったな」



 諏訪のその言い方は璻には少しキツく感じると諏訪に対して返事を返す。



「そんなもんなんですかね…」




 まるで気づかなかった人はずっとそこにいればいいと言うように聞こえる。

 裏を返せばいつまでも待ってあげてる優しさを感じられるが、苦しんでいる当事者からしたらそれは意地悪に聞こえるだろう。



 諏訪の言葉から璻はふと考える。


 そういやいつだったか、どこかの予言で人災や災害で1週間以上電気や水、物流が止まるから準備しましょうねと情報が広がった時にそうかもしれないと準備した人とそれ自体信じられず普通に過ごしたり、それ自体知らなかった人がいたっけ。結局それが楽しく生きるか餓死するかが明確になったとか。だいぶ昔の話にあった出来事だったけど。



 …結局、生きるのも亡くなるのも何を体験するのも個人の選択の延長線で自由に決めているんだよね…



 璻の真剣に物事を考える表情に諏訪ふと笑いながら璻を見つめる。

 璻は諏訪にじっと見られたことがびっくりしたのか途端に距離を取り諏訪に文句を言う。


「なんですかっつ!」


「龍後お前、そんな考えてるとそのうち藤宮みたいになるかもな」


 璻はむすっとして言い返す


「上司としてはいい人ですがああなるのは絶対にいやですっ。阻止しますから」


 諏訪は腹を抱えながら笑う


「ふふはははぁーお前それ藤宮が聞いたら泣くぞ」


 その言葉に思わず拗ねている藤宮が浮かぶと璻は目頭を抑える。


 …なんだろう終わったら目がクラクラする疲れが出てきたのかな…


 璻は諏訪に疲れきった表情を見せると声をかける


「あの、諏訪さんもういいですか?私、目がクラクラするので」


 諏訪は璻の表情から具合がよくないことを察する


「そりゃ、水分子の記憶見るだけで気力使うからな。もうそこで座って休んでていいぞ。今より具合悪くなったら言えよ」


 璻は頷きながら返事をする


「はい」



 穂積の近くに璻は座ると穂積は璻に優しく話しかける


「おかえりなさい。つっ…疲れたでしょ」


 穂積の言葉が嬉しかったのか思わず璻は笑顔になるとゆっくりと応える


「ありがとう。大丈夫だよ」



 諏訪は穂積を見ると急に呼びつける。


「穂積、次お前だな。」


「ははっい……」


 すると穂積は立ち上がり、諏訪の近くへ向かい歩いた。

 

。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


・第4の水構造、H3O2の水分子:別名EZ水

2019年ある博士が水分子の構造を発表したことからこの水分子は広く知られました。

H3O2は水の電気分解によって生成されるマイナスイオンの一種であるヒドロキシルイオンを指しています。

この第4構造の水は微小生命体とも深く関わりがあると言われています。人間の健康寿命に関係することなので科学者は日々この研究をしています。ちなみにこの第4構造の水分子は璻が大学で深く研究していた分野なので詳しいです。


 ・日本人の遺伝子持っている奴は大概超感覚、超聴覚、超視覚を持っている民族


この諏訪の発言で日本人は誰もが持っている能力だということがわかります。それは根本的にある時期を栄にDNAの構造が二重螺旋から三重螺旋に変化し始めたのが原因でもあります。諏訪は職業上古典文学などを読んで日本の役割や日本人の能力を読み解くのが得意です。特に人の能力を分析することに長けています。ちなみに璻も諏訪に言われるまで気づきませんでした。






。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。

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