相手を不利においやる事でようやく交渉が出来るようになる
少しずつ少しずつ奪還が進んでいく。
掲げられていたロシー連邦の国旗が引きずりおろされていく。
そのかわりにウーク共和国の国旗が掲げられていく。
それを見た者達から歓声が上がる。
「ウーク万歳!」
「我らの祖国、万歳!」
たった一枚の布きれである。
だが、たった一つの国旗が全てを示している。
ここは我らの国、我らの場所だと。
同じ事があちこちでおこっていく。
風にはためく旗が元に戻る。
異国の旗に変えられたものが、本来のものに戻っていく。
それは自由と平穏の象徴だった。
虐殺をものともしない圧政をしく国が消えたという証明だ。
全てが取り戻されていく。
ウークの手にもとの土地が戻ってくる。
だが、消えない悲劇は残る。
殺された者。
犯された者。
傷つけられた者。
奪われた者。
それらの損失が消える事はない。
この非道を少しでも償わせねばならない。
でなければ、侵略者は何一つ損をする事無く今後ものさばる事になる。
ロシー連邦軍の兵士が死ぬ事などなんの補填にもならない。
そいつらが死ぬのは、侵略して誰かから何かを奪ったからだ。
当然の報いであり、補填にもなりはしない。
戦局が反転し、ロシー連邦が撤退していく。
ウーク共和国が領土を取り戻してもそれで終わるわけではない。
撤退したロシー軍。
それを追いかけ、ウーク軍も国境を越える。
侵略されたのだ。
侵略仕返して当然である。
ロシー連邦内の軍事基地が破壊されていく。
生産施設が破壊されていく。
今後、ロシー連邦が簡単に復活しないように、要所を徹底して破壊する。
当然、ロシー連邦人の生活は困窮するだろう。
だが、それは侵略されたウーク共和国人も同じだ。
爆撃で、砲撃で、戦車で、銃で。
様々な攻撃で人と物が壊された。
立ち直るまでに時間も労力も資本も必用だ。
生活だって困窮する。
それをもたらしたロシー連邦に損害を与える事に何の問題もない。
むしろ、徹底的にやるべきだ。
もし生産力をそのままにしておいたら、ロシーは短期間で回復する。
そして、再びウークに攻め込んでくる。
ウークでなくても別のどこかの国に攻め込む。
周辺の小国などへの侵略は、ロシー連邦の基本だ。
それを無くし、少しでも平和を長引かせる為には、生産設備などの破壊が必用不可欠だ。
それらを達成して、ウーク共和国はようやく停戦交渉を始める。
交渉自体はロシー連邦から何度も求められていた。
だが、受け付けるわけにはいかなかった。
その理由は開戦当初にある。
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