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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 新人研修編 -

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第41話:沈黙の重要性



 森の中の階段は非常に滑りやすい。

 



 そのことをわかっているのかそしじぃも璻もゆっくり降りている。




 …こんな山奥で足滑らせたら怪我でもしたら大変…




 璻はそんな事を考えながら一歩ずつ進む足元に集中していた。

 そしじぃも璻も階段を下りきると璻は足を止めそしじぃに向かって唐突に質問をする。



「あのっ…そしじぃはここまで生きて良かった事ありますか?」



 畑の方まで歩いていたそしじぃはゆっくり後ろを振り返り璻の方を見た。



「君は突然面白い事を聞くね。なぜそこに疑問を持ったのかい?」



 璻はそしじぃの近くまで歩きながら話し始める。


「そしじぃは信頼していた仲間に裏切られ命を狙われて大変だったじゃないですか。私だったら確実に落ち込みますし、トラウマになると思います。しかも日本は移民が増え政府が崩れ国が崩れ各国では国境が消えたじゃないですか。2050年の今、日本は3つの地域に分かれ生きるのも大変な世の中で死を選ぶのも一般的になっている。そしじぃはそんな激動な時代の中で生きて良かった事あるのかなって。」




 璻には先ほどの話で思うところがあった。そしじぃの話が本当なら私からすると相当なトラウマに感じる。それに世界での株の暴落、各地の地震で国の形が変わり、各国の政府が対応しきれなくなったから民間の人たちが立ち上がり初めて世界政府ができた。崩壊から誕生までを経験しそしじぃは生き抜いている。




 …そしじぃの話からするにきっと嫌なことはたくさんあったのにも関わらず、自分の命を投げ出さずそれでも生きてよかったことなんてあるのだろうか…




 そしじぃは目を瞑って思い出す素振りを見せた。



「うーん。そうだね。良かった事はたくさんあるよ。たくさんの人に会えた事もそうだけど、何より全てが崩れる事が見れた事かな?そんな事って生きてないと体験できないじゃないか。」



 ニコッと笑うそしじぃに対して思っても見ない回答をされて少し璻は困惑する。



「それって、いい事に入るんですかね……」



「普通の人はいい事だとは思わないね。でもワシはよかったと思えるよ。2万6000年周期で地球は大きく変容すると言われているからね。それに生きて立ち会えるってなかなかない出来事だよ。それに大きく崩れ去ってから人は初めてなんとかしなきゃと思うんだよね。本当はその前に気づく前兆はあるんだけどね。」



 璻は黙って頷くと「失ってから気づくって奴ですね。」そう返した。



 そしじぃは少しニヤッと笑う



「遅いよね。人間て。でも二度と経験したくないって痛い思いを味わないと人間は対策打たないからね」



 そしじぃは畑の前に止まりしゃがみ込んだ。

 それぞれの和ハーブの葉を確認しているように見える。



「あと、よかった事と言うとたくさんの人の話を聞いた事かねぇ。聞く重要性をあの時代に学んだからこそ人間関係に悩まなくなった。ワシは人とコミュニケーションするには聞き手が鍵を握っていると思ったんだ」



 璻はそしじぃがしゃがみ込んだ所の近くで足を止め首を傾げてながら聞き返した。



「聞く?普通に聞くのと何が違うんですか?」



 そしじぃはその場で立ち上がると璻を見ながら答え始めた。



「うーん。人と話している自分がどう考えているのか、観察すると自分の今の気持ちに気づけることかねぇ。例えば……そうだね。人と話してたまに沈黙になる時があるだろう?君はその時どうすんだい?」



