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【連載式短編集】世界線の中の『僕』  作者: 九条桐椰
暇人とわがままな使い魔
7/7

中二病と中だるみ男子(1話完結)

『中二病』

中二病ちゅうにびょうとは、「(日本の教育制度における)中学2年生頃の思春期に見られる、背伸びしがちな言動」を自虐する語。転じて、思春期にありがちな自己愛に満ちた空想や嗜好などを揶揄したネットスラング。派生語に高校2年生を指す「高二病」、大学2年生を指す「大二病」がある。


なお「病」という表現を含むが、実際に治療の必要とされる医学的な意味での病気、または精神疾患とは無関係である。




気になったから調べてみたら、こんな事が書いてあった。なぜ調べたのか、それは数日前まで遡る。




僕、須藤寛すどうひろは高2。高2はよく中だるみの時期なんてよく言うけど、ある意味正解かもしれない。僕も将来については曖昧で、何も決まってすらいない。

というよりかは、何事にも無関心な人間だったりする。興味があることと言えば、言葉。言葉には色んな意味を持つ言葉だったり、変なところ(例えばネットとか)から生まれた言葉だったり。そう言う言葉が一番気になる。でもそれらは、調べたら終わり。だからこの興味がある時間というか、『燃えてる』時間は短い。


授業終わりの休み時間、虚空を見つめてると耳に聞き馴染みのない言葉が刺さった。


「凪ってさ、絶対中ニ病だよね」

「そもそもそうとしか考えられないよー。本人自覚してないし」


『中二病』

最初何かしらの病気の名前かと思った。虚空を見つめていた目は、輝きを取り戻した感覚がある。僕はいつも、気になる言葉を調べる前には想像することがある。

どういう意味なんだろ?やっぱり病気の一種なのか。考えてみたが、なかなかまとまらない。それがいっそう僕を興奮させた。




そして現在。調べたらこんな事が書いてあって今に至る。


「へぇ、中二病といっても精神病の類じゃないんだな。どっちかって言うと嘲笑で使われるのかな?」


普通なら知って終わり。だが、今の僕にはもう一つ気になることがあった。


「凪って誰?」


そう、僕はクラスの顔に全く興味がない。人を知ろうともしない性格だから、誰がどの顔なのか全くわからない。


「明日調べるか」


そう決心し、眠りについた。


次の日の朝。

教卓の上においてある、クラス名簿を見て机の位置を確認し、席へ戻った。

そしてショートホームルームの時間になった。その席の方へ目を向けると、人影はなかった。


「えーっと、佐木は休みか?誰が聞いてる人いるか?」

「センセー、凪は今異世界に行ってドラゴン狩りに行ってるそーでーす!」

「なんだそりゃ」


その一言でクラスのみんなは笑った。これが嘲笑ってたやつなのか。経験したことのない空気だから、新鮮味は感じる。

そんな新鮮味を゙感じながら、ショートの時間は終わった。


放課後、ボーっと虚空を見つめてると、どこからか声が聞こえてきた。


「──ろ。ひろー?聞こえてるか?」

「・・・あー、うん。えっと、誰?」

「なんでだよ!まぁいいや。先生呼んでるぞ」

「ん、了解」


先生の元へ向かい、用事を訪ねた。


「それで、用事って?」

「すまないが、これを佐木の家へ届けてくれないか?」

「なんで僕が?」

「先生はこれから出張なんだよ。というか、いつも行ってくれる人も今日いないから誰も行きたい人がいないんだよ」

「なんでですか?」

「なんでって、お前普段の佐木見たことないのか?」

「あいにく他人に興味を持てない人間なもんで。『中二病』って事は知ってますけど」

「中二病?誰が言ってたんだそんな事」

「さぁ?昨日女子か誰かがそんな事を言ってたのを耳にしたんですけどね」

「そうか、わかった。それじゃ頼んでもいいか?」

「誰も行かないんだったら行きますよ。どうせ暇ですし」


そう言って学校をあとにした。




先生からもらった地図を元に向かってみると、そこには家があった。まぁそもそもなかったら地図の意味ないけど。表札にも『佐木』と書いてあった。


「すいませーん。凪さんいます?」


家の中は誰もいないようだった、だが。


「鍵が開いてる・・・。よっしゃ」


そう言って僕はズカズカと入っていった。

最早礼儀なんぞ知らぬわなんてレベルで入った。


と、リビングらしき部屋を覗くと。


「は?」


そこには、女子が倒れていた。それも銀髪の。


「突っついてみるか」


そう言って、その子の脇腹に手を伸ばそうとした瞬間だった。


