第6話
「そう良かった。でも長袖の体操着を着ただけで結構暗くなるんですね?」
彼女が腕を出さなくなった分暗くなったと思ったが、それだけではなかった。顔や首など露出している部分の光も弱くなってきていた。
「あはは。ここにパ〇ーがいたら私が発している光が消える前にランプに火をつけてくれるのにね。」
「もしかしてラ〇ュタのことを言ってますか?」
「そうラ〇ュタ!ジ〇リだったら知ってるかなと思って言ってみたんだけど。良かった!知ってたみたいだね。」
「まあ、ジ〇リは一通り見てるから。あれですよね?坑道に落ちていった時に光っていた飛行石の光が消えそうになるシーンですよね?」
「そうそう!」
「でも本当にそうですよね?ランプでもなければ、セキネさんの光が消えたら大変ですよね?セキネさんには申し訳ないですけど、セキネさんがこのまま光っていてくれれば誰かが捜しに来てくれた時にすぐ見つけてもらえるかなと思ってました。」
「あはは。ごめんね。役に立たなくて。」
申し訳なさそうにしているセキネさんを見て心が痛んだ。
「大丈夫ですよ!いや、そんな簡単に大丈夫とは言えないですけど、大丈夫です!光がなくたってきっと僕たちを捜してくれている人たちも、僕たちに気付いてもらおうと何かしら音を出すか声で呼びかけてくれていると思うので、その音か声が聞こえた時に大声で呼びかければいいんですよ!」
「あはは。そうだよね!大丈夫だよね!」
セキネさんが明るさを取り戻しホッとしたのも束の間、セキネさんが発していた光が消えた。
また暗い闇の世界に戻った。だが今度は少し安心感がある。なぜならセキネさんが近くにいるからだ。
一人じゃないってこんなに安心するんだと思った。木々が生い茂る山の中だけど微かに見える月や星の光のおかげで暗闇に目が慣れてくると、セキネさんのことをうっすら視認することができた。
しかしどんな表情かまでは分からなかったが、おそらくこんな暗い山の中、頼りない男子(最悪、熊などの危険な野生動物が出た時に囮にしか使えないような頼りない男子)と二人で遭難していると思ったら、希望を見出せず暗い表情をしているだろうと思った。
だから何か話しかけて少しでも気を紛らわせなくちゃいけない!え~と、何を話せばいいだろう?「助かったら何がしたいですか?」いや、これだとセキネさんが助からないと不安に思っていたら、「はぁ何言ってんの?助かったらじゃなくて、助かるためにできることはないか考えられないの?」って言われそうだ。助かるためにできることを話した方がいいだろう。「大声で叫んで助けを呼びます?」いや、これもさっき自分で言った通り先生か誰かによる救助が来てくれた時にした方がいいだろう。いざという時に助けを呼べなくなってしまうかもしれない。じゃあ、どうすればいいんだ?などと考えていたら、セキネさんが「ねぇ、ラ〇ュタで飛行石を光らせる呪文って覚えてる?」と聞いてきた。
「えっ呪文ですか?」
「そう、呪文!あれ確か『我を助けよ。光よよみがえれ』って意味だったじゃない?だからそれを唱えれば私の体が光って、私たちを捜してくれている人たちが見つけてくれるかなと思って!」
それを聞いて俺はそんな都合のいいことがあるだろうかと思ってしまった。なぜならセキネさんは自分で光はコントロールできないと言っていたのに、そんな呪文を唱えたぐらいで発光するのなら、なぜ今まで試さなかったのかと疑問に思ってしまったからだ。
しかしセキネさんは俺を少しでも安心させるために試せるものは何でも試そうと思ったのかもしれない。そう思うと、初めから無理だと考えるのは失礼かもしれない。よしっ!セキネさんに協力しよう!何せ俺は覚えているからな。その呪文。
「え~と、確かリー〇・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリールだったと思います。」
「すご~い!覚えてるんだね!根倉くん記憶力いいね!」
「いや、ただ単に何回も見ているだけですよ!すごくないです。」
「そうかな~?私はすごいと思うけど。じゃあ試してみるね!」
そう言ってセキネさんは深く息を吸い込んだ。
「リー〇・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール!」
シー〇が呟いて言ったのと比べると、かなり大声ではっきりとセキネさんは叫んだ。
暗い闇の中その声は随分と大きく聞こえた。
でもというかやっぱりセキネさんの体は光らなかった。
セキネさんは少し恥ずかしそうに、「あはは。やっぱり駄目だったね。」と言った。俺は掛ける言葉を捜したが、励ましの言葉も責める言葉も今言うのは違うような気がして、全く思いつかず黙ってしまった。でも何も言わないでいるのはもっと違うような気がして何も思いつかないのに、「あのっ。」と話しかけた瞬間、セキネさんの体がピカーッと光り出した。




