第16話
そして4日目の金曜日、今日こそは話しかけようと思い小説読むふりをしながらセキネさんが女子たちと話しているのをちらちら見ていたら、ナカマくんが俺の前の席に座って「なあ、根倉。お前が悩んでいることってセキネさんと関係ある?」と尋ねてきた。
俺はその質問にかなり動揺したが、動揺したところを見せたらナカマくんの質問が的を射ているとバレてしまうので努めて冷静に「まさか。違うよ。何でそう思ったの?」と聞き返した。ナカマくんは少し納得いかないような表情をして「いや、2,3日前から根倉がセキネさんのことをちらちらと見ているような気がしたからさ。でも俺の勘違いだったみたいだな。ごめん。気にしないでくれ。」と謝ってきました。
俺はセキネさんのことをちらちら見ているのは誰にもバレていないと思っていたが、ナカマくんの発言でバレバレだったのを知って顔が熱くなるのを感じていた。熱くなった俺の顔を見たからか、ナカマくんが「なあ、やっぱり根倉の悩みってセキネさんに関係あるんだろう?あ、あれか?1週間くらい前に根倉がミヤザワに財布を盗んだって疑われた時に味方してくれたことについてお礼言ってないんだろ?」と、俺の性格を考えると当たらずといえども遠からずといった感じの質問をしてきた。
「違う違う!さすがにお礼はその日に言ったよ!」
と、俺は慌てて否定した。
それでもナカマくんは疑いの目を俺に向けて「ホントか~?俺にお礼を言ったのも次の日俺が話しかけた時だったじゃないか!」と言ってきた。
「ナカマくんにお礼を言ったのが次の日だったのは申し訳なく思っているけど、セキネさんには体操着を返してもらった時にお礼を言ったよ。」と、俺が弁明すると、ナカマくんは「体操着?」と、食いつかなくて良いところに食いつてきた。
しまった~!余計なことを言ってしまった~!と思うのも後の祭り、ナカマくんは面白そうなものを見つけた子どものような顔をして「なあなあ、体操着返してもらったって、いつ貸したんだよ?根倉とセキネさんって体操着貸し借りするほど仲が良かったのか?そういえばあの時もセキネさんが俺より先に根倉のことかばっていたよな?そんなに仲が良いのに何で普段は全然しゃべらないんだ?」と、矢継ぎ早に質問してきた。
俺はもう観念して(ナカマくんなら林間学校の時に俺とセキネさんが遭難しかけたことを話しても問題なさそうに思ったからだが)俺とセキネさんが林間学校で遭難しかけたこと、その時にセキネさんに体操着を貸したことを話した。
俺が話し終えるとナカマくんは何かに納得するように、うんうん頷きながら「なるほどなぁ~。それで根倉はセキネさんに惚れて、仲良くなりたいからチラチラ見て話しかけるタイミングをうかがっていたという訳だな。」と、見当違いな結論を口にした。
「いやいや、恩は感じているし仲良くなりたいとは思っているけど惚れてはいないよ。」
「なんだ、そうなのか。つまんないの。」
俺がナカマくんの発言を否定すると、ナカマくんは驚くほどあっさり受け入れた。
「そんなこと言ってホントは惚れているんじゃないのか~?」といった感じで、面白がってもっと聞いてくるんじゃないかと思っていたので肩透かしを食らった感じがした。
「まあ、でもセキネさんと仲良くはなりたいんだろ?根倉のことだから、セキネさんの周りに人がいないときに話しかけようと思っているんだろうがそれはあまり期待できないぞ。」
「え?どうして?」
「何故か?って言うと、セキネさんにはアオヤマがべったりとつきまとっているからな。」
「アオヤマさんってヒナって名前の人?」
「そうそう。アオヤマヒナ。セキネさんとは小学校が一緒らしいぜ。何でセキネさんにべったりなのかは分からないけどな。」
ここ2週間くらいセキネさんを見ていて薄々は感じていたが、アオヤマさんがセキネさんとほぼ一緒にいるというのは、特に意識してセキネさんを見ていない人にも分かる事実だったみたいだ。
この事実は俺にとって、かなり嬉しくない事実だった。
なぜなら、俺は何とかセキネさんが1人になったタイミングを狙って話しかけようと思っていたが、それがほぼ不可能だというのが分かったからだ。
う~ん?どうしよう?学校内で話しかけられないなら、学校外で話しかけようか?いや、学校外でセキネさんに話しかけるなんて絶対無理だ。そもそも学校外でセキネさんが行きそうな場所を調べて話しかけるなんてストーカーじゃないか!でも今もセキネさんのことをちらちら見たりしているのもストーカーの一歩手前かもしれない。と、いろいろ悩んだ挙句に自分の行動を省みて自己嫌悪に陥っている俺に対して、ナカマくんが「セキネさんと話す方法ならないこともないぞ。」と、俺にとって救いになるような一言を発した。




