第289話 リベンジ戦のわんちゃん 3
7話目。ここで一旦打ち止めです。
(くそっ!折角分断した筈の奴らがっ!)
ヨフィエルのユニークスキルにより分断した筈の兵士達を呼び出され、俺は歯ぎしりをしてしまう。
(奴らのステータスは・・・うん、やっぱり想定通りくらいだ。だから倒す事に関しては、数がいるといってもこれだけステータスが離れていれば問題はない。けど・・・)
そもそもだ、俺がヨフィエルと兵士達を何故分断したかについてなのだが、これは無駄に兵士達を殺したくなかったからだ。何故なら彼らはヨフィエルによって洗脳、もしくは扇動されて俺達の町へ攻めてきただけなのだ。そんな事で命を奪うまではしたくない。
(これじゃああいつらに援軍を頼んだのも無駄になっちまったな。くそっ・・・)
その為策を講じヨフィエルから分断、後に頼んでおいた援軍により鎮圧する予定だったのだが、それもこれも全てがご破算になってしまった。
【こうなったらやるぞ・・・】
だから俺は仕方ないと割り切り、兵士達も殲滅しようと考えたのだが・・・
【待つごぶ!】
【ごぶ蔵・・・?】
ごぶ蔵の静止により止める事となった。
【分断するのは失敗したごぶ。けどこれ位であの人達を殲滅するのもどうかとおもうごぶ】
【いやでもごぶ蔵、そうはいってもこの状況じゃ・・・】
ごぶ蔵が静止してきたものの状況はあまり宜しくなく、ヨフィエルを倒そうと思うと兵士達が邪魔になる為なぎ倒さなくてはならない。
更に兵士達もヨフィエルが号令を掛ければこちらに襲い掛かって来るであろうから、こちらも応戦はせざるを得ないだろう。そうなるとどちらにしろなぎ倒さなくてはならないので結果的には一緒なのである。
なので止めて来たごぶ蔵には悪いが、ここはやはり兵士達を殲滅しようと考えた。
【状況は刻一刻と変わるものだから臨機応変に考えを変えなければ駄目ごぶ!】
【せ・・・せやな?】
【そこで!ごぶは応援の人達をこの場に呼び出して兵士達の相手をしてもらえばいいと思うごぶ!】
【・・・!】
【そしてごぶ達はその間奴を睨み、押さえつけておくごぶ。そうすれば最終的な結果は『兵士達を殲滅しました』から少しマシになる筈ごぶ!】
しかしごぶ蔵のこの提案を聞いたことにより、俺の考えは『ごぶ蔵の言う通りにした方が良いのではないか?』というモノへと変化した。が、ごぶ蔵がまともで真面目で頭が良さそうなのが解せぬ。
(いや、綺麗なジャ〇アンならぬ綺麗なごぶ蔵の事は置いておこう)
考えが決まったのならば早速行動開始だとばかりに実行に移そうとしたのだが、その前に何故か今日は出来る子のごぶ蔵が先手を打って行動し始めていた。
「そちらがそう来るならこちらも召喚ごぶ!いでよ我が軍団ごぶ!」
「ほう・・・?そちらも援軍を呼ぶのですか・・・?おや・・・アナタ達は・・・」
何故か俺よりダンジョン機能を上手く使えるごぶ蔵さんは、どうやったのかは解らないが一瞬で援軍を呼び出した。
そしてその援軍を見てヨフィエルは少し驚いていた様だったがそれも其の筈・・・なんせごぶ蔵が呼び出したごぶ蔵軍団は・・・
「ん?いきなり敵が消えたと思ったらまた出てきたじゃないか?」
「違うぞミミ。俺達が移動したみたいだ」
「なんだ!?一瞬で景色が変わったぞ弟よ!?」
「不思議だな兄者!」
「ギョ!?ギョッとしたギョ!なんつってギョ!」
「・・・10点ですよタコスさん」
「クヒ・・・私は好きですよぅそのダジャレェ・・・クヒヒヒ」
魔王選にも出ていた者達、ミミにガオウ、ゴウシンジュウシン兄弟、タコスにルーファス、パソラケラスだったからだ。
(・・・ん?ごぶ蔵の軍団?・・・ちげぇよ!俺の軍団だよ!)
詳しくは俺の軍団でもないのだが、頼りになる援軍達だ。そんな彼らが何故援軍として来てくれているかというと、今日という日の為に残念会後もコンタクトをとっていたからだ。
(策としては上手くハマり、最高の感じだったんだがな。まぁ、多少予定は狂ったが結果オーライなのか?)