「はあっ!」

「おっと」


いきなりその子は木刀を振ってきた。だか、反射神経が優れてる僕は、片手で奪った、


「おのれぇ!」

「はいはい、タンマタンマ。ん?」


いきなり木刀を振ってきたその子の片目には、眼帯アイパッチがついていた。眼病でも患ってるのかと思ったが、よくよく近くで見ると手作りなのがよくわかった。


「あ・・・。あ・・・」

「あ、やべ。ごめんごめん近かったな」

「命知らずめ・・・」

「ある意味あってるかも。知らんけど」


しまった、眼帯が気になって顔面間近まで迫って見ちまった。失敬失敬、気をつけなければ。


「ところで、あんたが佐木凪さきなぎさん?」

「──その名は我にとってはもう古い名だ。我はヒトウ・スメラギ。この世の全てを手に入れる王となる者ぞ!」

「この世の全てねぇ・・・」

「・・・お前も馬鹿にするのか?」

「別に。バカにしてるんだったら、もっと貶すと思うぞ。あ、そうそう。聞きたいんだけどさ」

「・・・何?」

「ドラゴンって何?」

「・・・え?」

「いやぁね、今朝のショートの時間で誰だかわかんない女子が『ドラゴン狩りに行ってます』って行ってたからさ、ここへ来るついでに聞いとこうかと。んで、ドラゴンって何?」

「お前ドラゴン知らないの!?」

「初めて聞いた」

「初めて聞いた!?」


なんで驚くんだこいつ。知らないものは知らないってはっきり言ったほうが身のためだぞ。


「はぁ・・・。えっと、ドラゴンってこれ」


そう言って、凪は一枚の絵を見せた。そこには、今までに見たこともない生き物が描かれていた。


「これがドラゴンってやつ?」

「そうだよ。え?本当に知らない?」

「初めて見たよ。こんなゴッツい生き物」

「生き物・・・、まぁ生き物なのかなぁ?」

「これを狩りに行ってたの?」

「うん、行ってた。なんなら今日戦って、倒そうとしたけど、あと一歩のところで逃げられた」

「そりゃ残念。見てみたかったなぁ、生のドラゴン」

「ねぇ、あんた本気で言ってるの?」

「何が?」

「だから!ドラゴン!生のドラゴンみたいって言ってたけど、あんなの架空の存在だよ!いるわけがない!」

「そうなんだ。覚えとく」

「もう・・・」


なんだか頭をかかえてるようだった。なんか僕変なこと言ったか?


「まぁいいや。そんじゃ今日は帰るわ」

「えっ!?ちょっ!」

「ん?」

「あ、えっと・・・。あんた、なんていうの?」

須藤寛すどうひろだけど?」

「寛・・・。ん、覚えた」

「そりゃどーも」


そう言って、僕は佐木の家をあとにした。



次の日、また誰かが声をかけたような気がした。

気づくとそこには、例の眼帯をつけた女子が立っていた。


「あ、えっと・・・」

「どした?」

「今、暇?」

「暇だね。話し相手ぐらいなら付き合えるぞ」

「んじゃ、お言葉に甘えて。今度はこっちから聞くね」

「ん?」


そう言って凪は僕に訪ねた。


「普段というかさ。いつもそんな感じなの?」

「というと?」

「いつもぼーっとしてる。誰も話しかけない。なんか、不思議だなって」

「いやまぁ理由は明確だろ。こんな性格して、中身も空っぽな人間だからな」

「ふーん・・・。そうなんだ」

「あ、そういえば」


そう言って僕は、黒の小さなプラスチックケースを取り出した。


「ほい、あげる」

「えっ、なにこれ?」

「開けりゃわかる」

「・・・眼帯アイパッチ?」

「昨日気になってさ、暇だったし作ったんだよ、気まぐれってやつでね。んで自分でつけてもよくわかんないから、凪にあげるわ」

「ありがと。つけてもい?」

「どーぞ」


そう言って隠してる目を見せないようにしてつけた。

そして、手鏡で自分の顔を見た。


「・・・これ、カッコいいね」

「そりゃどーも。暇でよかったよ」

「普段こういうものづくりとかしてるの?」

「いや?普段は虚空を見つめてボーっとしたり、布団の中で寝てる。それも一日中」

「そうなんだ。・・・あ、えっと」

「どうかした?」

「ありがと。大切にする」

「ん、どういたしまして」


そう言って足早に去って行った。


なんだったんだ?そんなことを思いながら再び虚空を見つめた。

いかがでしたでしょうか?

こういう「何事にも興味を持てない登場人物」に美学を見出すことが好きな人間だったりします。

変に生き生きしてるのもありなんですけどね


ではまた、次回の世界でお会いしましょう。

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