第13話:自分は普通だと吹聴している奴は大概イカれている。
━━━━━━━遡ること6時間前━━━━━━━
…コンシェルジュ持ったし、台本はカバンにある。飲み水と飴やチョコは持った、ペンは…あったあった。……
「よし。収録行くか…」
男性は靴を履き立ち上がるとドアを開けて玄関を出た。
歩きながら、今日の収録現場に向かう。
コンシェルジュに向かって男性は話しかける。
「stabilizeのGravity Center をかけてほしい」
コンシェルジュは「喜んで」というとすぐに曲をかけはじめた。
…俺、渦見辰彌って最高にイカしていて天才…
渦見は気分よく街並みを歩いていた。
「売れてるし知名度あるし何よりかっこいい。今日も俺、優秀。」
渦見自身で作った曲、自身のバンド『stabilize』はJロックを基本とした渦見のバンド爽やかな疾走感が特徴の『Gravity Center 』はSNSで話題になっていた。制作した渦見自身もデビュー作品は気に入っていた。音楽を聴きながら本日はアニメ現場。
ある収録スタジオに向かっていた。
大体20分前にはいつも現場に到着している渦見だが前に歩いている男性はどこか知っている雰囲気があった。その男性が収録スタジオのビルに入っていくのが見えた。渦見は急いで走りその男性の隣に行くと話しかけた。
「西崎さんおはざいます。」
渦見は嬉しそうに声をかけた。
「渦見おはよう。今日現場一緒だったけ」
渦見より少し年上の西崎は事務所の先輩になる。渦見がデビューからお世話になっているよくしてくれる先輩の1人だ。
「はい。一緒っすよ。昨日連絡したじゃないっすか」
西崎は無表情になり渦見に応える。
「あぁー昨日脳内器具のメンテナンスしてて覚えてないわ」
渦見は西崎の言葉に少し残念そうにする。
「そうすっか…大変なんですね。器具つけている人は…」
肩を落とす渦見に西崎はすかさず、ある疑問を聞き返す
「お前はつけねーの?器具つけてると便利だぞ、色々自由に動かせるし、電気やIHやエアコンやテレビは目で合図したらつけられる。こんな便利な物はねぇーよ。」
西崎の後頭窩には小さい機械がつけられていた。脳内器具をつけている一般人はたくさんいる。感情に左右されて自分らしい行動ができず悩んでいる人や病気で子供を失い喪失感を感じて日常生活できない人などつけている理由は様々だ。
西崎が言ったように便利なのも渦見は理解できる。
…わざわざ手や口を使わなくていいしネガティブな感情も抑えられベーシックインカムの額も脳を管理すれば、金額はさほど変動しない。こんな楽なものないよな…
西崎の言い分も理解できるだが渦見はなんとなく機械で強制される事にあまりいい感覚にはなれず今日まで脳内器具をつけない選択をしている。
渦見は西崎に聞き返す。
「それつけたら怒りや悲しみや喪失感や憎しみや憎悪を感じたら微力の電磁波が出るんっすよね?西崎さんそういう感情を演じる役きたらどうするんすか?」
西崎は神妙な面持ちで渦見の質問に答える
「渦見……そんな役は事前に断るだろう。憎悪や怒りや憎しみは健康に悪いしベーシックインカムの額下がるだろ。何より他にできる奴に任せるわ。俺の仕事じゃねーし」
西崎の言葉に渦見は落胆する。以前の西崎には考えられない言葉に聞こえる。
「そうっすか……」
…それでほんとに声優って言えるのか?西崎さんは幸せなのか…
西崎はそんな渦見を見て背中をバシっと叩いた。渦見はいきなり叩かれ驚いた表情を西崎に見せた。
叩いた力が強かったのか背中がジンジンする。思わず西崎に文句を言う。
「なんすかっ…いきなり…」
西崎は渦見に近づき少し声のボリュームを落としながらコソコソと話かけた。
「お前最近メンタル崩してるんだって話聞いたぞ」
渦見は一瞬嫌な顔をしたがすぐに笑顔を引き出した。手を左右に動かし内心冗談ぽく渦見が反論する。
「いや〜そんな事ないっすよ。西崎さんの気のせいじゃないんすか」
西崎はニヤっとしながら周りを見渡し、誰もいないことを確認したのかまた小声で渦見に話しかける。
「隠したって無駄だ。噂になってるぞ。お、ま、え。」
その言葉を聞いた瞬間、渦見の表情が青ざめに渦見の気分が暗くなる。目を丸くしながら西崎を見た。西崎の表情はまるで全てを知ってるような口ぶりに渦見は動悸が走る。西崎は渦見に忠告するように言葉をかける。
