表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/54

第2話

 「はあ~。」

ため息をついても一人。元にした作品は「咳をしても一人」だが、咳をしてもその音が部屋に響くだけといった孤独を詠んだ句らしいが、今の俺の状況もその状況に勝るとも劣らないだろう。

夜の山中を一人、ため息をついても「どうしたの?」と聞いてくれる人もいなくて、そのため息は暗闇の中へ消えていき、山の木々が風で揺れる音だけが響いている。まあどうせ、普段学校で友人の一人もいない俺がため息をついても「どうしたの?」と聞いてくれる人は全くいないのだが。そう思うと、一人でいる寂しさも普段のことのように思えて、たいしたことのないように思えてきた。


話は少し戻るが、なぜ俺が夜の山中に一人でいるのかというと、通学している高校の林間学校で山の中にある宿泊施設に来ているからだ。だからと言ってなぜ一人なのかというと、夜のレクリエーションとして催された、四人一組の班で決められたコースを周って戻ってくる肝試しのせいだ。


ここで話はまた少し戻るのだが、俺には友人がいない。だから四人一組の班を作れと言われて、「はい。できました。」という訳にはいかない。しかし、運よく班はくじで決めることになったが、普段友人が一人もいない俺が即席の班のメンバーの話の中に(しかも他の三人は面識がある同士みたいで)入っていくこともできず、三人が楽しく話しながら進んでいくのを後ろから付いて行くのが、精一杯だった。

その上運が悪く(ちゃんと出発する前に確認しておけば防げたのだが)途中で靴紐が解けてしまい、それを三人に伝えずに結び直していたら、置いて行かれ一人になってしまったという訳だ。

それなら動かずにいたら次の班の人がやってくるじゃないかという意見もあるだろう。だけど俺はすぐに走っていけば追いつくだろう(明かりが班ごとに渡された懐中電灯一本だけで、それは先に行った三人が持って行ってしまったうえ、スマホを持って参加すると明かり代わりに使用してしまって、明かりが多くなって怖くないだろうということで、スマホは持ち込み禁止だったので、暗い山の中でかすかに木々の間から見える星と月の光しか明かりがなかったので、すごく怖かったというのもあるが)と甘い期待をしてしまい、明かりもない中、夜の暗い山の中を動いてしまい三人に追いつくこともなく、自分がどこにいるかも分からなくなってしまった。そうなってしまうと、これ以上動いたら遭難してしまうのではないかと思い(もう遭難しているのではないかという思いもあったが)下手に動かない方がいいだろうと思って、暗い山の中一人で腰を下ろしてため息をついていたという訳です。


「はあ~。」

また、ため息をついて今後のことを考える。歩いて30分ぐらいのコースだという話なので、腕時計を見ると、もう出発してから40分ぐらい経っているので、同じ班の三人が無事にゴールして、先生たちに俺がいないことが伝われば、そろそろ捜しに来てくれている頃かなと考えた。


しかし、今は夜、しかも山の中なので、先生たちが迷わないように捜索に来てくれるのは明るくなってからかもしれない。更に先生達だけでは見つけてもらえず、捜索隊まで組んで捜すことになるかもしれない。という考えが浮かんできた。更にもっと悪いイメージが浮かんできて、いくら捜しても見つけてもらえず、このまま死んでしまうのではないだろうかと考えた。それを想像すると、ため息をつくどころでは収まらず、俺は頭を抱えて髪をかき乱した。それで今の状況が改善されるわけでもなく、更に途方に暮れるだけだったが、ちょっとだけ落ち着くことができた。


そして少しだけ落ち着いた頭で、きっと捜してくれているだろうと良い方向に思い込んで、ここを動かず、捜してくれているだろう先生達に自分の居場所を教えるにはどうすればいいか考えた。その方法は簡単だったのですぐに思いついた。叫べばいいのだ。叫んで居場所を伝えればいいのだ。俺はここにいると。


だけど、考え方がネガティブな俺は夜の山中を捜しに来てくれているわけがないという思いが強くなり、今から叫び続けて実際に捜索が始まる朝には声が枯れてしまい見つけてもらえないのではないかと思い、叫ぶのは朝まで待ってからにしようと考えた。でも、暗い山中に一人でいる恐怖に耐えるためと自分を鼓舞するためだと理由をつけて、一度だけ叫ぶことにした。「お~い!だれかいませんか~?」これで見つけてもらえないかな?見つけてもらいたいな。やっぱり見つけてもらえないかな?と叫んだあと考えを巡らせていましたが、聞こえてくるのは風で木々の葉が揺れる音だけだった。やっぱり見つけてもらえないのかという寂しさを紛らわすため、また「はあ~。」とため息をついた。


その時、「だれ…」と葉が風に揺れる音以外の音が聞こえた気がした。

すぐに俺は、それが誰かの声だと思い、「お~い!誰かいるのか~!?」と叫んだ。すると、「お~い…誰かいるの~…。」と小さいが確実に誰かの声が聞こえた。更に「お~い!」と叫ぶと、「お~い!」と返ってくる。やった!これで助かったと思い、声のする方を見ると明かりが小さく見えた。

「お~い!」と叫び続けると、だんだんと明かりが大きくなってきた。そこで俺は奇妙なことに気付いた。明かりが小さく見えた時は遠くにいるのだろうと思ったが、今近づいてきて大きくなった明かりを見ると、懐中電灯の明かりにしてはやけにでかい。それどころか、明かりが人型に見えた。そのことに気付くと俺は、「お~い!」と叫ぶのを止めていた。嫌な考えが浮かんだからだ。それは、暗い山中に一人という状況じゃなければ考えなかっただろうが、もしかしてこの声の主は、宇宙人などのUMAではないかという考えだ。


そして、このまま近づいてくるのを待っていていいのだろうか?逃げた方がいいのではないだろうか?と考えて逡巡しているうちに、その人型の光が一層大きくなるぐらいまで近づいてきて、俺の体を包み込んでしまった。暗闇の中にいたので、その光は目の前で照らしているのではないだろうかと思うぐらいまぶしかった。


「お~い!?大丈夫?」と光の主が問いかけてきた。その問いかけに答えずにいたところ、まぶしくて細めていた目が光に慣れてきた瞬間、(実際は光が弱まってきたおかげもあったが)俺の目に光の主の姿が飛び込んできた。UMAかもしれないと思っていた光の主の正体は、随分小柄な女の子だった。見た感じだが身長は150cm台?いや、それよりも低いかもしれないと思うほど小柄で、髪は肩の位置よりも長くて、(一瞬髪自体も光っているのではないだろうかと思ったが)体から発する光を反射するくらい白かった。目が大きくてまだまだ幼いのではないかと思わせる顔立ちの女の子でした。これが発光する、薄幸の少女、アカネアカリとの出会いだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