第10話:未来から伝える過去の出来事
オフィスの出入り口で立ち止まった藤宮は璻に話しかけた。
「一旦休憩にしましょう。ソファに座ってもらっててもらえます?あとテーブルの下にしまってある六角形のクリスタルを出してくれますか?」
璻は頷くと返答をする
「はい。承知しました」
ソファまで歩くと璻はテーブルの下にしまってあったクリスタルをテーブルの上に出す。
一仕事終えた璻は先にソファに座り藤宮の美味しいハーブティーを待つ事にした
その頃の藤宮はキッチンに立ちハーブの瓶を探していた。 棚にはずらっとハーブの瓶が並んでいる。
ローズヒップと書いてある瓶とハイビスカスと書いてある瓶を見ると空っぽになっていることに今気づいた。
いつもローズヒップとハイビスカスは庭園に育ててあるものを使っている。ローズヒップとハイビスカスの旬は秋。秋頃に収穫する予定でいる。だがこの時期だ。収穫にはまだだいぶ早い。
…そういえば飲みっぱなしで外注するのをすっかり忘れていたな…
藤宮はキッチンの吊り戸棚を開けゴソゴソと棚の奥を探す。
…確かこの奥に確か市販のローズヒップとハイビスカスのハーブティーバックがあったはずだが…
棚の奥に手を伸ばすと市販のハーブティーバックが出てきた。
ローズヒップとハイビスカスと書いてある。パックの裏を確認すると賞味期限が書かれてあった。藤宮は表示を確認する。
「賞味期限は切れてない。大丈夫。」
しまってあったガラスポットとカップを棚から出しお茶の準備をする。
個包装になっているハーブティーパックを破きガラスポットに淹れ、ウォーターサーバーからお湯を注ぐ。蓋を閉めて数分蒸らし蓋を開けると華やかな香と少し柑橘系の香が混ざり水蒸気とともに香がふんわりと立ち込める。鮮やかな紅色がガラスポットいっぱいに広がっていくのが見えた。
ティーバッグを捨て、ガラスポットからカップにハーブティーを注ぐ。
トレーにガラスポットとカップのせると藤宮はゆっくりと璻のいるテーブルに向かう。
藤宮は璻に話しかける。
「今日はハーブ瓶が空だったのでインスタントにしました。どうぞ」
藤宮はテーブルに着くとトレーを置きガラスポットとテーブルに置きカップをゆっくり璻に渡す。
璻は嬉しそうに両手でカップをもらった。
「インスタントでも構いません。淹れるいただいている身ですし。私昨日帰る前にハーブティー淹れたじゃないですか?藤宮さんほど上手にできなかったんですよね。」
藤宮はニヤッとしながらその場をスッと立ち上がる。
なぜか誇らしそうに璻に話す。
「昨日のは普通でしたね。昨日の今日でいきなり美味しく淹れられたら俺困りますよ。これは俺の仕事ですので。」
藤宮はハーブティーを淹れることは負けたくないように璻には見えた。ハーブティーを淹れるのが上手な男性は滅多にいないように思える。藤宮は女性のような繊細さや細やかなも持ち合わせているのだろう。璻はそんな藤宮が少し羨ましく感じる。
「え〜私も美味しく淹れたいです!藤宮さんがハーブティー淹れるとなぜか美味しいんですよね。不思議」
そういうと嬉しいそうに笑う璻は子供のように小さく足を動かしながら、藤宮からもらったハーブティーをじっと見つめる。ハーブティーの鮮やかな紅色、そして華やかで華麗な香に少し柑橘系の香りが混じり合う。
璻は「頂きます」というと早速飲み始める。少しずつ口に含み飲む込む。華やかな香が口の中で広がりまるで小さな庭園にいるようなそんな気分になる。嬉しくなった璻は藤宮に対してお礼を言う。
「酸っぱくて美味しいこれです!これ!淹れてくださりありがとうございます」
嬉しそうに話すと璻を見ると藤宮も自然と笑顔になり静かに返事を返した。
「いいえ」
藤宮も璻と向かい合って話せるようにソファへ座る。テーブルに置いてある六角形のクリスタルに皇がくれた紙からコードを読み取る。ホログラムには渦見辰彌のプロフィールと依頼内容が表示された。藤宮も璻もその内容に目を通す。
藤宮はカップに手をかけゆっくりとハーブティーを飲みながら確認する。六角形のクリスタルを操作しながら璻に話しかける。
「では事前すり合わせを始めます。」
藤宮は少し気だるそなさそうな声だった。 璻は思わす「はい」と返答をすると藤宮3D映像を見ながら内容を読み上げた。
「今日の依頼主のプロフィールと依頼内容です。依頼主は渦見辰彌という生物学的には男性で30歳、誕生日は8月1日です。彼は思想のチェック対象ではないです。またゲノム検査だとセロトニンが体内で生成しにくい遺伝子の持ち主で仕事は声優とバンドをやられています。ご両親は父は健在ですね。母は……」
藤宮は一瞬声を詰まらせたが何事もなかったかのように読み始めた。
