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水流士-因子を解く-  作者: 小野里
- 新人研修編 -環境業務-

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第105話:児孫自ずから児孫の計あり

 


 藤宮と璻が本殿の奥、土砂崩れがあった場所に着くと璻に声をかけた。


「さて探しますか…どの辺で骨壷を見つけました?」


 藤宮の問いかけに璻は藤宮の足元を指を指し応える。


「この辺ですね。藤宮さんの足元にある大きな黒い石と灰色の石の間に埋まってました」


 藤宮は璻の示した場所をじっと見ると状況を把握し始めた。


 藤宮の足元には至る所に大きな黒い石、灰色の石が散らばっている。石は妙に凹凸がなく片面が綺麗だ。まるで人工的に削られているように見える。


 藤宮の足元に落ちていた大きい黒い石を拾うとじっと見つめ璻に問いかける。


「これ?墓石じゃないですかね?」


 予想外の藤宮の言葉に璻は思わず返事を返した。


「は……墓石ですか?」


 藤宮は頷くと淡々と話を始める。


「はい…ここ不自然に土が乾いてますし、墓石は水を吸いますからね?」


 璻は藤宮の問いかけに驚きながら応える


「えっ?!墓石って水吸うんですか?」


 藤宮は不思議そうな顔をすると璻の問いかけに応える


「璻さんこの話知ってるとばかり思ってました。結構有名な話ですよ?墓石がある場所は乾いた地面が多いです。それは空気中の水分を墓石が吸っている場合があります。と言っても…微々たるもんですがね」


 璻は藤宮の言葉を聞き妙に腑に落ちた自分がいた。


 ……そうか、この凹凸もない不自然な石たちは墓石だったんだ。というか骨壷が出てきた時点でなんで私気が付かなかったんだ。言われてみれば墓石がある場所って基本的に土が乾いている印象がある。この場所も土が異様に乾いているのは墓石自体が原因だったのか?……


 藤宮の問いかけに璻は応える


「この場所異様に土が乾いてますよね?これって単に墓石が原因なんでしょうか…砂漠の土に似ているような」


 藤宮はああというと璻の問いかけに応えた。


「人間が人工的に磨いた石は光を反射しますからね。墓石が多い場所だと水は蒸発しやすいです。墓石一つだと影響はないんですが密集していると流石に……影響は出ます。とはいってもここを見る限り……」


 藤宮は唐突に周りをキョロキョロし始めると璻の問いに応える


「この場所、墓石がたくさん立っていた形跡はないように思えます。なぜこんなに土が乾いているのかまだわかりませんが…まぁ今の時代、こんなところにたくさん墓建てたい人なんていないでしょうね……物を所有するだけで税金かかりますし」


 藤宮の言葉に璻は深く頷くと言葉を返した。


「今の時代、立派な墓立てる人もいないですしね」


 藤宮はその場にしゃがみ込むと手で土を掘り始め骨壷を探し始めた。


「そうですね。今や生きてる人間より死んだ人間の数が多いですからね?環境破壊だって声もありますし。墓も生きてる人間よりあるのは今や皮肉ですかね……それに墓石の種類によって水の吸収率は変わります。外国産の墓石は特に水の吸収率が高い。まぁ…これも仕方ないですよ。バブルまでは墓石産業はある程度儲かっていましたし」


 藤宮の言葉に璻は衝撃を受けた。

 墓石でさえも拝金主義ビジネスの餌食になっていたとは思いもしなかった。

 璻は思わず藤宮に問いかけた。


「えっ…まさか墓石もですか?」


 藤宮は璻を見て少しニヤッとすると笑顔で説明を始めた。


「いや…全てがとは言わないですよ?代々継いでいる墓は違うと思います。けど宗教にかこつけた奴らもいましたからね。宗教通りにしないと末代まで祟る〜とかなんとかで。本人の主義主張無視で吹っ掛けた話なんてザラにありますよ。なので、死んだらいくらかかるかなんて気にしながら生きてきた人は結構いましたね」


