第39話:不躾な好青年
1人の男性はワイシャツに黒いベストを着たツーブロオールバック、手にタトゥーをいれたサラリーマン風の男性ともう1人は先ほどの男性より若い見た目、髪型は刈り上げショート耳にはピアスをしており、先ほどの男性と同じくワイシャツで黒いベストを着た爽やかな好青年。
その2人が上り框の上に座っている状態に璻の目には映った。
璻とサラリーマン風の男性が目が合うと急に呼び止められた。
「そこのえぇ〜泉のアシスタントっ!何だっけ…名前」
璻は呼び止められ驚きつつも冷静に返事をした。
「龍後璻です。」
男性は璻をジロジロ見ながらうーんと悩み少し考える
「あぁ、そんな名前だったけ…」
…むしろ、あなた誰?そしてなぜ初めて会ったのに私のこと知っているんだろうか……
すると急に男性は偉そうに璻に話しかけた
「龍後くん?だっけ。そこにあるスリッパとってくれるか?2人分よろ」
男性はスリッパがある棚に方向に指を刺した。
特に断る理由も見つからないので仕方なく返事を男性に返した。
「あっはい…」
璻は棚からスリッパを2人分を出し2人の目の前に丁寧に揃えて置いた。
男性は「ありがとうな」と言ったが青年は璻をなぜか睨みつけていた。
青年はボソッと口を開いた。
「スリッパ出すの遅い」
その一言で璻は瞬間的にわかった。
…スリッパを出す速度になぜ文句を言われるんだ。なんだコイツ…
「こぉーら。何やってんだぁ。てめぇはよ」
ゴツンッッ!
男性は青年にゲンコツで殴ると青年は打たれた頭を押さえながら男性に話しかける。
「いたいぃ…諏訪さんそんな叩かなくてもよくねぇ?」
男性は呆れながら青年の顔を覗き込む。
「九鬼家の次期当頭が文句言う前にまずお礼が先だろうがっ…たくっ…」
青年は何かを諦めたようにはぁっとため息を出すと小声で璻にお礼を言った。
「あっ…ありがとうございます」
璻は右頬をピクピクさせながら
「いえ……大した事はしていませんのでは私はこれで」
璻は軽く頭を下げその場を速攻で去った。
青年のあの傲慢な態度に璻はイラッとしていた。
…なんて失礼な奴だったんだろう…
璻はそう思いながら玄関を通過し目の前の階段を登った。
この一週間、さっきみたいな人ばかりだったらと思うと階段をのぼる足取りは重くなっていた。階段を登り切ると璻と同じくらいの女の子がこっちに向かってくるのが見えた。ポニーテールでワンピースを着た優しそうな雰囲気の女の子。璻はその女の子を見て直感的に仲良くなれると思った。
璻は思わず挨拶をする。
「こんにちは。新人研修に参加する方ですか?」
女の子は急に話しかけた璻に驚きつつ返事を璻に返した。
「はい。私、新人で…」
…よかったぁこの子はまともだ…
璻は返事を返してくれたことが嬉しくなったのか少しテンションが上がっていた。
「同じですっ!私、璻。龍後璻って言います。よろしくお願いします。」
女の子も璻に合わせて自己紹介を慌ててした。
「あっ……わわ私、穂積兎鏡っていいます。よよよよろしくお願いしますっっ……」
「私、初めて同い年くらいの女の子と喋ったよ。よかった〜心強いよ」
璻はそういうと穂積は璻の顔を凝視する
「あのっ…なんてお呼びすればいいんでしょうか…」
穂積は心配しながら璻の様子を伺っていた。
「私の事は璻でいいよ。あなたはなんて呼んだらいいかなぁ?」
「わたっ……私は……ほづみんとかきょうちゃんとか呼ばれてますっ……」
「じゃぁ、きょうちゃんで大丈夫?」
「はいっ!ありがとうございますっ!」
そういうと穂積は深く璻に頭を下げた。
「あのっ……これからちょっと出かけるのでもう話しかけないでください、じゃぁ……」
そういうと穂積は速攻で璻の前をかけて階段を降りていった。
「えっ?……私なんかやらかした?」
璻は初めてあった人から言われた事ない言葉に困惑をしたがとりあえず部屋のドアノブを握り部屋に入る。ベッドまでトボトボ歩くとさっき言われた言葉を考えていた。