「ご本人が5歳の時に亡くなっておりますね。死因は自死ですね」
璻は言葉を失った。
「そうだったんですね。いつも明るいから幸せな家族の元に育ったんだと」
藤宮は何かを見つけると3D映像のデータを指でスワイプする。
経歴と書いてあるのが見えた。
「経歴も添えられてますね。これも目を通しますか。彼は3歳から子役で芸能活動やらインフルエンサーなど幅広く活動してますが、5歳で一旦芸能活動を引退してますね。」
璻は渦見が子役だった事は知らなかった。思わず藤宮に疑問をぶつける。
「子役ってだいぶ昔に廃止された話じゃ…」
藤宮は頷きながら3D映像の経歴をスクロールし確認する。何かを発見し指を止めた。
「そうですね。そのはずです。5歳の時の西暦は…皇の依頼書だとそこまで書いてないですね。アイツそこまで書いてくれたらいいのに。」
藤宮はふと考えがよぎった。
…あの皇がわざわざ書かないなんて珍しい何か気づいて欲しい事があるのかもな…
そんなことを思っているとなぜか皇が陰湿な表情でニヤっとしてる顔が頭の中で浮かんだ。自分が想像しといてなぜか少しイラッとした。そんな想像を頭から消し去りとりあえず藤宮は渦見が5歳の時、西暦何年になるか頭の中で計算をし始める。
「これも……確か……大体2025年くらいに引退されてますね」
璻は藤宮がなぜ年代を出さなきゃいけないのかなんとなく察した。どんな年で引退したのかも依頼主に悩みに直結する。本人を理解するには育った時代背景を捉えること。これは水流士の仕事では非常に大事なポイントになる。それは昨日の狭山の時に重要だと感じたから。藤宮の今やってることは理解できる。その時の社会的な出来事やその時の本人の立場などは今後の人生に衝撃的な影響を与える。
藤宮の言葉に璻は2025年ごろの出来事を思い出していた。
…ネットやSNSで話題になっていた今の時代の起点になった年…
藤宮が何をボソッと呟く。
「また2025年あたりですか……闇が深いですね」
カップを持つと藤宮はゆっくりとハーブティーを飲む。璻は再度3D映像に表示されているプロフィールを見ながら内容を確認する。璻は2025年ごろの出来事について藤宮に話しかける。
「確か2025年頃に放送局と芸能界全体的で性的搾取と金銭関係で問題になり、それがきっかけで芸能事務所の解体や子役の仕事の禁止になることがありましたね。特に子役の問題が深刻的だったとか」
そう思えば2025年から2027年まで問題が色々浮き彫りになっていた。最初に芸能界や子役や放送局の汚職や性的搾取が大きく問題視され民衆が何かおかしいと気づきはじめる年だった。民衆が束になって声を上げ始めると数ヶ月後に株の暴落が始まり、安泰と言われていた大手企業は次々と倒産。
民衆は経済的に困窮しはじめたがこれが序章に過ぎず、太陽フレアや地震などの問題は次々に起きた。挙げ句の果てに国際機関の解体が始まり本当の意味で国々が個々で独立を果たすというなんとも崩壊や終焉が多い数年になった。
なぜかこの2年間は国民1人1人が立ち上がり影響力がある権力に対して叩きのめす構図だった。これらの出来後は後々重要な歴史の転換点と言われている。璻が1歳の時、藤宮が7歳の時に経験をしているが2人とも親やネットニュースからその話を聞いていた。
藤宮はなんとなくプロフィールを見て想像するに渦見の気持ちを考えるとトラウマになりそうな感じはわかる。
「渦見さんもその子役だったわけですからね。母を失い好きだった事が急になくなるのは子供ながらトラウマを抱える事は想像できますね」
藤宮と璻はまた3D映像に映し出されてる経歴に目を通す。藤宮が経歴のデータを開くとそこにはずらっと出演作品やバンドでリリースした曲などが書いてあった。藤宮はずらっと書いてある出演作品に驚きつつこれらを詳しく見るとキリがないのが手に取るようにわかる。璻もこんなに渦見が出演しているなんて思いもしなかった。
「藤宮さんすごいですね。渦見さんものすごく色々な役やってて。なかなか見る量が多いですが重要な役だけ見れますか?」
藤宮は目を細めてボソッと呟く。
「そうしますか。」
藤宮は経歴にソートをかけて代表作だけ表示されるようにするとスッキリと出演作品が絞られた。経歴にはこう書かれて表示された。
<代表作>
「後ろの正面だあれ?」主人公:スガ素戔嗚
「Mr.承認欲求」金槌ユニバース
「転生しても結果は同じ人生を飽きずに300回繰り返してます」主人公:上徳苅磨
「無駄な妄想の中で生き続ける」主人公:長尾義政
「ラスボスは日本の中」主人公:國吉みつぎ
藤宮は思わず唖然とした。璻の言った事は本当だった。
璻の顔を見ると藤宮は驚いたように話し始める。
