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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- ネグレクト編 -

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第12話:自由と引き換えに得られること




璻はそんな藤宮を見つめ何か様子がおかしいことに気が付く。


皇が藤宮に「この案件はお前が1番適任だから」と言い放った時、藤宮の顔がいかにも嫌そうな顔をしていたことを思い出した。



それはさっき藤宮の説明であまりにも細かくネグレクトについて語っていたことに璻は少し違和感を感じていた。



……まるで藤宮さん自身の幼少期が体験してるような言い草に聞こえた。もしかしたら、藤宮さんはネグレクトだったのかもしれない…



そんなことが頭によぎるが個人的なことを今藤宮に聞くのは得策ではないと璻は判断し聞くのをやめた。あれこれ考えたがまず目の前にある、渦見の事に集中するときっと答えは自ずと見えてくる気がしていた。



あくまで希望的観測なのは璻自身もわかっている。思考を巡らせながら



…自分のできる事は改めてなんだろか……




そんなことを考えつつ、渦見の情報を隅から隅まで内容を確認する。

部屋の中は少しシーンとして静まりかえっていた。



璻はハッと何かを思いつく。



…そういえば育てていた渦見の父は経済的に貧困だったんだろうか?それは詳しく書いてあるのだろうか?…


璻は藤宮に話しかける。


「藤宮さん、渦見さんの父親に関して何か書いていませんか?」


藤宮は映像に記載してある資料を探す。


「はい。これに書いてありますよ。詳細はええっと、これですかね?読みますね」


藤宮は資料を読み始めた。


「渦見の父は祖父が頑固者で有名だった。幼少期から渦見の父に手をあげる事が頻繁にあった。渦見の父はあまり関わりを持ちたく実家に帰る事はほとんどなかった。暴落後に財産の3分の2を株に投入していたためお金はほぼ残っていなく。生活資金は底をついていた。食料が買えず物流が止まった際に渦見の母が自死、父は憔悴し切っており、数ヶ月家から出なかったがのちに始まったベーシックインカムを受け取りながら生活。2年かけてメンタルクリニックに通院し働けるまでに回復。またその後個人事業主として働くようになった。と書いてありますね」



…そんな祖父だったのか絶望的な関係…



璻は心が抉れる感覚になった。



「手をあげてたって最低ですね。この状況だとやはり貧困気味だったかもしれないですね。」



藤宮は映像をスクロールすると続きが書いてあるのを見つけまた読みはじめる。



「また渦見は子役引退後ゲノム検査やIQ検査を受ける。またIQ検査では140の秀才の持ち主で大学まで進学するがやはり演じる事を諦めきれずにバーチャル養成所に通う。養成所では声を褒められる事が多く、声優の仕事をもらうと大ヒットした。また学生時代趣味でバンドを始めたのち自身のSNSを運用仕事に繋がった。」



