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第34話 ヤンデレのわんちゃん

 それを見た時が、俺の願っていた希望が潰えた瞬間だった。


「(そ・・・そんなっ!ごぶ助えええぇぇぇえええ!!!)」


 そこにいたのは石となったごぶ助だった。


「(う・・・うそだ・・・!何かの冗談だろう・・・?そうだ!きっと村の誰かがごぶ助の石像を作ったんだ・・・!)」


 俺はあり得ないと分かっていても、自分に言い聞かせるみたいに願望を口にだした。そしてフラフラとその石像の近くに行って、ただの作り物だと確認する為に鑑定をかけた。


「(う・・うそだぁ・・・。あとからおいつくっていったじゃんかよぉ・・・、うそつきぃ・・・ごぶすけぇ・・・)」


 鑑定をかけたら、グレーアウトしていたがごぶ助のステータスが出てきた。さらにごぶ助のその石像は、明らかに致命傷だろう傷を負っているように見えた。おそらく死んだ後に石にされたと分かった。

 俺は暫くごぶ助の石像にすがりついて泣いていた。そして暫く泣いた後にやるべきことを思い出した。


「(うぅ・・・ぐすっ・・・ちょっとまってろぉ・・・ごぶ助ぇ・・・。まずはパパゴブとママゴブ、それに弟ゴブを弔ってくるからぁ・・・)」


 まずは村の皆をどうにかしなければ、そう思い出して動き出す。

 崩れた家から家族3人の遺体を掘り起こし、丁重に掘った穴まで運んだ。

 そして3人の遺体を運び終わり、他に見落としがないか見回った後に、皆の遺体を運んだ穴に向けて『火魔法』を使い火をつけた。

 その時に効果はあるかわからないが、『火魔法』のイメージとして『安らかに星へ帰れるように』、そんなイメージを使い火をつけた。

 火をつけて消えるまでは、ずっと火を見ていた。その間ずっと「ごめんなさい」だとか「いままでありがとう」、そんな事ばかりが頭に浮かんでいた。

 火が消えると、その場には骨と魔石と灰だけが残っていた。俺はそれらを埋めるように土をかけ、墓石となりそうな大き目の石を何とか運んできて設置した。


「(皆、ありがとう、安らかに・・・)」


 最後に、墓石代わりの石に祈りその場から離れた。

 そしてごぶ助の石像の元へと戻ってきた。


「(ごぶ助・・・)」


 俺はごぶ助の石像に一度抱き着いた。そうしてしばらく無言で抱き着き、心の中で村の皆を弔ってきたことを報告した。そしてそれが終わると抱き着くのをやめる。


「(さて・・・ごぶ助、お前はどうしたらいいんだろうな)」


 俺はごぶ助をどうしようかと考えた。石像になってしまったから燃やして送ることもできない。かといってここにも置いておけない。このまま埋めるべき?そんな風に色々考える。


「(最後に一度、ポンコにも合わせてやるか・・・。ポンコも仲間だしな・・・。それにダンジョンの機能で石化だけでも直してやれるかもしれないし・・・。そうしたら火葬もしてやれるもんな。そうしたら出てきた魔石をずっと保管してやるからなごぶ助・・・)」


 俺はちょっとヤンデレみたいな事を思い浮かべていた。

 それはともかく、一回ごぶ助をダンジョンに連れて行こうと運ぶ準備をする。運ぶ方法は木の板に乗せて、それをうまく俺の背中に氷魔法で固定していくことにした。

 とりあえずそこら辺からいい感じの大きさの木の板を持ってきて、ごぶ助の傍においた。


「(じゃあごぶ助、木の板に乗せるために動かすからな)」


 俺は一声かけてごぶ助を動かそうとする。だが動かなかった。


「(く・・・くそっ!動かない!?なんでだっ!?)」


 原因を探すために少し調べてみる、するとなんとなくわかった。『ごぶ助カリバー』が地面に突き刺さっているからだ。


「(この棒のせいか・・・。そういえばこの棒は石になってないな・・・?いや、それは当たり前なのか?でもごぶ助の服は石化しているんだが・・・?)」


 ちょっとした謎に考えが脱線したが、直ぐにそれはどうでもいいと思考を戻した。とりあえず埋まっている棒を掘り出してみる。


「(意外と深くまで刺さってんな・・・。ん?これは?)」


 棒の先端を掘り出すために地面を掘り進めると、地面の下から魔石が出てきた。

 そういえば家の裏手に邪魔な魔石を埋めておいたなと思い出す。


「(けど今は持っていけないな・・・。しかもこの魔石、変色してる・・・?)」


 地面の下から出てきた魔石は変色していた。元は青っぽい色だったのだが、白っぽくなっていた。


「(魔石も悪くなるのか・・・。とまぁ今はどうでもいいな。よし、これで動く)」


 棒が地面から掘り出せたのでごぶ助が動くようになった。なのでごぶ助を板の上に乗せ、一度氷魔法で固める。そこから何とか魔法を駆使して背中に乗せて氷魔法で落ちない様にした。


