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【連載式短編集】世界線の中の『僕』  作者: 九条桐椰
暇人とわがままな使い魔
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暇人とわがままな使い魔〜Story3(終),僕には悪魔が必要らしい 〜

細海の家から帰宅後、私は受け取った本のページをパラパラと軽く目を通していた。いくら危ないものとはいえ、興味がないとは限らなかったからだ。


「あら?珠良、その本どうしたの?」

「あ、お母さん。この本友達から・・・。うん、友達でいっか。友達から回収したんだけど、これ『悪魔召喚書』だよ。しかも本物」

「不思議ねぇ。それもともとうちにあった本よ」

「えっ!?そうだったの!?」

「そうよ。昔おじいちゃんから聞いたことがあったんだけどね。あ、珠良からみたら曾祖父ちゃん(ひいじいちゃん)のことね」

「曾祖父ちゃん・・・」

「なんかこの家系の祖先が作り出してまとめた本だそうだけど、『欲しい!』って言ってきた人がいてね。その人に売ったらしいのよ」

「なんでそんな物売ったのよ・・・」

「さぁねぇ?私にはわからないわ。そもそもそこまではおじいちゃん教えてくれなかったし」

「そこはわからないんだ・・・」

「ただね、昔教えてもらったことは他にもあるのよね」

「他にも?」

「うん、その本を使えるのはこの家の家系に通ずる者だけだってね」

「・・・えっ?もう一回言って?」

「だからね、その本を使えるのはこの家の家系に通ずる者だけだって──」



「って言ってたのよ」

「えっと・・・。つまり、僕は珠良の遠い親戚ってこと?」

「そうみたいね」


まさかの事実を伝えられたのは、大学近くにあるカフェだ。授業終わりの昼下がりに珠良から「話がある」と言われ、ここに来て今に至る。


「まさか、ご主人様と珠良様が遠い親戚だとは・・・、驚きです」

「そうだよねぇ。ルアンちゃんも心の底から驚いてる感じしてるし」

「そうですよぉ!こんなの普通にびっくりしますってぇ!」

「まぁ、自分の知り合いが実は親戚でしたなんて意外すぎるよな。世間は狭いよな」


人間誰しも意外な共通点を持っている。なんてことを前に須藤からきいたことがあったな、まさにこれがその類なのかもな。


「てか、どうする?」

「どうすると言うと?」

「いや、一応遠い親戚なわけだけど、どうするつもりかなって」

「別にどうもしねぇ。あんまそういうの興味ないし、誰にも言いふらすこととかしないよ」

「まぁ、そうだよね」

「あのー、私。思ったことがあるんですけど」

「ルアン?」

「どうかしたの?」

「ご主人様って、もしかして人間関係とか作るの苦手なんですか?」

「うーん、なんて言えば良いんだ・・・?」


今までに考えたことが無かった。僕は今日まで友人と呼べる友人を作ったことが無かったし、無意識にそうしてた感じがするんだよなぁ。


「理由説明しろって言われると難しいんだけど。まぁ、簡単に言うと『嫌いだから』・・・かな?」

「嫌いだから?」

「どういうことです?」

「小学校からこんな性格で、友達作りしようだなんて考えたことがなかったし。なんでだろうって考えたことがあったんだけどさ。結論がただ単に『他人との関係を持つのが嫌いだから』って結論になったんだよね」

「なんで嫌いなの?」

「暇で居たい・・・からかなぁ?」

「暇で居たいって・・・、暇なときって虚しくならない?」

「ならないし、むしろ心地良いと思ってるよ。何も考える必要ないし」

「不思議ねぇ」

「でも、私といる時は楽しそうにしてますよね」

「そうか?時々鬱陶しいとは思ってるけど」

「ひどいですよ!」

「あー、悪かった悪かったって。今度なんか奢るから」

「・・・シュークリーム。いつものお店の」

「あー、わかった。今日の帰りに買いに行こうや」

「ありがとうございます!」

「わぷっ!?」


そう言ってルアンは僕に抱き着いてくる。そんな僕たちを珠良は暖かい目で見守っていた。・・・恥ずかしいなおい。




「・・・・・・」


ザァーっと、外は大雨が降っていた。もうこのまま止むことはないんじゃないかと思えるぐらいよく降る。そんな中僕は、和室のど真ん中の畳に大の字になって寝転んでいた。


「・・・はぁ、久々だなぁ。1人になるの」


今僕は、父方の実家に来ていた。というのも、親父の方でいろいろ面倒事が起きたため、その手伝いとして召集された。と言っても、そんな重要なことでもなく。販売の手伝いをしてくれと頼まれただけなんだけどね。

