見境のない殺戮から逃れ
だが、それで安全になったわけでもない。
やってきた町もロシー連邦の攻撃対象だった。
長距離砲や長距離ロケット、戦闘機の爆弾、長距離対地ミサイル。
様々なものが飛んでくる。
町を破壊していく。
逃げるために男は、また歩き出す。
避難用のバスなども出てるが、それは使わない。
それらが優先して狙われるのが分かってるからだ。
歩くのも大変だが、生き残るためには足を使うしかない。
幸い、非常食は政府や地方自治体が支給してくれた。
攻め込まれ、攻撃にさらされながらもやるべき事をしっかりとこなしてる。
こんな時だが、男はそんな彼らに敬意を抱いた。
いや、こんな時だからこそだろう。
最悪の時に最善を尽くそうする者達は輝いて見える。
その後も男はただただ歩いていく。
戦場になった、侵略された祖国を、
ウーク共和国という自国を。
東のロシー連邦の国境から離れるように。
西へ西へと向かっていく。
途中、東へと向かう軍隊とすれ違った。
戦車、自走砲、走行車両、各種トラック。
様々な車両とすれ違っていく。
男は、そんな彼らに手を振った。
敬意を示す為に、右手を胸にあてた。
非道なる侵略者に立ち向かう彼らの勝利と生還を心から願った。
そうして西へと向かう。
この先への不安を抱えながら。
歩きに歩いて数百キロ。
途中、非常食などの支援を受け取りながら歩いた。
幸い、ウーク共和国の西側はまだ敵の脅威にさらされてない。
東の国境でロシー連邦軍に必死に反撃を仕掛けてるという。
そんな話を、立ち寄る町で耳にしながら歩いていく。
落ち着く事が出来たのは15日目。
東の国境から歩いて500キロを超える所にある都市にたどり着いた時だった。
まだ戦火の及んでない都市は、破壊された建物などもない。
そこに来て男は、ようやく安心を得る事が出来た。
しかし、まだ何も終わってない。
ロシー連邦軍の侵略は止まってない。
ウーク共和国軍の抵抗はあるが、劣勢を余儀なくされている。
国際的な支援を得てるとはいえ、簡単に勝てるわけもない。
ロシー連邦は大国の一つである。
かつてより衰えたとはいえ、その軍事力は世界有数だ。
それに比べてウーク共和国は国力でも軍事力でも劣る。
戦って勝つのは難しい。
だが、諦めるわけにもいかない。
負けて占領されればどうなるか。
それはウーク共和国の歴史が教えてくれる。
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