 璻はその話を聞き唖然とする


 ……亡くなってもなお、お金儲けか……


 藤宮がその場を掘り進めると大きな黒い石を発見した。藤宮は石を傍に退かすと話を続ける。


「骨壷割れて骨が散らばってないといいんですが…あっ璻さんは別の場所をお願いしますね?あと、大きな墓石一つ選んで頂けますか?あとで八剱くんに見せましょう。一様彼の見解を聞きたいので」


 璻はなぜ八剱に見せるのか理解が出来なかった。

 藤宮に理由を問いかける。


「承知しました。けど…八剱さんに何を聞くんです?」


 藤宮は手で土を掘りながら璻の疑問に応える。


「八剱くんに石の中にある水分子を見てもらうことと……彼は元隠者なのでこれらの石がもし墓石だった場合、撥水加工をしている事になります。墓石は、石の保護剤にある化学合成物質が使われている事が多いです。八剱くんは以前、隠者で業務を積み重ねてきたので当然、石屋の対処はしてきたはずです」



 璻は墓石と石屋がどのように共通するのか理解できなかった。


 ……うん?えっ?今石屋って言った?どこら辺が接点があったんだ??……



 璻は藤宮に質問をする


「いや、この話石屋と関係あるんですか?」


 藤宮は璻の質問に応える


「はい。石屋に属する方々の中に合成化学物質を研究して全世界に販売し金儲けした連中がいるんですよ。墓石の保護剤の化学物質の正体は高濃度のフッ素化合物です」



 璻は藤宮の発言に驚くと少し黙り考えていた。沸々と璻の中で怒りが込み上げてくる。



 今の時代2050年は高濃度の合成化学物質の使用や製造は世界で禁止されている。特に工場の現場に使われる高濃度フッ素化合物は水に溶け込むと人体に多大な影響が出ると世間で話題になり高濃度フッ素化合物は使用、製造、輸入は禁止された。


 ……高濃度フッ素化合物自体を分解するのにかなりの時間かかったのに。まだ存在しているなんて……


 璻は藤宮に問いかけた。


「高濃度のフッ素化合物って……毒じゃないですか!墓石にそんな合成化学物質必要ないですよ」


 藤宮は周りを探しながら璻の質問に応えた。



「昔は墓石が雨や自然災害で割れる事や欠ける事が多かったんですよ。バブル時代に汚い墓石に入るより、自分の墓は綺麗な墓石に入りたいという思想が流行りましてね。撥水加工したのが最初ですよ。墓石に高濃度フッ素化合物をつけ石に浸透させて表面を綺麗にし墓石を長持ちさせた。しかし、高濃度フッ素化合物は数十年で落ちますからね?雨で高濃度フッ素化合物が落ち土に吸収されるとまず水は蒸発、それが雨雲になり雨が降り薄まったフッ素化合物入りの雨が降る。最悪、自然と地下水に水が溜まり蛇口を捻るだけで日常的にフッ素化合物が身体に取り込まれる。そのサイクルですよ。そこまで深く考えていない人が多かったんでしょうね。自分たちの都合しか考えなかったから今の生きている子孫たちは被害を受けています。マジでいい迷惑ですよ」



 藤宮の言葉は淡々としていた。なんとなく説明している表情からするに怒っているようにも見えていた。

 

璻は呆れながら藤宮に言葉を返した。


「合成化学物質を売っている奴らも石屋なんですね。もう最悪です」


 藤宮は手を止めて璻をじっと見ると説明を始めた。



「もっと最悪な話ならまだありますよ。高濃度のフッ素化合物は地面に溶け込むと土をコーティングして水をはじくんですよ。さて…クイズです。それが積み重なり、地層まで高濃度のフッ素化合物が届いた時どうなるでしょうか?」


