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第11話

 俺はショックを受けながらもセキネさんが同じクラスだったという喜びから、セキネさんともう一度話せる機会があるかもしれないと自分でも驚くくらいポジティブな思いを抱いていた。

しかしその機会はなかなか訪れなかった。

なぜかと言うとセキネさんが一人でいることがほとんどなかったからだ。

常に林間学校の時にセキネさんを待っていた三人が一緒にいた。ある程度話したことがあるナカマくんが他の人と話している所に割って入ることも出来ないのに、一度話したことがある程度の繋がりしかない女子と話すために女子の話の輪の中に割って入ることなど出来るはずもなかった。もしかしたらセキネさんの方から話しかけてくれるかもと淡い期待をしていたが、そんなことは起こらなかった。


それから一週間ずっと隙さえあれば話しかけようと思っていたが、結局話しかけることは出来なかった。でも今までセキネさんという存在を意識していなかったので、意識するとセキネさんの幸の薄さが良く分かった。


まず分かったことは、セキネさんはよくこけるということだ。ちょっとでも段差がある所ではよくこけるし、段差がない所でもたまにこけていた。たぶん俺と初めて会った時、沢に入って濡れていたのもこけたからだろうと思う。


次にセキネさんはよく人とぶつかっていた。これは女子高生にしては背が低いことも関係しているかもしれないが、曲がり角などでよく背の高い男子とぶつかっていた。


またセキネさんはよく物を落としていた。授業中にシャーペンや消しゴムを落とすのはマシな方で、昼休みにお弁当を食べていてポロッとおかずを箸ごと落とすこともあった。


これはちょっと違うかもしれないが、セキネさんが授業中ウトウトしていた時に先生に指摘されることもあった。


あと体が発光することはあまり起きないらしい。一週間で光ったのは廊下ですれ違った時の一回ぐらいだった。一応言っておくが、俺は学校にいる間ずっとセキネさんを見ていたわけではないので、本当にそれ一回きりかは分からなかった。


こういった分かったことを忘れてしまわないように(自分でもキモいと思うが)手帳に書き留めておいた。


そして次の週の月曜日の朝、学校に登校して自分のクラスに行く途中にプリントを抱えたセキネさんに出くわした。そんなにプリントの量は多くないように見えたが、「こけるかもしれない。」と俺が思った次の瞬間、本当にセキネさんはこけてプリントをばらまいた。それを見ていた俺はすぐにセキネさんに近づいていきプリントを集め始めた。


「いった~!あっ、ありがとう。集めるの手伝ってくれて。って根倉くんじゃん!おはよう!学校に来るの早いね。私は今日、日直なんだ。」


俺に気付いたセキネさんが一方的に話しているので、俺も何かしゃべろう!「大変ですね、日直なんて。」ならおかしくないかと思ったが、いざしゃべろうとすると焦りからか、「た、た、たい…。」とうまくしゃべれなかった。するとそれを聞いたセキネさんが、「体操着?ごめん!洗ってはあるんだけど持ってくるのを忘れちゃっていたんだ。今日持ってきているから後で渡すよ!」と俺が言おうとしたことを間違って解釈してしまった。


「大丈夫だよ!いつでも良かったのに!」「いつでもって。冬まで返さなかったらどうするの?」


俺の発言に笑いながら返答しているセキネさんを見ていると、初めてセキネさんが俺の発言で笑った時のことを思い出した。


あの時は「遭難です。」と「そうなんです。」をかけて言っただろうと言って笑ったんだっけ。


「あっ、あとは根倉くんが集めたので全部だね。ありがとう手伝ってくれて。」


俺がセキネさんの発言にハッとすると、セキネさんはすでにばらまいたプリントを集め終えて俺が集めたのを受け取ろうとしていた。俺が、「はい、どうぞ。」と言ってプリントを渡すと、セキネさんは、「ありがとう。じゃあ私先に行くね。」と言って教室に入っていった。俺はその後ボーッと突っ立っていたが、すぐに「普段だったらあまり人が来ていない時間だから、教室に入ればもう少しセキネさんと話せるかもしれない!」と考え、急いで教室に入った。しかし教室に入ってみるとセキネさんはヒナという女子と話しながら日直の仕事をしていた。俺は少し残念に思ったが、「後で体操着を返してくれる時にまた話せるか。」と思い、それを楽しみに待つことにした。


席に着いてホームルームまで小説を読もうとしたが、「セキネさんと何を話そう?」と考えていたら瞬く間に時間が過ぎてしまった。しばらくしてクラスに人が増えてくると、ナカマくんが俺の前の席に座って話しかけて来たが、俺はセキネさんのことで頭がいっぱいだったのでほとんどから返事だった。


「根倉なんか明るくなったよな。」「えっ⁈」


セキネさんのことで頭がいっぱいだとは言え、俺に対する形容詞で明るいという言葉が使われたので驚いてしまった。


「ホントに?」


「ああ、ホントホント。林間学校が終わってからかな?なんか変わったなと思った。雰囲気みたいなものだからどこがどう変わったとは言えないけど確かに明るくなった。まあ、今日は変な様子に見えるけど。」


「明るいなんて言われたのは初めてだよ。」


「マジで?どんだけ暗かったんだよ、根暗は。まあ、今でもそんなに明るくないけどな。おっとそろそろホームルームだな。じゃあ席に戻るわ。」


ナカマくんが言う通り俺は明るくなっているかもしれない。それはきっとセキネさんのおかげだ。セキネさんといるとネクラクロオという名前に名前負けする前の素の自分でいられるような気がする。もしかして俺がセキネさんともっと話したいと思うのはこれが理由かなと思った。


その後のホームルームも授業もほとんどセキネさんと何を話すかを考えていて身が入っていなかった。それでも何とかやり過ごして、後は体育と移動教室の化学だけとなった。

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