「女に当たっても何も変わらねーよ。」
渦見は何を言われているのか瞬時にわかったが顔に出さないように西崎にこやかに応えた。
「何言ってるんすか〜俺そんな事しませんよ。誰かと間違えてません?」
西崎は渦見を察し、腰に手を当てると呆れながら話しかけた。
「お前隠すの下手だな。まぁいいや。無駄に欲に悩むくらいなら脳内器具つけてもいいんだぞ。いつまでも自分の頭で悩むのがいいか何も考えられずただ快適な時間を過ごすか。それはお前次第だな。」
西崎の発言に渦見はなぜか黙る。
…なんだよそれっ…
西崎はまた渦見の背中をバシっと叩くと笑顔で話しかける。
「アフレコ楽しんでやろうぜ。な!」
西崎は収録ブースのドアを開け挨拶をして部屋の中に入る。
「おはようございます」
渦見は西崎に叩かれた背中が痛かったのか背中に手を当てながら渦見も続いて挨拶し中に入った。先ほどの西崎の発言に渦見は内心イラっとしていた。
…わざわざアフレコ前にプライベートなこと言わなくていいだろう。ああもういいや……
渦見はなぜか今ふと昔の西崎のことを思い出していた。
西崎さんには面倒見がよく親身になって話を聞いてくれる大好きな先輩だった。仕事が一緒になると居酒屋に連れて行ってもらい夜中まで話に付き合ってもらったり、別の日には俺に麻雀を教えてくれたりととにかく明るく優しい人だった。何か仕事で嫌な事があると反骨精神で仕事を必死に頑張ろうとする人だった。ただ、数十年前から世間で脳内器具と言われる感情抑制装置が流行っており、それを脳に埋め込む事で人は悩まなくなるとメディアで話題になっていた。
ある日、事務所でバッタリ会った西崎さんは脳内器具をつけた事をなぜか俺に報告してきた。その時の西崎さんは満面の笑みで嬉しそうに「もうこれで何も悩まなく、落ち込まなくて済む」と俺に語っていた。
━━━━━正直、俺は理解ができなかった━━━━━━
その日から西崎さんは少しずつ変わっていった。今まで優しく接してくれた西崎さんとは別人のように飲みに行く頻度も少しずつなくなっていった。以前のように夜中になるまで後輩の話に付き合い時に涙し熱い言葉をかける先輩は俺の現実にはいなくなっていた。脳内器具をつけると感情がだんだん乏しくなる。それは西崎さんにも顕著に現れていた。西崎さんの同期であった声優仲間が亡くなった時、『周りがなぜ泣いて悲しんでいるのか俺には理解できない。死んで楽になれるじゃんかっ!』そう言ってその場を凍りつかせた。西崎さん自身も感情がだんだん理解できなくなっていると俺に話していた。
その出来事以降、西崎さんは以前の西崎さんでは完全になくなっていた。
脳内器具を取り入れた西崎さんは身体は健康的になり感情自体があまり感じられず嫌なことは記憶に残らないとよく言っていた。西崎さんの話を聞く限り以前の自分より今の自分の方が毎日楽しいと周囲に漏らしている。
…でもっ…俺は器具を入れる前の人間らしい西崎さんの方が俺は好きだったんだよっ…
渦見はそんなことをふと頭の中で振り返っていた。台本を確認している西崎をチラッと見る。
…今の西崎さんとはなんだか距離を感じる…
渦見は西崎の隣に座るとタブレットで台本を出す。
スタッフの方が声をかける
「リハ始めます〜」
これから収録が始まると思うと渦見はしっかりと背筋を伸ばし台本と向き合う
…気合い入れて収録するか…
収録が着々と進み、4時間があっという間に過ぎた。
この現場での収録が終わるとホッとした渦見は胸を抑えた。
…収録が終わるとなぜか毎回どっと疲れて汗が止まらない…
前日の夜中からチェックをし緊張が抜けたためだろうか?渦見はあまり自分の体調を気にせず、各スタッフさんに挨拶をしビルから外に出た。
渦見は歩きながら次の予定をチェックする。
「確か…今日は午後からオフになっていたな」
一週間前に弊社のマネージャーに予防医療に行ってくれっ!とせがまれなぜか流れで行く事になった。
それは世間で知られていない”水流士”といわれる水の予防医療だとマネージャーに言われたがあまりピンと来なかった。話を聞いただけでも胡散臭さが増した渦見は宗教法人か何かかと思いネットで調べてもエラーになり、水流士については一切出てこなかった。不自然に感じた渦見だが信用しているマネージャーがわざわざ予約してくれた場所だ。
