表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- ネグレクト編 -

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/68

第20話:承認欲求が満たされない





 ふと璻は幼い渦見と渦見の父親の様子を確認する

 


 

幼い渦見は目の下が真っ青になり少し痩せているように璻には見えた。父親もチラッと見るが母親が生きていた時の記憶より顔色が悪くやつれているように見える。以前見た時よりも部屋の中に仏壇のような物が見える。


 


…母親が亡くなった後の出来事だろうか?…


 



幼い渦見は父親に問いかけた。

 



「なんで芸能のレッスン辞めたのっ……ぼっ僕楽しかったのにっ…どうしてっ…」


 


渦見の父親は嫌々そうに幼い渦見問いかけに応えた。



「もうお母さんは死んだんだ。こんな所で人生棒に振っても…お前のためには何もならない!だから辞めさせたんだよっ。わかれよ」



どう頑張っても小さく幼い渦見が大きい父親に勝てるわけもない事は幼い渦見自身理解していた。



幼い渦見でもできる反抗は限られている。

ただ父親を睨みつけるそれしか出来ないと考えた。


 

幼い渦見から心で考えている声が璻に聞こえ始める

 



…コイツがお母さんを死なせたんじゃないかっ‼︎お母さんがこの世を去って父さんによく言われたことがあった。泣くな。男が泣くことは許さん。みっともない。悲しむ事や泣く事さえ許してもらえなかった…




璻はこの言葉を聞いてなんとなく想像ができた。



…渦見さんは母親が亡くなった時から泣く事を我慢している。感情を出す事を父親は許してくれなかったんだ…


 


また幼い渦見から心の言葉がまた聞こえ始める

 



…それにお母さんは褒めてくれるのにお父さんはいつだって僕を褒めてくれない…




幼い渦見の中できっと母を自殺に追い詰めた父親なんだと思い込んでいる事が璻にはなんとなく想像ができた。


 


璻はなんとなく幼い渦見の承認欲求を父親はきっと満たしてくれなかったことに気づく。

一番信頼できる家族に認めて欲しかったのに自分を肯定し認めてくれない苦しさを幼い頃から抱えていたとしたらトラウマはもっと増幅する。


 

 

…そっか記憶を見る前に泣いる声が聞こえていたのは感情を殺し我慢している幼い渦見さんの心の叫び…


 

 

そして、渦見さんにとって芸能界は母親以外に無条件に自分の存在を認め褒められる唯一の場所だった。




…これが渦見さんの深いトラウマだとしたら…



 

そんな推測を頭の中で考える。

あくまで推測だから断定はせずに考えを頭の隅に置いておくことにする。



璻は幼い渦見に目を向けた。



 

幼い渦見は精一杯父親を睨みつけている。

 

 

「なぜっ…そんな目で俺を見るんだぁっ…」


 

渦見の父親は何かにひどく怯え震えていた。

 


「お母さんと同じ顔でこっちを見るなっ…」


 

渦見の父親は手を振り上げて幼い渦見の頬を叩く




バチンッ!


 


2回、3回、頬を叩く音が部屋中に鳴り響いた。

それでも泣かずに幼い渦見は父親を睨み続けた。


 

父親はまるで幼い渦見を子供という存在で見ているのではなく何か恐ろしい物が目の前に現れ自分の手で消し去ってしまいたいと思う感情に駆られているように璻には感じた。


 

渦見の父親は急に叩くのを辞めた。

少し立ち尽くすと渦見の父親は叫び始めた。

  

 


「ああああっ…俺は一体っ」


 


膝から崩れ落ち床に伏せ頭を抱える

幼い渦見はそれを黙って見つめながら部屋を出て、ドアを閉めた。



…これは何度目だろうか、お父さんはお母さんが亡くなった時からおかしくなった…

 


幼い渦見は叩かれた頬を手で触りながら自分の部屋に帰った。

璻はあまりにひどい光景に目を疑った。



…この家族は母親を失ってから父親も少しずつおかしくなっていたのか…


 