璻は驚いた表情をする。



渦見の普段は明るく少しお茶目な印象があった。

璻が大学時代に仲が良かった鳶那真希がファンでよく話の話題になってた。

正直、IQが高い印象には見えなかった思い出がそれも演技だったのかと璻は腑に落ちた。



…頭悪いフリしてたんだ…



「そういう流れだったんですね。渦見さんめっちゃIQ高いですね。」


藤宮はああっと言葉をこぼすと璻に会話を返す。


「高IQの方はそれなりに苦労も多いようですよ。一般常識が彼らにとって不自然に感じますからね」



…一般常識ってたまに効率悪かったりするし、その側面で考えたことはなかった…



「なるほど。その考え方はしたことなかったですね。」




璻は冷静に色々考えて藤宮に意見を言ってみる



「これやっぱり母がメンタル壊した時と自死した時、父のメンタルが安定しなかった時期が今の不調に関係している気がしませんか?」



藤宮は頷きながら応える。


「その確率は高いですね。あと渦見さん自身の仕事の量も考えなければいけませんね。」



璻は頷きながら応えた。


…確かに本人がオーバーワークしている可能性もある。今の渦見さんの忙しさも推測内に考えないといけない…


そこは気が付かなかったと璻はシュンとし反省した。


「現在の仕事はそうですね。完全に見落としていました。」


藤宮は少し肩を落とすと真剣な表情で璻に話しかけた。



「芸能人やインフルエンサー、俳優、声優、バーチャルタレント、Vライバーの方は心を閉じている方が多くいますね。現実問題、本音を言うとスポンサーや提携企業から契約を切られますし、あとは声優さんでいうと守秘義務が多いですね。アニメのクールごとに2億〜3億の制作費がかかるので違反した場合は最悪、賠償問題になります。出演作品の前に契約書も書いたり、もちろん企業側は採用する際に事前に身元調査入れたりしますが本人が契約期間中にうっかり問題発言をした場合莫大な違約金対象になります。休みの自由度が少なく発言も限られあらゆるリスクが高いので仕事なので今の時代あまりやる方は少なくなってますね。健康状態も悪くないやすいし心も病む方多く見受けられるので。」




璻は話を聞きながら藤宮の話に疑問を持った。



…なぜこの人はこんなに詳しいのだろう?おかしいな皇さんと話してる時はほとんど知識なかった感じなのに…




「藤宮さん急に詳しいですね。どうしたんですか」


藤宮は自慢げに璻に応えた。


「さっき調べましたよ。抜かりないです」



グッドサインをしながら藤宮はなぜか爽やかな笑顔をこちらに向けていた。

璻は思わず言葉をこぼす。



「いつの間に…」



…うっ…そしてその爽やかな笑顔は何が言いたいんだ。仕事が早いと言いたいのか…




でも確かに藤宮の言ってることはもっともだと璻も感じる。


…人を雇うとリスクが高い。特にメディアで輝かしい活躍してる人は常にみんなの目にさらされている。プライベートもなくなる…



長期間でスケジュールも抑えられているし、体調壊したりまた頻繁に休むと呼ばれなくなったり仕事がなくなる。その仕事を想像した時、璻にはとてもプレッシャーが強くリスクも高いのでとても自分では務まらないことが容易にわかる。



それに耐えらえる強固なメンタル力と強い承認欲求がある人のみできる仕事。


璻は藤宮に話しかける。


「そうですね。藤宮さんがおっしゃったように。今は随分技術が発展して全部機械が読み上げてバーチャル的になってますし。人もいらないですし。企業側もリスクもないですしね」



他に気になる部分はないかと璻は思考を巡らせる



「あとは…そうですね。個人的に私は女性の扱いについても気になりますね。母親がトラウマなら女性の扱い方やトラウマが必ず付き纏う気がします。あと軽い鬱との事でしたね。ゲノムではセロトニンの生成がすくないので単純にタンパク質が足りないのも原因じゃないかと…」



藤宮は璻の意見を聞きながら女性ならではの視点に目を丸くした。



「女性の扱いは確かに盲点でしたね。渦見さんにタンパク質が足りないのもありますが個人的な見解ですがマグネシウムが不足している可能性もあります」



想像もしなかった言葉に璻は思わず藤宮に聞き返した。


「マグネシウムですか?」

 

藤宮は頷きながら応える。


「はい。マグネシウムが不足するとセロトニンは作られないので」

 


「初めて知りました。セロトニンが作られないとメンタルが落ち込むのが早いですし。結局食事も大事になりますよね」


藤宮は璻の話に少し補足するように話を返す。



 「これ知らない人は結構多いですね。マグネシウムはストレスを感じると体外に尿として排出されますので少なくなりやすいです。少なくなった事で気づかない間にメンタルや体調崩す人は多いですね」

 

藤宮の話はいつも勉強になるそう思いながら藤宮に聞き返す。

 