…変なところではないはず…多分
少し不安に駆られながら指定された道を歩く、歩きながらふと渦見は考え事をする。
……俺、至って健康なんだけどな。結構普通だしメンタルも問題ないと思ってるし、あと女にも困ってねぇーし……
そんなことを思っているとコンシェルジュがいきなりその場に止まり声をかけた。
「目的地につきました。こちらです。」
渦見はあたりを見渡し恐る恐る小綺麗なビルの中に入った。すると一面に庭園が広がっているのが見える。
花や林やハーブがあり、他の施設よりも緑が多く感じられる。
…都会だよな、ここ。森かなんかかよ。よく育てられんな……
渦見はまっすぐ歩くとエレベーターが見えた。中に乗り込むと2階のボタンを押す。2階にエレベーターが到着すると同時にオフィスらしきドアが開いた。
パッと渦見は顔を見ると少し時が止まったように思えた。
明るく人当たりがいい童顔の女性に釘付けになる。そして何より触ったら柔らかな体型。渦見は一瞬見て自分の好みのタイプだと判断した。
女性が渦見に話しかける。
「初めまして。渦見さんですね。助手の龍後璻です。お待ちしておりました。本日はよろしくお願いします。」
渦見はハッと我に返ると頭を下げた。
「あっ……う、う渦見辰彌です。本日はよろしく。」
璻はオフィスを振り返ると渦見に話しかける。
「あの渦見さん、ちょっと待ってくださいね。ちょっと藤宮さん!渦見さんいらっしゃってますよ!」
後ろから何やら男性がいるような予感がした。
「はい。すぐそっち行きますんで。」
渦見は一瞬で不機嫌になる
…チッ…今日、男いるのかよ…
璻は藤宮に呆れながら言葉をこぼす
「もう……」
その場で立ち尽くしている渦見と目が合うと璻はニコッと笑った。
「すみません。バタバタしていて。どうぞ。中に入って頂けますか?」
璻は笑顔で渦見に対応すると渦見は少し恥ずかしそうに下を向き何も言わず中に入った。璻はオフィスに入った渦見を客間のソファへ案内する。
「こちらのソファにお掛けお待ちください」
渦見は璻に返事をする。
「はあ…」
歩きながら目の前のソファに座るとカバンを下ろし、なぜかくつろぐように足を広げた。璻は内心なんなのこいつと思いながらそれでも渦見の接客をする。
「渦見さん弊社ではハーブティーまた白湯などの飲み物を出しております。何か飲まれますか?」
渦見は急にふんぞり返り高圧的な物いいで話始める。
「ハーブティー以外だと何かないのか。コーラとかあると最高なんですけど冷たいやつとかありません?」
渦見の態度に璻は呆れながら応える。
「申し訳ありませんが弊社にはご用意がありません」
璻は一応頭を下げたが、渦見はフッと鼻で笑うと返答をする
「はあ…予防医療なのに売れてる俺の好きな飲み物くらい把握してもらわないと困りますよ。えぇじゃあーオリジナルブレンドでお願いします〜」
渦見に対して文句が出そうになった璻は自分を抑えながら考えた。
…売れてる声優だろうがバンドマンだろが好きな飲み物なんて把握してるわけないじゃん。態度悪っ……
隣のドアを開けてやっと藤宮がこちらに戻ってきた。
「璻さん、すみません。遅くなりました。」
藤宮は渦見が座っているソファまで小走りで向かう
「渦見辰彌さんですか?お待たせしました。本日担当します。藤宮泉と申します。よろしくお願いします。」
藤宮は頭を下げて挨拶をすると渦見はソファから一応立ち上がり藤宮に一礼をする。
「こちらこそ。よろしく。」
渦見はにこやかに対応しながら心の中でなぜか藤宮に対して苛立っていた。
…コイツ見た瞬間に俺がイケメンだと思った事に対してもイラッとする。優男感も気に入らない。まとってる雰囲気がなんだか悲壮感が漂っていてやる気あるのかと思う……
遅れてくることにも許せなかったのか渦見は藤宮の嫌なところばかり目に入ってしまっていた。
…クソッこんなに初対面なのに気に食わないのは初めてだ…
璻は少し嬉しそうにすると藤宮に話しかけた。
「藤宮さん、少しいいでしょうか?」
「はい」と言うと璻は藤宮の袖を引っ張りキッチンまで藤宮を引っ張る。
璻は藤宮に近づき小声でボソッと話しかける。
「おお遅いですよ。なにしてたんですかっ!」
