第54話
ファミレスを出た後、俺はセキネさんに黙って付いて行った。
いくらルリさんたちの様なひどい人たち相手だとしても「友だちじゃない。」と宣言することはかなりのプレッシャーがあっただろうと思い、何て声を掛けていいか分からなかったからだ。
夏が近いとはいえ、夕方になってくると日も落ちて来ているので、光を放っているセキネさんは目立つため周りの人たちの注目を少なからず集めていた。周囲の視線を集めていることをセキネさんは気にしている様子はなかったが、俺は周囲の視線を集めすぎて何も起こらなければいいけどとハラハラしながらセキネさんに付いて行った。
しばらく歩くとセキネさんが「ありがとね。根倉くん。私のために怒ってくれて。」とお礼を言ってきた。
「お礼を言われるようなことはしてませんよ!むしろ俺のせいであの人たちと一緒にお茶することになったことを謝らなくちゃいけないのに。」
「ううん。根倉くんにルリさんたちと一緒にお茶するかどうかの判断を任せちゃった私が悪いの。ごめんね。ホントはね中学の時からルリさんたちは友だちなのかなって少し疑ってたんだ。高校生になってヒナと再会したり、新しい友だちができたりして、周りにいる人たちの私への態度がルリさんたちの態度と違うから、やっぱりルリさんたちは私を笑いものにして楽しんでいただけだったんだ。ってはっきりと分かったんだ。その頃にはもうルリさんたちからラインも来なくなっていたからこっちから連絡を取らなければいいかな?って思っていたんだけど、まさか今日再会するとは思わなかったから自分でもどうしていいか分からず根倉くんに任せちゃったわけなんだ。ホントにごめん。話は戻るけど、さっきルリさんたちに笑いものにされても言い返すこともできずにトイレに逃げるだけだった私のために怒ってくれてありがとう!すごく嬉しかったよ!」
「何言ってるんですか!何度も俺のことを助けてくれたセキネさんのために怒るのは当たり前ですよ!」
「ありがと。根倉くんが友だちで良かったよ。」
「え?」
俺はセキネさんの「俺と友だち。」という発言を理解できず、ポカンとしてしまった。
「え?どうしたの?根倉くん?」
セキネさんは急にポカンとした表情になった俺を心配してくれた。
「いや、その…俺たちって友だちだったんですか?」
セキネさんの発言が理解できず、そのまま聞き返してしまった。
「え⁈ルリさんたちの前でも言ったじゃん。友だちだって。」
「あれってクラスメートって言うよりも友だちって言った方が無駄に説明しなくていいから、そう言っただけじゃなかったんですか?」
「え⁈違う違う!友だちだから友だちだって言ったんだよ!もしかして根倉くんは私と友だちなのは嫌?」
「そんなことありませんよ!むしろ願ったり叶ったりですよ!俺はセキネさんと友だちになりたかったんですから!」
そこまで言って俺は余計なことを言ったと思ったが、セキネさんは「アハハ!大げさだなぁ!」と笑っているだけで俺の余計な発言に気付いてない様だった。
俺の余計な発言をごまかすために「ちょっと気になるんですが、セキネさんは何時から俺を友だちだと思ってくれていたんですか?」とセキネさんに質問した。
セキネさんは笑いながら「何時からって美化活動を一緒にやった時からかな。」と答えた。
「それぐらいで友だちなんですか?」
俺はセキネさんの発言に驚いたが、ナカマくんのことを思い出してすぐに後悔した。
友だちの定義は人それぞれなんだから、こちらが嫌じゃなければ否定することはないんだよな。
むしろセキネさんの友だちの定義が広くて俺としては良かったわけなのだから。
「それだけじゃないよ。林間学校で着ていた体操着が濡れた私に体操着を貸してくれたこともあったからだよ。あと一緒に話していて楽しいってこともあるね。」
そうだった。始まりは林間学校だった。あの時セキネさんと知り合ってからセキネさんと仲良くなりたいと思い始めたんだった。
そして今セキネさんと友だちになれただけでなく、ナカマくんとも友だちになれた。
やっぱりセキネさんと一緒にいれば暗い性格の俺も明るくなれるんじゃないかと思えてくる。
もうセキネさんの体から発する光は大分弱くなってきているがそれでも俺には眩しすぎるように感じた。
「そろそろ帰りましょうか?」「うん。そうだね。」
「俺はA駅から電車に乗るんですが、セキネさんは?」「私もA駅まで行くよ。一緒に行こ。」
「はい。」
俺は今のうちに聞いた方がいいかな?と思い、「セキネさん!もし良かったら今後は学校でも話しかけていいですか?」と聞いた。
「うん。全然いいよ。私からももっと話しかけるよ。」とセキネさんは返答してくれた。
俺はその返答を聞けて走り出したいくらい嬉しかったがセキネさんの歩調に合わせるためにやめておいた。