「それ、覚えておきます。あの藤宮さんの視点から追加するなど点ありますか?」




 藤宮は少し考える。


 

 「そうですね。あとは放置型ネグレクトで育った子供は過干渉が愛情だと感じたりします。それは先ほど言った通りですが、特定の相手に過度にお世話をしてないか?必要以上に構ってちゃんになっていないのか?を見るべきポイントですね」



璻はメモをとりながら、内容をまとめていく。


「なるほど。藤宮さんその他に何かありますか?」


藤宮は資料を見ながら考えていた。


…何か…見落として…


「そうですね。渦見さんから見て父親はどういう存在だったかも気になります。幼少期に殴られていないかとかも気になります。あああ!!!」



璻はビクッとした。


急に声をあげた藤宮に驚き思わず声をかける



「びっくりしました。藤宮さんなにか忘れてましたか?」




「すみません。璻さん大事なことを話すの忘れてました。」



藤宮の態度からするに明らかに大事なことなんだろうと璻は一瞬で理解した。

藤宮が声をあげるくらいに重要な視点に璻は興味津々で前のめりになりながら藤宮に話をする。



「なんですか!気になります!もしかしてネグレクト関連ですか?」


璻の目に藤宮は鬱陶しそうにした。


…うっまた璻さんのその目だ。非常にワクワクします‼︎と言わんばかり好奇心を感じる…


藤宮はその璻の目に見つめられるのは少し苦手に感じていた。


…距離が近い、何よりびっくりする…



璻の圧に耐えられず、少し後ろに身体をに引く。


「いや、だからそんな前のめりにならなくていいですよ。」


藤宮は少し顔を赤らめると璻は我に返り冷静に考え前のめりやめ、頭を下げた。



「すみません。思わず、つい好奇心で。」


藤宮はため息を出す。


…言うことを聞かない犬のように感じる…


「と、とりあえず座ってください。」


璻は頷くと少し反省しながら返事をする。


「はい」



大人しく座った璻は藤宮の話に耳を傾ける。


「はぁ。あのですね。璻さん。話に戻りますよ。重度のネグレクトは幼少期の記憶がかなりの確率で飛びます。」



…記憶が飛ぶ?どういうこと…


璻は頭にはてなを浮かべた。



「記憶が飛ぶってどういうことですか?なくなるんですか?」


璻がわかっていない様子に見えた藤宮は説明を始める。


「要は記憶に強く蓋をするんです。解離性障害とも言いますが心的外傷やストレスによって引き起こされる記憶障害のことです。自分にとって重要な情報が思い出せなくなったり、記憶に空白期間が生じたりします。幼少期の気持ちをなかったことにして生きるんですよ」


璻は思わず考える。

相当記憶がなくなるくらいのトラウマだったんだろうと思うと胸がズキズキ痛み始めた。


「記憶障害ですか…相当トラウマが強いんですねっ…」


藤宮は淡々と話し始める。


「はい。そして厄介なことに記憶に蓋をしたことすら本人も覚えてないんですよこれが。大人になった時に嫌なことはなかったことにする。見なかったことにするなど習慣になっていると、とても大変です」



「そんな器用なことできるんですか?なんていい能力」




藤宮はこの言葉を聞いて嫌悪感を抱いた。冷静に璻に指摘をする。



「それは褒めているんですか?貶しているんですかね?この問題は本人にとっては無くしたいほど痛々しい記憶なんですよ」



璻は手を左右に振りながら反論する。



「貶しているつもりはないですよ!なんというかそういう経験が乏しいのでどんな感じなのか想像できないだけです」


藤宮は真剣に璻に怒っていた。


「軽率ですよ。渦見さんの前ではその発言は謹んでくださいね。璻さんの好奇心はたまに人の心をえぐるんで」



「すみません。以後気をつけます」


璻は明らかに落ち込んでいた。



…そんなつもりじゃなかったのに。本当発言には気をつけよう…



藤宮は怒ったことで疲れきっていたのかため息を吐いた。


「璻さんじゃあ観点をまとめてもらえますか?」


璻は明らかに言われたことが響いてるのかシュンとしながら藤宮の会話に応える。

 

