アーク視点2
俺たちは、ゴブリンキングから離れ、町の近くまで戻ってきた。
「ちっ! まさかこの俺が退くことになるなんて!!」
「今まで、こんなことなかったのになぁ」
「そうねぇ、初めて逃げてきたわねぇ」
「それはヨルンのおかげ」
「あぁ!! ヨルンのおかげだと!?」
「そうヨルンのおかげ」
「そんなことはねぇ!! あいつは無能だ!!」
ナイが変なことを言いやがる! ヨルンのおかげだと! そんなことあるわけねぇ!
「ねぇ、アーク。ヨルンが外の冒険者たちになんて呼ばれてるか知ってる?」
「知らねぇよ! だがどうせ無能とかだろ! あいつはBランクパーティーにはふさわしくねぇからなぁ!」
「ううん、違うよ。『支配者ヨルン』そう呼ばれている」
「支配者だと! どういうことだ!」
「魔物のことを知り尽くし、魔物の弱点をついたり、一緒に戦っている人に的確な指示を出す。そうすることで戦闘を支配するもの。私たちと、一緒に戦ったことのある冒険者たちがみんな、ヨルンのことをそう言う」
「なっ!?」
あいつが支配者だと、そんなはずがねぇ!
あいつは戦えもしないのに、口出ししてくるウザい奴だろ!
「やっぱりヨルンを追い出したのは、失敗だったんだよ。ヨルンをパーティーに入れてやろうぜ。そうすればまた荷物持ちをやらせられるし」
「そうねぇ、ただの荷物持ちだと思ってたけど、意外と役にたってたのねぇ」
やっと追い出せたのにヨルンをパーティーに入れるだと! ふざけるな!
「ヨルンなんかいらねぇよ!」
「でもよぉ、ヨルンはいたほうが便利だぜ」
「そうよぉ、荷物持ちとか雑用とかもやらせられるしぃ」
「うるせぇ!! パーティーのリーダーである俺がいらねぇって言ったらいらねぇんだよ!」
「わ、わかったよ」
「わかったわぁ……」
「ちっ! 一度町まで戻るぞ」
「町に戻ってどうするの?」
「ポーションを買いまくる」
「ま、まさか倒しきるまで、戦うわけじゃないわよねぇ」
「そうだ。ゴブリンキングを殺しきるまで、ポーションで回復しながら戦うぞ」
「う、嘘だろ!? そんなの無理に決まってんだろ!!」
「そ、そうよぉ!! そんなの無理だわぁ!」
「もしかしたら、私たちが死ぬかもしれない。だから、大人しくギルドに、勝ってなかったことを報告するべき」
「うるせぇ! ギルドに報告したら、パーティーの名に傷がつくだろ!」
俺たちは一度も依頼を失敗したことがねぇんだよ!
だからギルドに報告はしねぇ!
俺たちでゴブリンキングを倒し、依頼を成功させてやる!
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