璻の必死さが伝わったのか藤宮は軽く頭を下げる
「すみません。少し資料を見てて。ハーブティーいれますね。渦見さんなんておっしゃってました?」
璻は呆れた表情をしながら藤宮の質問に答える。
「コーラがいいとか言ってましたよ。うちにはご用意がありませんと言いました。じゃあオリジナルブレンドでとか言ってきて。出せるかっっい!って渦見さんにツッコミを入れるところでしたよ。ここはコーヒー屋がなんかかと思っているんですかね。ほんっとなんなんですかっ!」
藤宮はなぜかクスッと笑った
…璻さんキレッキレのいいツッコミだな…
「いやっ。ほんっと書いた通りの方ですね。まぁ俺に任せてください。すぐハーブティーを入れるので璻さんは渦見さんの対応をお願いします。ソファに座って待ってて頂けますか?」
璻は嫌な顔を藤宮に見せるとため息を出し藤宮に真剣に訴えた。
「はあっ…わっ…わかりました。早めに来てくださいね。ああいうタイプは対応してると私疲れますからなる早で頼みます!」
本当に苦手なんだろと藤宮は察すると急に藤宮は渦見がいるソファの方向に指を指す。
藤宮は璻の肩をスッと触り、クルッと身体ごと渦見がいる方向へ向いて藤宮は璻の背中に軽く手をそえながらボソッと璻の顔の近くで話す。
「大丈夫です。早く行きますから。よろしくお願いします」
璻は藤宮の謎の行動にゾッッとした。
なぜ璻の顔の近くで話してきたのか不思議でたまらなかった。
渦見はそのシーンを一部始終見ていたのかなぜか藤宮を睨みつけていた。
璻はそのことに気づかず、トボトボと歩き璻は渦見の座るソファへ向かう。
…藤宮さんのことはとりあえずいいや。渦見さんの元に行かないと…
璻は渦見に話しかける。
「渦見さん失礼しました。」
璻は渦見と反対側のソファに座ると話をはじめる
にこやかに対応をする璻はまず会話の基本である雑談から始めることにした。
「渦見さんは本日お仕事終わらせてからいらっしゃったそうで。」
渦見はソファでまだ踏ん返っていた。なぜか足を組み璻の話に耳を傾ける
「はい。そうですね。てか、俺今日ここで何やるか聞いてないんですけど。何やるんすか?」
笑顔で璻は今日の施術に関して説明をする
…そっか、この人自身で予約してない感じなのか。そりゃそんな態度にもなる???か…
「渦見さん、カウンセリングと体内の水のメンテナンスを本日行います」
璻は丁寧に説明すると渦見はなにやらニヤニヤしながら話を聞いていた。
「ほぉーあなたが相手してくれるんですか?」
璻はその発言が気に食わなかったのか即座に言い返す。
「いえ、藤宮さんが対応いたします。私はあくまで助手なので」
渦見はめげずにまた璻に話かける。
「ちなみに龍後さんでしたっけ?」
璻は頷きながら応える。
「はい。そうですけど…」
璻はなんとなく嫌な予感がしていた。
「ご結婚されてます?それか彼氏とかいます?」
璻は首を左右に振りながら渦見の質問に応える。
「いえ、結婚していませんし。彼氏もいませんけど……」
そう璻は応えるとなぜか渦見はコンシェルジュを起動しはじめた。
「そうですか。連絡先交換しませんか?俺普通にいい奴なんで。この仕事終わったら……」
璻はその発言で自分は今まさにナンパされてる事に気がつく。
俺普通にいい奴なんで。と自分で言う意味が璻にはわからず困惑する。
渦見の発言がなんとなく頭の中に浮かんだ璻は渦見の人物像がふわっと見えてきた。
…この人は社会のルール的には自分は常識ある普通の人間だと思っているんだろうな。自分の事を普通にいい奴って言う奴に限って大概イカれてることにこの人は気づいていない。浅はかだな。…
スタスタと後ろから足音が聞こえる。璻の目には藤宮がお茶を運びながら早足で歩いてくるのが見えた。
テーブルにしゃがむと藤宮が渦見に注意をする。
「渦見さん、ウチの優秀な助手に手を出されても困ります」
藤宮は若干静かに怒っていたことに璻はなんとなく察した。カップを3つテーブルに置きポットからハーブティーをカップに注ぐ。渦見はニヤつきながら藤宮に答える
「すみません。龍後さんが素敵な方なのでつい。連絡先くらいいいかと」
渦見は起動していたコンシェルジュをポッケにしまって藤宮を見る。
藤宮は声を抗えず静かに煮え立つマグマのように渦見に諭す。