 璻はうーんと顔に手を置いて悩むとそしじぃの質問に答えた。



「そうですね。人にもよりますけど…初めての人なら沈黙がないように話を繋ぎますね」



 そしじぃは深く頷くと璻に助言をする



「あぁ…そうか。君は…沈黙になる事が怖いんだね。それも昔が原因みたいだね。」



 璻はその言葉にハッとした。



 …沈黙が怖い?昔?……



 ふと璻の頭の中で幼い記憶が蘇る。


「お前静かすぎるんだよ。何か話繋げられねぇーのかよ。使えない女子だな。ほんと」


 その言葉を言った友達の顔を見ると黒い線でぐちゃぐちゃになっており認識できない。これはきっと小学校の頃に言われた言葉だということ思い出した。



 そしじぃは璻が過去の記憶に囚われているのをわかったのか璻にそっと諭すように声をかけた。



「沈黙を待つ事も"会話の一つだよ"」



 璻はそしじぃの声でふと我に返った。


「今、私っ…ぼっーとしていて…」


 …水流士になって今みたいに過去のことがフラッシュバックする事が増えている…



 そしじぃは璻を不思議そうに見つめると璻は少し慌てて質問をした。



「失礼しました。あの、はっ…話さないのも会話になるんですか?」



 慌てる璻を見てそしじぃは笑顔で話を返した


「会話に大切な事は聞き手の捉え方で8割決まる。君は沈黙が心地よく、かつ余裕がある自分になれているのか考えて話を聞いたことがあるかい?」



 璻はそしじぃの言葉を聞いて少し落ち込んだ。


「8割も?私そこまで俯瞰しながら他の方と話たことないです…」


 そしじぃははぁーっとため息を出すと


「まだまだ修行が足りんねぇ。基本ワシらはカウンセリングが主だから。覚えておくように」



 璻は頷き「はい」と返事をした。

 続けてそしじぃは少し悲しそうな表情をしながら話の続きを始める。



「こういうことを義務教育で教えてくれればいいんだけどね。そうすれば大半の人間関係の悩みは小さくなるのにね。」



「確かにそしじぃの言うように聞き手が大事って教わって来なかったですね。自分の主張ばかりしても会話にならないですね…」


 そしじぃはニヤッとすると少し歩き始め璻の方を振り返った。


「そう思うなら今日から意識することだね。」


 璻は首を傾げながらそしじぃの後を追いつつ話しかける。


「今日からってどういう事ですか?」


 そしじぃはその場で足を止めると「時計ほら、あと10分で18時だよ」そういうとおもむろに腕時計を璻に見せてくれた。


「えっ。本当だっ…17時50分」


 そんなに時間が経ってないと思っていたのにすでに1時間以上経っていることにも璻は驚いていた。


 …田舎は時間が経つのが予想していた3倍早い…


 驚いている璻に唐突にそしじぃは話しかける


「さて、じゃあー君は3番の部屋に来なさい。」


「さささ?3番?」


 璻はなんのことをそしじぃは指しているのかわからなかった。


「さて、畑も見終わった事だし、中に戻るとするかい」



 そういうとそしじぃは歩き始めた。

 璻はわけが分からず「???はい。」とただ返事を返した。



 そしじぃは歩いて宿舎の方に歩いていくと璻もそしじぃの後をついて宿舎に入った。玄関に入るとそしじぃが璻の方へ振り向き両手を出した。



「じゃあ〜杖とわさびもらうからちょうだい」



 璻は杖とわさびを差し出すと「はい。どうぞ」と手渡した。

 そしじぃは笑顔でお礼を言う


「ありがとう。」


 そういうとスリッパに履き替え上がり框に上がるところまでそしじぃの姿は確認できていた。璻もスリッパに履き替え、上がり框に上がると忽然とそしじぃの姿は消えていた。



 周りをキョロキョロしながら姿を探すが見当たらない。


 璻はそしじぃを探すことを諦めてロビーへ向かった。


 …もう…消えることは気にしないでおこう…



 少し歩くと喜三郎の姿が見えた。

 ロビーのソファでどっしりと座っていた。


 喜三郎は璻に気づいて話しかける。


「時間より少し早いな。さすが。んで、そしじぃになんて言われた?」


 …さっき言われたことを言えばいいのかなぁ?…


「なんか3番に来なさいって言われました。」



「じゃぁ行くか…」



 喜三郎は重い腰を上げてソファから立ち上がると歩き始める。

 璻は恐る恐る番号について喜三郎に聞いた。



「あの、3番って……」



 喜三郎は歩きながら説明をし始める。


「あぁ、これからレクリエーションを少しするって話しただろ?そしじぃは新人全てに部屋の番号を割り振って直に伝えるんだよ。そして新人研修参加者は今年は6人になってる。4人は欠席。3人チームを2部屋に分けてレクリエーションしてから夕飯だ」



 喜三郎はロビーの反対側に向かって歩くと大きな襖があった。その襖には3番と書かれた紙が貼られていた。

 


  璻は3番の紙をじっと見ていた。


 …どんな人が集まっているんだろうかなんかちょっと緊張するな…


 喜三郎は部屋の番号を確認すると襖に手をかけた。

 期待と緊張でウジウジしている璻を気にすることもなく喜三郎は襖を豪快に開ける。



「よっ‼︎集まってっかぁ〜」



 …いやっ、何も考えずに急に開けるのかこの人っ。少しは私を気にしても良くない⁈!…



 襖を開けた部屋の中を恐る恐る璻は見る。



 …うわぁっ…もう帰りたい…



 璻は心底嫌そうな顔をした。



 どこかで見たことがある人物、髪型は刈り上げショート耳にはピアスをしているワイシャツで黒いベストを着ている、爽やかな青年がちょこんと畳に座っているのが見えた。



 …玄関で絡まれた失礼な青年っ…



 青年は璻に気づいたのか急に指を刺した。



「あぁっ!スリッパ出す速度が遅い女じゃん」


 璻はいてもたってもいられず反論する



「いや、スリッパの速度で認識すなっ。どんな認識してるんですか!」



 青年の隣にいたサラリーマン風の男性は思わず畳を叩きその場で爆笑した。


「あはははっ〜いやーサイコ〜だな。藤宮の所の新人はツッコミも出来るのか有能だな」



 …あんたももれなくいるのねっっ‼︎…



 璻は部屋に入りたくないと断固たる意志で襖にしがみついていた。

 喜三郎はそんな璻を気にせず部屋に入ると不自然に襖にしがみついている璻に声をかける。



「何やってるんだ?入るよ」



 璻は喜三郎に一瞬入りたくない表情をするが一ミリも通じてないのが窺える

 璻は渋々返事を喜三郎に返す



「はっ…はい…」



 足取りが重い状態で部屋の中に入った。



 

。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


・2万6000年周期で地球は大きく変容する

地球の周期は2万6000年で大きく変わります。地球はもうかれこれ何回目なんでしょうね。大陸が沈んだり津波が来たり恐竜が滅んだり。そんな中人間は生きているわけです。



・沈黙を待つ事も会話の一つ


要は間を楽しむことを指しています。茶道とかでもそうですが、沈黙が心地悪いと確実に対人関係のコミュニケーション影響します。これは2025年以降にかなりの物価高になり集団で住む人が増えると対人関係の悩みが増えますが、基本は沈黙を自分が許してあげられるか沈黙が心地いい相手だと対人関係の悩みが減ります。コミュニケーションの中で会話が絶対的に必要というわけではありません。聞き手側の意識が重要になります。そしじぃはそのことを経験したため璻に助言をしています。




。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。

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