第9話
トントンと部屋のドアがノックされる音が聞こえた。
「ねぇ黒男、大丈夫?叫び声が聞こえたけど?」
母さんが俺の叫び声を聞いて心配してやって来たようだ。
「大丈夫だよ!変な夢を見ただけ!」「そう。もう夕飯だからリビングに来なさいよ。」
「分かった!すぐ行く!」
俺の返事を聞いて安心したのか、母さんは階段を下りて行った。
俺は制服から部屋着に着替えてリビングに向かった。
リビングのドアを開けるとプ~ンとカレーの匂いがした。
テーブルにはすでに父さんが席に着いていた。俺も席に着くとキッチンから母さんがお盆にサラダを載せてやってきた。母さんが席に着くと「じゃあ、食べましょうか?」と言ったので、「「「いただきます。」」」と三人一緒に挨拶をして食べ始めた。
父親も母親もあまり厳しいしつけをする人ではなかったが、うちでは朝のニュース以外で食事中にテレビをつけることは禁止されていた。もちろんスマホをいじるなんてもってのほかだった。あと禁止されているわけではなかったが食事中にしゃべることもあまりなかった。だからセキネさんのことを父さんに聞こうと思っても、無音の中で話しかけるのは少し躊躇してしまった。
だけど意を決して「父さん、ちょっといい?」と父さんに話しかけた。「どうした?」と父さんは、俺が食事中に話しかけたことを特に気にする様子もなく聞いてきた。
「聞きたいことがあるんだけどいい?」「別に構わないけど。」
「実は昨日、林間学校で体が発光する女の子と会ったんだけど、たぶん何かの病気らしいんだけど父さんどんな病気か分かる?」
俺は父さんや母さんに怒られないために、自分が遭難しかけたことを伝えずにセキネさんの病気のことを聞いた。
「う~ん。体が発光する…それはきっと発光症候群っていう病気だと思う。随分珍しい病気の子と会ったんだな。確か世界的に見ても二、三百人位しか症例がない病気だし、日本だけだと数十人位だったはずだ。」
「そう、なんだ。いや、初めて見たときはすごくびっくりしたよ!しかも体が光る理由を聞いたら、『私、宇宙人なんだ。』ってその子言ってくるしさ。」
「それはきっと黒男を心配させないようにするために言ったんだろうな。相手が病気だと分かったら大体の人は気を遣うからな。」
「そっか。それもそうだよな。」
「発光症候群はまだまだ分からないことだらけの病気だからその子も大変だな。治療法も確立されてないし、症状を抑える薬すらもないからな。」
「え?そうなの?」
父さんの説明を聞いて、俺はセキネさんの病気の大変さを初めて認識したかもしれない。
症状を抑える薬がないということは、昨日みたいに夜の山で遭難しかけている時みたいに体が発光しても大丈夫な時だったら良いけど、夜の街中で発光したらかなり目立ってしまって大変なことになる。いや、昼間でもあんなに眩しかったら他の人に迷惑がかかるか。などと本人はとっくに経験しているであろうことを俺は想像してセキネさんを心配していた。
よしっ!夕飯を食べ終えたら、ネットで発光症候群のことを調べてみよう。と考え、父さんや母さんの、
「その子とはどこで出会ったんだ?仲良くなれたのか?」という質問を適当に受け流しつつ食事を終えたら、自分の部屋に直行してパソコンで発光症候群について調べ始めた。
だが自分で調べてみたことで分かったことは発光症候群の情報はほとんどないということだった。世界で数百人の症例しかない病気なので情報が少ないのは当然だったが、こんなにも少ないとは思ってもみなかった。それでも俺は発光症候群の情報がないかを片っ端から探していった。するとあるサイトに、「日本では発光症候群の発光をもじって薄幸症候群とも言われている。」とあった。
確かに突然体が光り出すのは目立つし、周りの人に迷惑をかけて幸せじゃないだろうけどそんな風に言葉遊びされていることに腹が立った。
そこでふと我に返って気付いた。あれっ?そういえば俺何でセキネさんのことでこんなにムキになっているんだ?遭難しかけたのを助けてもらった人ではあるけど、親戚でもなければ友達ですらない、何時間か一緒にいた程度の関係性の薄い人に対してこんなにムキになるだろうか?う~ん、でも命の恩人と言ってもいい位の人だからかもしれない。命の恩人ならムキになってもおかしくないよな。と自分でも訳が分からなかったがセキネさんに対してムキになるのは命の恩人だからということにした。そう理由付けしてしまっただけでなく更に、命の恩人のことを知りたいのは普通の感覚だよな。と考え、発光症候群のことを調べ続けて徹夜してしまった。