璻は強く目を瞑った。目を開け辺りを見渡すと藤宮が水分子を見ていた。

渦見の記憶はそこまでで終わっていた。



水分子から手を離すと璻は藤宮に話しかける。



「藤宮さんっ…戻りました。」


 



藤宮は璻の声に反応し、ビクッとして璻の顔を見た。



「意外に早くてびっくりしました。いかがでしたか?」



璻は一瞬悲しそうな表情を浮かべる。

でも事実を直接報告しなければならない。



璻は決心を決めて口を開いた。



 

「幼い渦見さんが母親を失い酷く落ち込んでいる様子でした。父親が亡くなったショックで少しおかしくなった様子で幼い渦見さんに何度もビンタしていました。」




璻の言葉を聞き藤宮は目を丸くすると驚いた表情で聞き返す。




「えっ…ビンタですか?幼い渦見さんに?」


璻は頷きながら応えた。


 

「はい。父親は酷く渦見さんを見て震えていました。」



藤宮の表情は悲しそうな顔をしつつ璻に話しかける。

 

「そうですか。確か渦見さんの父親は実父から暴力を振るっていましたね。自分も同じ事をやってしまっていたんですねっ…」


璻は藤宮に疑問を投げかける。

 

「藤宮さん、私少し気づいた事があってあくまで私の推測ですけど聞いてもらってもいいですか?」


 

璻は真剣に藤宮を見つめる。



「はい。是非聞かせてください」


璻は藤宮に渦見の過去から考えられるトラウマの推測を話し始める。


「渦見さんの母親が生きていた時にアニメやアイドルが好きだった。多分母親自身がアニメやアイドルをやりたかったんじゃないかなと私は感じました。」


 

藤宮は璻の話を聞きながら少し考える

 


「確か、事前のすり合わせの際に渦見さんのプロフィールには渦見の母は裕福な家庭で育ちいわゆるお嬢様だった。昔から芸能界の憧れが強かったと書いてましたね」


 

璻は真剣に藤宮を自分の意見を伝える。




「はい。渦見の母親はお金持ちのご令嬢なら芸能界の闇や売れるまでの大変を両親は知っているはずし、渦見の母親自身出来なかった後悔が相当強く残っていた。でなければ自分の子供に強く教え込まないはずです」


 


藤宮は腕を組みながら少し考え込んだ。

 

 


「確かそういう方一定数いらっしゃいますよね。自分が医者になれなかったから医者にさせようとする親」


 

そう藤宮の言ったようにそういう親は一定数いる。

自分が出来なかった事を子供に押し付ける親それは本当は自分がやるべき事なのにと誰もが思うだろう。


結局押し付けにしかならない。


 

親のエゴでしかない事に気づいていない親がこの世の中にたくさんいる。

それが璻にとって非常に腹立たしく感じる。

璻は藤宮と話を続ける。

 


「自分が叶った気になるんでしょうね。きっと。私にはその感覚が1ミリもわかりませんが…」


 

 

藤宮はまた少し考えると璻に問いかけた

 


「渦見さんの母親に関してはなんとなくは背景は想像出来ましたが…それ以外にもいくつか不調の原因を璻さんは推測されているんじゃないですか?」


 


璻は頷きながら藤宮の問いかけに答えた。




「あくまで私の推測です…が、渦見さんは母親がいつも承認欲求を認めてくれたのに対して父親からの承認欲求はあまり得られなかったんじゃないでしょうか。父親は多分ですけど、自分の子供である渦見さんをどう扱っていいかわからなかった」


 藤宮は頷くと冷静に璻の推測から視野を広げて話し始める。



「なるほど。それだと話が繋がってきますね。渦見さんの父親は実父から暴力を振るわれていた。実父と同じ事をしたらどうしようと考え一定の距離を置いていたとかなら、ネグレクト独特の考え方なので想像がつきますね。一族ぐるみのカルマってわけですか…」


 

そう藤宮が言ったように璻の推測が一番トラウマに近いかもしれない意見が一致すると璻は藤宮に真剣に見つめる。

 