「承知しました。映像に直接書いても大丈夫ですか?」


藤宮は頷きながら応える。


「はい。大丈夫ですよ。よろしくお願いします。」



藤宮はカップを持ってハーブティーをゆっくり飲んだ。


璻はペンデバイスを持ってホログラムに要点を書き込む




〜渦見さんのカウンセリング要点〜



 ①幼少期の記憶はあるか?時々抜けてないか?


 ②子役を急に引退した時はどう思ったのか?


 ③幼い頃の母親事をどう見ていたのか?


 ④父親の接し方や育て方はどうだったか?


 ⑤女性をどういう風に見ているのかどう扱っているのか?


 ⑥食生活はどういう物を食べているか?


 ⑦親しい人に過度に世話好きになっていないか?また構ってちゃんになってないか?


 ⑧物や生き物に執着していないか?


 ⑨今の仕事について渦見さん自体がどう思っているのか?



 璻はスラスラスラスラと映像に書くと藤宮に確認を求めた。



「とりあえずこれでどうでしょう?」


藤宮は璻の記載した内容を確認する。


「そうですね。これで大丈夫です。ありがとうございます。では擦り合わせと意見出しはこのくらいにしてお昼休憩にしましょう」



璻は少し嬉しそうな表情を浮かべる。


「お昼!はい!」


璻の表情が明らかに変わったのが藤宮にも伝わる。


璻は「お昼〜お昼〜」と言いながら歌っていた。


藤宮はそんな璻を見ながら思った。


…注意してあんなにシュンとなっていたのにお昼でこんなに表情が変わるのか。食い意地が張っているのか…



「璻さん、片付けはいいんでお昼食べてきてください」



璻はなぜか藤宮の優しさを感じた。



「いいんですか?片付けなくて」


藤宮はソファから立ち上がる


「はい。俺やっとくんで。お昼食べ終わったら内容確認して渦見さんを待ちましょう」



藤宮は少し呆れた様子で璻を見るとそそくさとカップを持ちキッチンに向かった。



「承知しました。お昼いただきます」


にこやかに藤宮に挨拶をする。

お昼が食べれることに幸せを感じ荷物を持ってオフィスを後にした。





。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


・IQ検査


この世界ではベーシックインカムを受ける際にIQ検査を受けます。高IQ130以上は世界政府内でも特別待遇になり赤い封筒が届きます。彼らが世界を動かす役割をするので重要視されています。


・メディア関係の提携契約


声優や俳優やVライバーの方は必ず宣伝動画や広告を作る際にスポンサー契約というものをします。出演する際に守秘義務の契約書を書き、出演契約書にもサインします。事前に企業側は身元調査を入れたりすることが多いです。

この時代、この世界では莫大なお金と引き換えに発言に制限がかかったり自由がなくなったりすることを良しとしないためこの職業を目指す人は少なくなります。


・セロトニン


脳内の神経伝達物質で、精神状態の安定や自律神経の調節に重要な役割を果たしています。このホルモンは脳内で作られ幸福感を得られるホルモンです。主にタンパク質やビタミンDやマグネシウムを食事でとることによって心が安定します。この時代ではゲノム検査で体内に作られやすいか作られにくいかが判明されます。本人の能力を知るためにとても重要になります。


・解離性障害


ストレスや心的外傷によって、意識や記憶、知覚などの感覚が分断されてしまう精神障害。幼少期に親に殴られたりひどい扱いをされた人は一部分の記憶だけ抜け落ちたりします。ベーシックインカムのもらう額にも関係するため日常生活でも支障をきたします。

これを治すためのクリニックや道具はこの時代に開発され売られている。


。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。




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