第24話
「セキネさ~ん!」
俺が呼びかけながらセキネさんに近づいていくと、セキネさんが「根倉くん。燃えるゴミあった?」と聞いてきた。
「うん。これって燃えるゴミでいいんだよね?」
そう言って俺がおにぎりの包装フィルムを見せると、セキネさんは「うん。それは燃えるゴミで大丈夫だよ。」と答えてくれた。セキネさんのゴミ袋に包装フィルムを入れた後、何かセキネさんに話しかけようと考えたが良い案が思いつかなかった。
俺がセキネさんのことを見ながら動かずにいると、セキネさんが何かを感じ取ったのか「どうかした?根倉くん?」と聞いてきた。
どうしよう?何か答えなきゃ変だよな。あー、でも何も話題が思いつかない。こうなったら…。
「あの…セキネさん。何で制服じゃなくて体操着を着ているんですか?いや…答えたくなかったら答えなくていいんですけど…どうしてなのかな?と気になったもので…。」
俺は何も話題が思いつかないので、ナカマくんにもらったアドバイス通りにセキネさんが体操着を着ている理由を尋ねた。もちろん、俺もセキネさんが何故体操着を着ているのか気になっていたから尋ねたのであって、ナカマくんがくれたアドバイスだからという理由だけで尋ねたわけではない。
セキネさんはちょっとだけ気まずそうな笑顔をしながら「あ、これ?やっぱり気になる?実は美化活動に参加するために教室から昇降口に向かっている時に、水を入れたバケツを運んでいる書道部の人とぶつかっちゃって。それで制服が濡れちゃったから体操着に着替えてたせいで昇降口に来るのが遅れちゃったんだ。」と答えてくれた。
「大丈夫だったんですか?ぶつかったって、ケガしたりはしてないですか?書道部のバケツってことは制服、墨汁で汚れたりしてないですか?」
俺はセキネさんの返答に驚きつつも、俺ってこんなに饒舌だったけ?と自分でも驚くほどスラスラとセキネさんのことを心配する言葉を口から出していた。
セキネさんのことだからかな?何せセキネさんは恩人の中の恩人である命の恩人だからな。と自分の中で結論付けていると、セキネさんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにさっきとは違う普通の笑顔をしながら「あはは。大丈夫だよ。ぶつかったって言っても倒れるほどじゃなかったし。バケツの水も少しかかった程度だから。それにバケツの水は墨汁が混じった水じゃなかったから制服は墨で汚れたりはしなかったよ。心配してくれてありがとう。」と答えた。
「そうですか。それなら良かったです。いや、良くはないんですけど、最悪の事態ではないですね。って意味で言ったんですけど…。」
俺はセキネさんへの返答に「それなら良かったです。」と言ったことに対して変に意味を説明してしまった。普通だったら使ってもおかしくない表現だったので、無駄に丁寧だったかな?と思いもしたがセキネさんには変な誤解を与えて心の距離が遠くなっても嫌なのでそれなら無駄に丁寧な人と思われた方がマシかなと思った。
セキネさんは俺の発言に対して全く気にするそぶりを見せずに「あはは。大丈夫。分かってるよ。」と言ってくれた。セキネさんなら本当のことを言ってくれていると思ったのでかなりホッとした。