実家は老舗の和菓子店なのだが、地域で毎年行われている屋外イベントの屋台として出店するらしく、そのために3連休を使って実家に来ていたのだが、イベントの最終日である今日、あいにくの雨天で中止になった。それだけならまだよかったのだが、親父たちはイベントの主催者側と何か揉め事があったらしく、出ていってしまっていて、今家には僕しかいない。


「ルアーン。いるか?・・・やっぱり今日もいないか」


ルアンを呼ぶが、返事がなかった。なぜか知らないが、連休の初日の朝からいなかった。今までこんな事なかったのに。


「にしてもやっぱ雨酷いなぁ・・・。はぁ、寝るか」


そう言って僕は畳の上で眠りについた。




連休も終わり、帰路についていた。朝っぱらから呼んでみたんだが、やっぱりルアンからの返事はなかった。


「やっぱ、帰ったのかなぁ」


そんなことを口にしながら家のドアに手をかけて開ける。


「・・・ぐすっ、・・・ううっ・・・。」

「・・・あれ?ルアン?」

「っ!?・・・ご主人様?」


ルアンが、僕の部屋で1人泣きじゃくっていた。


「えっと・・・、ただいま──」

「『ただいま』じゃないですよ!!」

「おふっ!?」


そう言ってルアンはいきなり僕に飛びついて来た。

ルアンの温かい感触が僕を包み込んで、離さないようにしてくるような感覚がした。


「もう!どこに行ってたんですか!私・・・、ずっと、一人ぼっちで寂しかったんですよ!」

「ごめんごめん・・・、実家の手伝いに行ってたんだよ。・・・てか、連休の初日からルアンいなかったけど、どこか行ってたの?」

「・・・・・・」

「ルアン?」

「えっと・・・、実家に帰ってました。雇い主が決まったって。それで朝から出かけてたんですよ」

「あぁ、なるほどねぇ・・・。それで帰ってきたらいなくて寂しかったって感じか」

「はい・・・、もう2日も1人だったんですよ」

「ん?2日も?帰省してたんだよね?なんで日帰り?」

「あぁ、悪魔の世界と人間世界の時間のながれが違うんですよ。人間の1日の時間は悪魔の5日間って感じなんですよ」

「あ、そうなんだ。・・・てか、ほんとにごめん、予定言ってなくて」

「本当ですよもう・・・。捨てられたのかと思ったんですからね」

「流石に自分の使い魔を自分の家ごと捨てる勇気はないわい」


普通に失態だった、前日にルアンに言っとけばよかったな。


「なぁルアン、今度からお互いの予定伝えてるようにしておこう。そうじゃないとまたお互い寂しい思いするし」

「そうですね・・・、もう一人は、・・・嫌です」


そう言ってルアンは強く抱きしめてくる。怯える猫が必死に飼い主にしがみついてくるような感じがする。


「ところで、聞きたいんですけど」

「ん?」

「『お互寂しい思いするし』って言ってましたけど、・・・寂しかったんですか?」

「・・・かもな。何気に久しぶりに一人でいたけど、暇だったし、寝るしかなかったからな」

「そうだったんですね」

「でも、明らかにルアンが僕にとって大切な人になってるのは確かだよ」

「・・・ご主人さまぁ!」

「わっ!泣くなって・・・もう」


そう言って再び泣き出したルアンを、僕は優しく抱きしめる。寂しい思いは誰だってするのは嫌だろう。だが僕には寂しいがどういう感情か今までわからなかったが、心の拠り所になりえる人がいなくなったら、寂しくなるし、悲しくもなるんだろうな。初めてかもしれない、寂しいがどんなのかを知れたのは。


「ところで、ご主人様・・・」

「ん?」

「今日って、大学・・・」

「あー・・・、休むか」

「えっ、でも・・・」

「寂しかったんだろ?」

「・・・はい」

「だったらしばらくこうするわ。暇だし」

「・・・あははっ。そうですね」


そう言って、僕はルアンの気の済むまで抱きしめた。

なんやかんや最終回。

しばらく終わりのくだりを考えてて、本連載(俺バレ)の執筆が怠ってしまったことは反省してたりします。

もし皆さんのもとに、使い魔が来たら、あなたはどうします?


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