予知で襲撃を聞き、魔王選の後考え付いた彼らを援軍にしようとした策。本来の予定とは少し違う流れになってしまったが、とても心強いものだ。
「皆、いきなりで状況がつかめないかもしれないが簡潔に話す。予定が変更になった!」
俺はそんな彼らに、簡単に予定が狂った事、これからする事を話す。
「「「了解」」」
伊達に魔王選に出ていた者達ではないという所か、俺がそれを話すと皆は直ぐに察し了承してくれた。
「という訳で・・・敵の策略に嵌ってしまっていた様です・・・ええ・・・」
そしてその頃には向こう側の説明も終わった様で、いきなり呼び出されオロオロしていた魔王軍の兵士達はこちら側へと敵意の視線を向けて来るようになった。
そうして互いににらみ合う様な状況になると、ヨフィエルから声を掛けられる。
「そちらの援軍には少し驚きましたが・・・数的有利はこちらが断然有利・・・それでも諦めずにやりますか・・・?」
「当たり前だ。黙ってやられる訳がないだろ」
「そうですか・・・それならば・・・」
どうやら諦めて大人しく死ねと言いたかったらしいが、勿論そんな事はお断りだ。
なのでそう言ってやったのだが、それは想定通りだったのだろう。ヨフィエルは1つ頷き魔王軍へと語りかけ始めた。
「皆さん・・・聞いての通りです・・・敵は姑息にも元魔王候補達を引き入れこちらに抵抗するつもりです・・・。ここでやらねば元魔王候補達がパンディムを襲うかも知れません・・・」
「「「・・・っ!」」」
「相手は強力無比な猛者達・・・ですが負けるわけにはいきません・・・。さぁ・・・命がけで戦うのです・・・私が力を貸しましょう・・・」
しかしそれは語りかけるというより言い聞かせると言った状態で、見方によっては洗脳しているようにも見えた。いや、事実していたのだろう。
「ゴブ。どうやらスキルを使っている様ですゴブ」
「だな・・・」
何やら兵士達の様子が異様だったのだ。目が少し虚ろになり、それでいて素早い動きでこちらへと武器を向けて来たのだ。
「「「パンディムの為にぃぃぃぃ!!」」」
「来るぞっ!皆言った通りなるべくなら殺さない様に頑張ってくれ!」
「「「応っ!」」」
そうなると自然に闘いは始まり・・・乱戦が巻き起こった。
「「「あぁぁぁあっ!!パンディムの為にぃぃぃ!!」」」
「何がパンディムの為にだい!アンタ!」
「おうよ!」
「我らも行くぞジュウシン!」
「おうよ兄者!」
むやみやたらに突撃してくる魔王軍兵士の中へと飛び込み、素手で戦ったり。
「「「パンディムの平和を脅かす悪魔どもめぇぇぇ!!」」」
「・・・何が悪魔ですか。というより、アナタ方も魔族でしょうに」
「ギョギョ!上手いギョ!80点やるギョ!」
「クヒ・・・そう言いながら相手へ魔法を上げているタコスさんにも30点です・・・クヒヒ・・・」
魔法を撃ちあったりと、敵味方が入り乱れ揉みくちゃになっていた。
「ぎぃぁぁぁっ!!」
「ぐふっ・・・」
「お・・・おれの腕が・・・」
勿論そうなると多少の死者やけが人も出てくるわけだが、流石に相手を絶対殺さずに戦おうというのは無理な話なのでそこには目を瞑るしかない。もしやり過ぎるとこちら側から死者が出てしまうしな・・・。
という感じで乱戦が巻き起こっている訳だが、俺達やヨフィエルは戦いには加わらず後ろでにらみ合いをしていた。正確には『スキルを使ってチョコチョコと手を出しているのだが、それは相手により妨害され動いていない様に見えている』という状態だ。
「・・・」
「・・・」
こちらはヨフィエルの強さを知っているし、向こうも天軍?とやらを呼び出した際にこちらの強さを垣間見ているので、両者がそうそう動けずこの様なにらみ合いが続いてしまっていた。
「・・・」
「・・・ん?」
だがそれに焦れたのか、相手が目で『着いて来い』という様な合図を送って来たかと思うと、乱戦の現場から離れ始めた。意図はよく解らないが相手を放っておくわけにも行かず、俺達はヨフィエルへと付いて行く。
そして少し離れた場所へと移動すると、ヨフィエルが喋りかけてきた。
「ふふ・・・小手先の技でしたが・・・ああも見事に封殺されるとは・・・」
「小手先の技にしてはクソ過ぎだろ」
「ふふふ・・・そうですか・・・」
「で、俺達を誘い出して何がしたいんだ?」
「ふふ・・・あのまま続けていても無意味でしょう・・・ですからさっさとケリを着けようと思いまして・・・」
「ほぉ?」
「この後も予定が詰まっていますからね・・・そうのんびりともしていられないのですよ・・・」
どうやらヨフィエルが俺達を誘い出したのは、焦れて直接俺達を始末しようと思っていたという事らしかった。
だが・・・何故そう簡単に行くと思っているのだろうか?
「そうかよ。・・・でもよかったな?」
「何がですか・・・?」
「この後は大分のんびりと出来るだろ?」
「・・・?」
「地獄でのんびり出来るだろ?ってことだよ!なぁ皆!」
「「「ごぶ!」」」
「うん!」
俺達はヨフィエルの甘い考えをぶち壊すべく、攻撃を繰り出した。
作者より:読んでいただきありがとうございます。誤字報告上げてくれている方、感謝です!