「根拠はないんですが、私はその線が強いと思っています。あと渦見さんは泣く事を止められて育ていました。幼少期にそれを刷り込まれたなら感情を感じる事に蓋をしがちになりそうだなっと」



 

藤宮はその話を聞きながらなぜか納得した表情を璻に見せた。

 



「幼少期に感情を出せなかったとなればその推測は事実に近いのかもしれないですね」



 

「それに私は芸能界をいきなり辞めた事も大きい出来事だったと思います。母親以外から承認欲求を得ていたのが芸能界だったので。渦見さんにとって生き甲斐だったのではないでしょうか。母親の死とその出来事も相まって父親を恨んでいる…」

 


藤宮は頷き璻に言葉を返した。


「確かに母親を失い、生き甲斐も失って、許せない気持ちがいまだに残っている。それなら辻褄がなんとなく合いますね。璻さんが仰っている出来事が事実だったら何個か調べたい事が出てきましたね。ちょっとあとで皇に調べてもらうよう連絡をいれときます。」



 

藤宮の調べてもらいたい事がなんなのか璻には理解出来なかったがここで皇の名前が出てくる事に少し驚きながら藤宮に疑問を投げかける。

 

 


「えっ、皇さんってすぐ連絡ついて調べられるんですか?神出鬼没で忙しいイメージありますけど…」


 


璻の中では皇はつかみどころのない、何を考えているのかわからないの印象が強く残っていた。


 

璻自身まだ皇を信用していない。

藤宮はため息を吐くと璻に話しかけた。

 

「元々ヤツが持ってきた依頼なんで調べているはずです。それに皇は優秀です。俺が信用していますので。大丈夫です。そんなに信用できないやつじゃないので」


璻はそんなに自分の感情がわかりやすいのか藤宮に感情がバレている事に驚いたが同時に藤宮が皇の事を話す時にいつも表情が穏やかになっている。


 

…ほんっとに皇さんの事信頼しているんだな…


 

「さて、皇はどうでもいいので璻さんは次の記憶をお願いします。」

 


そう話すと藤宮は歪んでる水分子を探し始めた。



「はい!次はどちらでしょうか?」


藤宮は次見る水分子を見つけて指を刺した。



「こちらの部分です。今拡大します」



璻はこの歪んでる水分子が身体のどこの部位かわからなかった。

思わず藤宮に問いかける

 


「これはさっきの脊髄の根元ですか?」



藤宮は璻に身体の水分子の説明をする

 

「いや、今度は胸の中心を見ます。さっきの所が一番根本だと胸の中心も酷く崩れている可能性が高いので。この部分は心や愛情の部分ですね。なので愛情に関する記憶が見えると思います。」


 



…愛情、渦見さんの…




藤宮が水分子を指で拡大させた。

水分子が歪み崩れている箇所がこちらもいくつも見える。

 



「これをお願いします。」




藤宮が指を刺した水分子は六角形の型が崩れ一辺の長さがバラバラになっていた。



「承知しました。何かあったら呼びますね」


璻は笑顔で藤宮に話しかけた



「璻さん大丈夫です。水分子見てますからご安心ください。」



璻は右手を出し人差し指をゆっくり水分子に近づけた。

藤宮の顔を見ながら挨拶をした

 


「では行ってきます」



藤宮は言葉をかけて璻を見送る




「いってらっしゃい。無事に帰ってきてくださいね」


 

 


璻は歪んだ水分子を見て強く目を閉じた。

 



水分子に指を近づける




指が触れた瞬間



ジャボーンッ‼︎




水の中に入る音が聞こえた。

 

。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


・一族ぐるみのカルマ

親から引き継いでる習慣や親の思考などはおじいちゃんやおばあちゃんも同じことで躓いていることが多いです。

これが原因で不調になったりすることもしばしば。いかに古い価値観を手放して自分らしく生きれるか?この時代では大事な要素になっています。



※補足ではないのですが、幼少期、承認欲求を認めてもらえなかった場合大人になっても承認欲求に左右されたりします。なので学生までにある程度、承認欲求を満たしておくとその後の人生が少し楽に感じたります。これはどこの時代も一緒ですね。


。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