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第63話 村長と領主

 

 これは一狼達がスネークダンジョンを攻略し、ゴブリン村に寄った後直ぐの事。



 ≪ゼルエス帝国辺境・魔の森近くの村≫


 魔の森と呼ばれる、大陸の3分の1程の広さを占める魔境。その魔境に一番近い名もなき開拓村の村長宅にて、一人の男がある報告を村長にしていた。


「えーっと、村長様。それでですね・・・」


「何ださっさと言え!俺は忙しいんだ!」


 報告を受けているのは村長なのだが、その男は村長にしては随分と変わっていた。村長と言えば、ある程度歳のいった経験がある者がつくものなのだが、その男はまだ若く、年頃はようやく20にいくかかどうかというほどだった。更に、開拓村にいるにしては体格もずいぶん細く、纏っている服装も高級品のようだった。


「さっさと言え田舎者!俺の手を煩わせるな!・・・クソッ何で俺がこんな仕事をせねばならん・・・」


 今でこそ開拓村の村長であるこの男、実は元上級貴族だった。だがあまりにも度が過ぎる事態を起こしてしまった為、父親が無理やり理由をつけて辺境に押し込めたという経歴の人物だった。

『こんな場所は俺の居場所じゃない。貴族である俺にはもっとふさわしい仕事がある』根っからの貴族であるこの男は常々こう考えているので、この村に来てからはいつもイライラしていた。しかし男にも唯一イライラしないときがあった。

 それは・・・。


「は・・・はい村長様・・・。実はうちの息子が、領主様達がこの間潰して出さったゴブリンの巣、あそこでゴブリンとウルフをまた見たと言っているのです。更に村の狩人達も森がまた騒がしいと・・・それで・・・その・・・」


「ああ?つまり俺にまた何とかする様に言いたいのか?っち・・・めんどくせぇなぁ。そんな事は俺に言わずお前達で何とかしろ!狩人共にでもやらせておけ!」


「そ・・・そんな村長様!狩人達はあくまで普通の獣を取るのが精一杯なのです!狩人とは言いますが、神から職業を授かった『狩人』ではないのです!なので是非とも!どうかお願いいたします!」


「だから俺はそんな事知った事では・・・いや、まてよ?」


「ど・・・どうかなされましたか?」


「ふむ・・・そういえばお前の所には娘がいなかったか?年頃の娘だ」


「・・・っ!そ・・・それは・・・」


「お前が誠意を見せてくれるなら、慈悲深く尊き血を持った俺も考えんでもないぞ?ん?」


 村長である男はニヤニヤしながら、報告してきた村人に向かってそう言った。

 そう、男が唯一イライラしない瞬間とは『女』である。元より女関係でこの地に流されてきた男は、どこまで行っても変わらなかった。


「・・・わかりました村長様。後で娘を向かわせます・・・。」


「おお、さすが《《元村長》》。誠意の見せ方を知っているな」


「それではよろしくお願いします村長様・・・」


 報告に来た《《元村長》》、元貴族の男が来てからは村人になった男は、静かに挨拶だけして村長宅を出て行った。


「フハハ、仕方ないから慈悲深き俺がなんとかしてやるか」


 そして現村長の男は、後で来させることになった女の事を考えながら領主への手紙をしたため始めた・・・。





 ≪ゼルエス帝国辺境・パンタナ領領主館≫


 その日、パンタナ領の領主は煌びやかな執務室にて書類仕事をしていた。


 すると、ドアからノック音が聞こえて来た。


「誰だぁ?」


「ハッ!騎士団団長、ボンゴールであります!」


 ノックをした者はパンタナ領の騎士団で団長を務める男であった。領主は入室の許可を出し騎士団長を執務室へと入室させる。


「御呼びと聞き、やってまいりました!」


「あぁ、これをぉ見よぉ」


 領主は入室して来た騎士団長に一通の手紙を見せる。騎士団長はそれを受け取ると「拝見いたします」と言って手紙を読み始める。そして読み終わったのか、顔を上げて領主へと手紙を返した。


「まぁそういう事だぁ」


「ハッ・・・やはり今回も要請に応えるので・・・?」


「あぁ、そうだぁ」


 騎士団長が読んだ手紙は、前回も同じような内容の物を送って来た、やっかいな人物からの物であった。


「本当にあの者は厄介でありますな・・・」


「まあなぁ、と言ってもぉ、今回がぁ最後だがなぁ」


「といいますと?」


 騎士団長の疑問に、領主は表情を変えることなく告げた。


「別ルートでぇ同じぃ開拓村のぉ者からぁ嘆願がぁあったぁ」


 どうやら、その開拓村の元村長からの手紙が届いており、それによると現村長はやりたい放題やっているらしい。

 普段の領主ならば、この様な嘆願には対処することはない。

 しかし、領主自身にも迷惑が掛かってきているので、流石に鬱陶しくなり始末することにしたとの事だ。


「なるほど、それで最後というわけでありますか」


「あぁ、適当に殺し屋を雇っておいたぁ。魔物にぃ襲われてぇ死んだぁという感じにぃしとけぇと既にぃ言ってあるぅ。だがぁ、一応騎士団からぁ何人かぁ人をぉ出しとけぇ。そしてぇ適当にぃ魔物を一匹ぃ持って帰らせろぉ」


「ハッ!その魔物が現村長を殺したと見せかけるわけでありますな?」


 領主はそれに答えずに、ニヤリとだけ笑う。騎士団長はそれで解ったようで、退室の挨拶だけして執務室を出ていった。


 騎士団長が出ていった執務室には、気持ちスッキリした表情の領主が執務を続けていた。



 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白かった」「続きが読みたい」「下衆が多すぎィ!?」等思ったら☆で評価やブックマークをして応援してください。

 ☆をもらえて、この小説が人気になると、主人公が、ゲソになります。


 追記:カクヨム様。にてコンテスト参加中です。よろしければ応援おねがいします。

 URL→ https://kakuyomu.jp/works/16816700428711348667

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