「ダメです。そういう場所ではありませんので。ナンパは別の場所でお願いします」
璻は2人を見ていた。
…この嫌悪感で仕事するのっ?今から……
璻はこの状況からカウンセリングに入るのは適切ではないと感じた。雰囲気を読むと明らかに気まずい。両者とも怒っているのがわかる。
ここは「私を巡って争わないで!」と冗談をかました方がいいかと頭の中で浮かんだが、なぜか藤宮に後で怒られそうなので、とりあえず別の話題に話を変えることにした。
「わあー藤宮さんこのハーブティーはなんですか?」
璻は棒読みになりつつ今の嫌悪感たっぷりの雰囲気から和やかになるように。璻なりにこの気まずい雰囲気を変えようと必死になったいた。
「これはジンジャーとレモングラスとシナモンとスターアニスとブラックペッパーを煮出したハーブティーです。渦見さんがコーラを飲みたいと仰ってたのでコーラに近いハーブティーにしました」
璻はテーブルに置いてある淹れたてのハーブティーを渦見に渡すと笑顔で話かけた
「ほら渦見さんも。藤宮さんが入れたハーブティー美味しいんですよ!是非飲んで見てください!」
渦見はハーブティーを璻から手渡しでもらうと鼻を近づけ香りを楽しんだ。
「はぁ…確かに香りはいいですね」
璻は頷きながら話かける。
「ですよね。是非召し上がってください」
渦見は踏ん反り返るのをやめテーブルに近づき、黙ってハーブティーを口に運んだ。スパイシーな香りが鼻の奥まで広がる。
…確かに味はコーラに近い。要望した通りだ…
いつもは市販のコーラーしか飲まない渦見だがそれに近い味に調整してくれていることはわかった。味に感動したのか渦見はお礼を言うことにした。こんなわがままを言ったのにも関わらずきちんと出してくれたことに驚きを感じたからだ。
「美味しいです。ありがとうございます。」
藤宮はそれを見て少し落ち着いたのかにこやかに答える
「お口にあってよかったです。」
藤宮は璻にもハーブティーを進める
「璻さんのもありますからどうぞ」
璻は藤宮からハーブティーを受け取った。
「ありがとうございます。ジンジャーの香りが鼻から抜けて温まりますね」
璻は暖かいハーブティーを一口飲む。スパイシーな香りが身体中を巡って温まるのがわかった。藤宮は璻を見ながら少し嬉しそうな顔をした。
「スパイシーなハーブティーもたまには良いかと」
藤宮は璻の隣に座るとハーブティーを一口飲んだ。
渦見は飲み終わったカップをテーブルに置くと藤宮を見ながら疑問をぶつけた
「んで、いつカウンセリングやるんですか?」
渦見の問いかけに藤宮はカップをテーブルに置くと渦見の問いに応えた。
「では…さっそくはじめましょうか」
渦見はやれやれと感じながら頭を傾げ、藤宮の話を聞き始めた。なぜか渦見自身の心はザワザワと浮き足だっているのを感じていた。早く終わらせて帰りたい気持ちが先行し渦見の中でふと考えがよぎった。
…だりぃ。早く終わらせてさっさとセフレの所に行く…
璻は渦見がそんなことを考えているのは露知らず、渦見のなんとなくあの横柄な態度といい、女性に対しての扱い方は観点出しの時にトラウマに関連しているのかもしれないと藤宮が言っていたが、案外アタリなのかもしれないと璻は思っていた。
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・脳内器具と言われる感情抑制装置が流行っている
脳内に機械を入れることによって感情抑制できる機械のこと。微量の電磁波を海馬近くで流すことにより感情を自分でコントロールできる画期的な機械。この器具を入れた人はコンシェルジュや電気や家電を自分の思った瞬間に動かせる。また食欲や性欲や睡眠なども電磁波を流すことによってコントロールできる。また悲しみや苦しみや喪失感を感じるとコントロールしてくれる。なので親しい人が亡くなっても悲しさや失望感などが襲ってきても電磁波を流すのでそんな感情は感じられなくなってきている。感情のコントロールがしやすく国民の半分くらいは脳内器具をつけている。ちなみに一回入れたら取り出すのは不可能なのでこの小説では訴訟などが各地で起きている状況です。
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