「もう話しかけないでっ……言ったよね」
璻は唸りながら考えた。どんなに考えても答えが出ない。段々と考えることがめんどくさくなると諦めてベッドに寝っ転がった。
…とりあえず、またきょうちゃんに会ったら謝ろ…
璻の中で答えが出るとベットから起き上がった。
とりあえずキャリーケースから荷物を出して片付けをしないとやりたい事ができないのは璻もわかっていた。
キャリーケースから荷物を出し備え付けの棚入れ、服をクローゼットの中に入れると部屋についてある窓の淵に手をかけ思いっきり窓を開けた。頬に当たる心地よい風に自然と笑みが溢れてしまう。窓からの景色は美しい森や川が一望できる。璻の部屋は絶景がよく見える部屋なのに気づいた。
ふとなぜか昔見たスポコンアニメが頭をよぎった。
…大勢で寝泊まりって昔の合宿ってこんな感じだったんだろうか?……
そんな事を思いながら片付けを終えると窓を閉じ部屋を出た。
階段を下り、スリッパを脱いで、靴に履き替え宿舎の外に繰り出した。
宿舎から外は森も川もある。
なんて自然豊かな土地だろうと感じる。
そして宿舎から一歩外に出ると近くに広い畑とハーブ農園が目に入った。
…確か敷地内の畑は入っていい事になっているっけ…
璻は花壇に向かうとゆっくりとしゃがんで観察をし始める。植えてあるハーブの葉を手に取り葉の色や形を確認する。どのハーブも葉が青々として育ちが良く見える。オフィスには見かけない植物ばかり育っているように思えた。花壇の名前プレートにはドクダミやよもぎや和ハッカやクロモジなど和ハーブが多いように見受けられる。
「山だから、育ちがいいのかもしれないね」
璻はふと耳を澄ますと川の音が宿舎の上の方面から聞こえてくる。
周りをキョロキョロすると宿舎の敷地内の上の方には山道の階段を発見した。
冒険や新しい場所を探検することが好きな璻は宿舎の上まで璻は登ってみる事にした。
舗装されていない石の階段を15分ほどかけて階段を登る。
少し急だが登れなくない。
息があがりながら階段の上まで登り切るとそこにはわさび農園が広がっていた。
その光景に思わず璻は声が漏れる
「うわぁぁ〜わさび農園だぁ。初めて見た」
わさびは綺麗な水でしか栽培できず川の近くで栽培される事が多い、璻は大学時代に講義のスライドを見て知った事があった。
あの時の璻はへぇーくらいに思っていた。
大学の時は周りから突っ返される事が多く、当たり前の事がつまらなくて、就職しても会社のルールが気に食わなくていきなりクビになって。でも再就職して、水流士になってから色々な経験を経てあの時の大学で受けた講義のスライドより今の光景わさび農園の方が余程綺麗に感じる。
いろんな経験するとまた違う感覚が自分の中に湧き出てくるのは生きているからこそ味わえる特権
「水を扱っている職業に就いたから余計にこの自然と水のありがたさに気づくなぁ」
そんなことを呟く静かに呟いた。
璻はその場で深呼吸すると璻のすぐ後ろから
「そうでしょ。わさび農園いいでしょう?」
瞬時にこの声は知っていると璻は思った。
ゆっくりと後ろを振り返る
「えっ…」
そこにはそしじぃがなぜか璻の後ろに立っていた。
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今回は穂積が出てきたのでご紹介します。
<登場人物紹介>
・穂積兎鏡
年齢:24歳
穂積は初めての人と喋ることが少し苦手なキャラです。信頼すると値したときにものすごい喋ります。
穂積も心に傷を抱えています。ちなみに獅子子が連れてきた新人です。
水流士にならないといけない理由があって水流士になっています。
そこらへんは話を進めると明らかになって行きます。
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