 藤宮の唐突なクイズに璻はうーんと悩みながら応えた


「ううん……高濃度のフッ素化合物は土に吸収されると水を弾くんですよね?なら、水を吸えない土が多いと土は固まらないんじゃないですか?」


 藤宮は璻を見つめてニヤッと笑うとをまた地面をよく見ながら骨壷を探し始める。


「璻さん大当たり。では次の質問です。高濃度のフッ素化合物は土に吸収された場合、地層にまで高濃度のフッ素化合物が届いたとしましょう。どうなると思いますか?」


 璻は藤宮の言葉にハッとさせられる。


 ……まさか、そんなわけないでしょ……


 嫌な予感が頭をよぎる。


 そんなところまで深く考えた事がなかった璻は動揺しながら藤宮に言葉を返した


「どっ……土砂崩れを起こします」


 藤宮は周りの土を掘りながら璻の問いかけに応えた。



「はい〜当たりです。日本は地震大国ですからね?地震起きた時に高濃度のフッ素化合物が地層まで入り込んでいたら、土砂崩れが起き被害は増える。最悪亡くなる人も増えるって話ですよ。拝金主義時代ってそういう時代でしたしね。あっ……」



 藤宮が土を掘ると白い陶器が出てきた。骨壷だろうか?半分割れているのが見える。藤宮は怪我をしないようにゆっくりと周りを掘ると藤宮は少し残念そうな声で応えた。


「ああーこれ割れてますね。こりゃ怪我しそうですね」


 藤宮はそういうと急に立ち上がり後ろを振り向くと獅子子を呼び始めた。


「獅子子さん〜軍手ありますか?」


 呼ばれた獅子子は藤宮の元へ向かった。

 獅子子は藤宮に問いかける。


「泉今呼んだ?」


 藤宮は獅子子に現状を伝える事にした。


「はい。骨壷割れているみたいなんで軍手を貸して頂けますか?これ触ったら普通に怪我します」


 獅子子は頷くと藤宮の問いかけに応える。


「わかった。この上が隠者が作業している場所になるから、貸してくれるかもしれないわ。ちょっくら交渉してみるわ」


 藤宮は頷くと璻を見て指示を出した。


「承知しました。では獅子子さんが戻って来るまでこの場所を探すのはやめましょうか…他の場所を調査しつつ、原因を探しますか?」


 璻は藤宮に対して静かに頷くと獅子子は後ろを振り返り八剱に声をかける


「八剱!」


 獅子子は八剱を呼ぶと岩からひょこっと顔を出し獅子子に返事をする


「はいっ!なんすか?」


 獅子子は八剱に指示を出した。


「ちょっくら、この上にある隠者が作業している場所まで道具借りてくるから、何か見つけたら泉に報告しな」


 八剱は頷くと獅子子に返事を返した。


「わかりました〜いってらっしゃいませ」


 獅子子は藤宮に声をかけた。


「泉あとよろしく。すぐ帰ってくるわ」


 獅子子は藤宮に手を降ると藤宮は軽く頭を下げる


「はい。お願いします」


 獅子子はそういうとすぐに階段を駆け上り去っていった。

 

。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。


・バブルまでは墓石産業はある程度儲かっていた

バブルの時代は家を建てる高級車に乗るなど物を所有することが流行りましたが、墓石も同じ。大きい墓石で背が高く大きな石の方が金持ち度合いを図れるという謎の思想が流行っていました。古墳と同じ考え方ですが、2050年になったこの時代では子孫から見れば墓の管理費用が高くつくので負債だと判断する人が多く墓を手放すことが普通になっていました。


・合成化学物質を研究して全世界に販売し金儲けした連中

石屋の中でも合成化学物質を深く研究した人たちがいました。人間に害が出ること、自然に害があることを知っておきながら売りつけた方々は2050年の石屋内では暗殺対象となっています。ちなみに警察に逮捕されるという演出から獄中に入ったあとになぜか謎の死を遂げています。


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。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。

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