「璻さんの言った事本当でしたね。救いようがないタイトルばかり……いや、よくこれらのタイトルで売れたな…びっくりですよ。」
璻は藤宮が疑っていた事に少し腹を立てた。
「藤宮さん私を疑ってたんですか!酷いです!真面目に説明したのに」
藤宮はソファから立ち上がると3D映像に表示されてる代表作に指を刺す。
「アニメ見ない人はこれ見たら普通はこのタイトル本当かなって思いますよ!誰だって!それで本当に売れてるんかいってなるでしょ。運営ボケるとこはそこじゃない!!」
まるで藤宮がコントをしてるかのような暑苦しく鋭いツッコミに璻は思わず拍手をした。
「おお〜藤宮さんこれがツッコミってヤツですね。」
璻の拍手を見て藤宮はなんだかやる気をなくしソファに座る。真面目に意見を言ったつもりだったがなぜかこの話題は話が噛み合わない。少し落ち込むと 藤宮はため息を吐いた。
…これがジェネレーションギャップってやつか?…
そんな藤宮を放っておく璻は何か経歴を見ながらとある事を思い出した。
「あぁっ!ラスボスも主人公やってたんだ!これ最初みんなでいい仕事をしようよ!アニメだったのは覚えてますよ。」
璻はアニメの内容を必死に藤宮に説明する
「主人公である平民のみつぎは実は悪の親玉である王族ということを隠して仲間と仕事をしてました。王族のスパイだったわけですが、仲間を集め各村を転々としながら仕事をしていたんです。みつぎがある時期を境に王族側から派遣されたスパイ民衆によって諸悪の根源だという衝撃な事実と証拠を仲間に伝えられるんです。仲間はみつぎを疑うようになりました。まぁ最後は王族に裏切られ信じていた仲間や民衆にボコボコにされ主人公が討ち取られて終わるというすっごく斬新な話だったんですよね。いい事していたように見えたけど実は民衆と仲間からうまく搾取できる仕組みを各村を転々としながら仕込んでいた。そして全ては王族の茶番劇でしたよ〜は逆転の発想でしたね」
藤宮は呆れると口を開けてポカーンとしながら璻の話を聞いていた。
…いや、えっ…それ面白いのか?主人公、諸悪の根源でさらにボコボコにされてていいのか?むしろそれが若者の流行りとかなのか?……
色々疲れてきた藤宮は頭を抱えるとなぜか考えるのを諦めようと決心する
「璻さんとりあえず俺には理解できない内容なので次に話を進みます。あと読んでもらえますか?」
「はい!承知しました。次はバンドの経歴ですね。えっと…バンド名はstabilizeですね。デビューシングルのGravity Centreが人気にとなってますね」
藤宮はフッと鼻で笑うと何か少しわかったような口ぶりで話し始める。
「なるほど。彼の誕生日は8月1日獅子座でしたね。stabilizeは合ってますね」
璻はなぜ藤宮が星座とバンド名を言うのか理解できなかった。
「バンド名と星座って何か関係あるんですか?」
璻はわかってない様子だと藤宮は璻がわからないように補足をする。
「いや、ただ彼の性格がそのまま出てるバンドだなっと思いまして。」
それを聞いた璻は余計にわからなくなった。諦めた璻は突っ込んで聞いても多分教えてくれなさそうとわかるとそんなに気にしなくていいかと思った。思わず拗ねながら藤宮に応える。
「ふーん。関係ないならいいですけど」
藤宮は意地悪そうに応える。
「璻さんならそのうちわかりますよ」
3D映像を見ながら藤宮は六角形のクリスタルを触れ依頼内容を表示した。
藤宮はソファから立ち上がる。
ホログラムを指で触りスワイプをして次のページを表示させた。
「璻さんこれも読み上げて頂けますか?」
藤宮は該当箇所を指で刺すと璻は喜んで返事を返す
「はい。これですね」
依頼内容をサッと黙読した途端、書いてある内容に璻はゾッとした。
…これは私が思った以上にトラウマが深そうな内容だ。特に女性に対して…
そんなことがなぜか頭をよぎった。
。:*:★。:*:★━━補足ポイント━━★:*:。★:*:。
・「なぜかこの2年間は国民1人1人が立ち上がり影響力がある権力に対して叩きのめす構図だった。」
この小説の世界では権力やお金持ちやインフルエンサー、芸能関係の人を叩く構図になっているのは民衆の個々の鬱憤が相当溜まっているから。これを機にメンタルを病んで亡くなる方が多く出ます。また叩きのめす構図はのちに思想チェックの対象になりベーシックインカムをもらう時に除外者になったり、本来の額から減額される対象になります。またある議員の若い時のSNSの発言掘り出され話題になります。これを機に『思想チェック』が導入されるきっかけをつくります。
因果応報なので必ず自分にやったことは帰って来るのがこの世の常です
。:*:★。:*:★━━━━━━━━━★:*:。★:*:。