「(よし、それじゃあ最後にポンコに会おうなごぶ助)」


 俺は石像のごぶ助に語り掛ける。頻繁に石像のごぶ助に話しかけている気がするが、自分では気づいていなかったが大分メンタルをやられているみたいだ。


「(ふふ・・・魔石が取り出せたら毎日お喋りしようなごぶ助)」


 そんなヤンデレた俺は時々ごぶ助の石像に話しかけながらダンジョンへ向かった。


 ・

 ・

 ・


 背中に荷物を背負っていたので、少々時間はかかったがダンジョンに着いた。

 それはそのままダンジョンへ入り『迷宮内転移』を使い、ポンコの所へ転移した。


「(ただいま、ポンコ)」


(はイ、おかエりなサイ一狼様、ごぶ助様)


 俺はポンコに帰ったと挨拶する、するとポンコは俺たちに挨拶を返してきた。だがごぶ助が挨拶を返してこなかったのを不思議に思ったのか聞いてきた。


(ごぶ助様?おかエりなサイ?ごぶ助様?)


「(ポンコ・・・ごぶ助は・・・死んでるんだ・・・)」


 俺は口に出したくなかったが、ポンコに事実を言った。


(・・・)


 ポンコは俺の言った言葉に反応を示さなかった。俺はそのままポンコに語り掛けた。


「(ごぶ助はゴミ野郎共に殺されたんだ・・・。それで・・・最後にお前にも合わせてやろうかと思ってな・・・。)」


(・・・)


 その言葉にもポンコは反応を示さなかった。

 付き合いは短いがお前も悲しんでくれるのかポンコ・・・。ありがとう。

 俺は続けてポンコに語り掛ける。


「(なぁポンコ?ダンジョンの機能で石化だけでも何とかできないか・・・?出来れば送り出すために火葬とかしてやりたいんだ・・・。あ、火葬っていうのは・・・)」


 ポンコにごぶ助を送り出すために火葬をしてやりたいと言って、火葬について説明しようとすると、ポンコが喋りだした。



(ごぶ助様ハ死んデはいマせんネ。龍脈から星の記録へトアクセスしマしたガ、ごぶ助様ノ名前はマだ残っていマす。星へ還っテいナイ。つマり、死んデはいマせン)




「(は・・・?)」




 俺はポンコのそんな言葉を聞いて、一瞬何を言っているのかわからなかった。


「(まて、何を言っている?星の記録へアクセス?名前が残っている?ん?ん?んんんん?????)」


 俺が混乱していると、ポンコはその事実を繰り返し伝えてきた。


(はイ、だかラごぶ助様はしんデいマセン。この世界でハ、死ぬト魂は星へと還リマス。そノ際に星の記録へト情報ガ刻まれるノデス。)


「(ま・・・まて!それは本当なのか!?ごぶ助は生きて!?)」


 俺は嘘だ嘘だと心の中で繰り返すが、心の中で相反するように、嬉しい嬉しいという感情が出てきた。

 そんな俺にポンコは続ける。


(はイ。名前ノ無い方デすと特定ハ難しいデスが、ごぶ助様は名前を持っテいらっシャるのデ。)


「(うおおおおおおおおおお!ごぶ助ぇぇぇえええええ!)」




 俺はごぶ助の石像に抱き着いて・・・石像を舐め回した。



 作者より:読んでいただきありがとうございます。

「面白かった」「続きが読みたい」「ヤンデレ狼・・・」等思ったら☆で評価やブックマークをして応援してください。

 ☆をもらえて、この小説が人気になると、ごぶ助が、ナイスボートされます。


 追記:カクヨム様。にてコンテスト参加中です。よろしければ応援おねがいします。

 URL→ https://kakuyomu.jp/works/16816700428711348667

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